身体を有機的に表現する(前編)

Dentsu Design Talk №51

  • MIKIKO
  • 真鍋 大度
  • 菅野 薫

2015/04/03

身体を有機的に表現する(前編)

2月4日に行われた電通デザイントーク第124回のテーマは「身体を有機的に表現する」。コリオディレクター(演出振付家)であるMIKIKO氏は、「Perfume」「ELEVENPLAY」「BABYMETAL」など数々のアーティストを担当してきた。特にPerfumeの演出振付では既存の照明、映像、レーザーなどの視覚的な演出のみならず、ウェブサイトやモバイルアプリで収集したデータをライブ映像に重ねるなど新たなエンターテインメントの領域を切り開いた。人間の身体を起点にテクノロジーなどを駆使してつくる有機的な演出は、デジタルな手法の中に、身体の質感やしなやかさも表出する。今回は、MIKIKO氏、真鍋氏、菅野氏の3名が、映像、ステージ、メディアの枠を超え、身体とテクノロジーを駆使する新しい演出の方法論について語り合った。その模様を2回にわたり紹介する。

企画プロデュース:電通イベント&スペース・デザイン局 金原亜紀
企画プロデュース:電通イベント&スペース・デザイン局 金原亜紀

 

ステージからMVまで演出する「演出振付家」

菅野:MIKIKOさんをPerfumeの振付師として知っている方は多いと思いますが、「演出振付家」としてステージやMVなどの総合演出をされていることは知らない方も多いと思います。はじめに、演出振付家とはどんな仕事ですか。

MIKIKO(以下 M):ライブや舞台の中で、振付だけでなく、全体を見ながら総合的な演出を手掛けています。

菅野:きっかけは、2005年に広島で行ったご自身の初舞台「DRESS CODE」だそうですね。

M:私は広島出身で、この頃はまだ広島を拠点に振付の仕事をしていました。演出家としてやっていきたいと思い、地元でメンバーを集め会場を借りて初めて舞台を作ったのが「DRESS CODE」です。アミューズ会長の大里(洋吉)会長が見に来てくださっていて、東京で本格的に演出をやった方がいいと背中を押していただきました。東京に拠点を移し、その後、世界に通じる技術を勉強するためNYに留学しました。そこでセリフも歌も一切なく、ノンバーバルな身体の動きだけで、ストーリーを伝えていくパフォーマンス「フエルサブルータ」に出会い、こういうものを自分はやりたかったんだ!と感じたんです。

菅野:それが演出振付家としての方向性が決まったタイミングだったんですね。Perfumeの3人との出会いはいつだったんですか。

M:彼女たちが広島のアクターズスクールの第一期生として入学してきた時です。私が先生だったんです。

菅野:なるほど。それで「MIKIKO先生」なんですね。

M:Perfumeがブレイクしたのが2007年の「チョコレイト・ディスコ」です。その頃はまだNYから振付だけ提供していたんですが、ワンマンのライブができるようになったタイミングで、MVやライブも含めた演出統括として呼ばれ、東京に戻ってきました。

菅野:不自然なガール」は、NY帰国後に総合演出を任されるようになって全体の演出を手がけた初期の代表作ですね。

M:不自然なガール」というタイトルだったので、Perfumeにしては珍しく、3人以外の人も出てくるようにしました。この頃から衣装、CDジャケット、監督を誰にするか等を総合的に取りまとめてます。

菅野:振付や演出、衣装などのアイデアはどういう手順で考えるんですか。

M:曲のタイトルや歌詞を基準に、Perfumeの3人と私でどういう方向性にしたいか話し合います。そこから監督を決めて、アイデアを出してもらい、それに合う衣装を決めていきます。

菅野:このMVは関和亮監督ですね。ちなみに、振付がメインの映像では、監督はどうコンテを切るんでしょうか?

M:関さんはコンテがなくて有名なんです。MV中に使用するパネルでアイデアを伝えてくれて、他は割と自由にやらせてもらっています。もっと踊りたいと言えばそうさせてくれますし、関さんから面白い視覚のアイデアをもらうこともあります。監督1人で作るというより、みんなで作っている感じです。

菅野:2009年の「⊿(直角二等辺三角形)ツアー」では、ライブの演出もされていますね。edge(⊿-mix)では事前に撮影した3人のダンス映像を舞台上のLEDが貼り付いたキューブに流して、それとリアルタイムのダンスを完全に同期させながらパフォーマンスするという、アナログな同期の最高峰のような演出でした。この場合はMIKIKOさんが絵コンテを書くんですか?

M:ビデオコンテを作って、そこに文字を載せていくんです。ここで誰がどう登場するか、やここで照明を点けるといったような。

菅野:そういう指示ビデオを作るわけですね。真鍋さんは、このライブを見に行ったそうですね。

真鍋:Perfumeの舞台を見たのは、この時が初めてで、新しいことに、これだけのスケールでチャレンジしている人たちがいるのかと驚きました。結構危ないことにもチャレンジしていて。

菅野:このレーザー、ちょっとでも外すと…

M:衣装が焦げちゃいますね。でも、広い舞台上に3人しかいないので、映像や光の演出で3人が会場を支配して見えるように知恵を絞ってやっていましたね。

素人だからこそ、自由な発想ができた

菅野:MIKIKOさんと真鍋さんが初めて会ったのは、2007年の「true/本当のこと」の公演(照明の藤本隆行氏、ダンサーの白井剛氏・川口隆夫氏ら第一線で活躍する10人のアーティストやエンジニアが集結して生み出したインタラクティブなダンス作品。LED照明や筋電センサー、振動子などを用いた)で、MIKIKOさんをトークゲストとして呼んだ時だそうですね。

真鍋:何としてもMIKIKOさんとの接点を持ちたくて、ゲストで来てもらったんです。

 

M:その場で、テクノロジーとダンスを掛け合わせてみませんかとプレゼンを受けました。その後、真鍋さんの作品を色々見て、正式にPerfumeのライブ演出に入ってもらえるようオファーしたんです。
菅野:それが2010年のPerfume初の東京ドームコンサートにつながった。
M:東京ドームコンサートでは、プロジェクションマッピングを使うアイデアをもらいました。今でこそ一般的になりましたが、当時東京ドームでプロジェクションマッピングなんて、ありえなかった。
菅野:真鍋さんがそれまでやっていたアートの箱と、東京ドームでは規模が桁違いでしょう。
真鍋:完全に、素人の集団がプロの中に入って行った感じで。でも、だからこそ自由な提案ができたと思います。レーザーでフォトクロミックの衣装に模様を書く案、蓄光する衣装の案など、10個くらいプロトタイプを作りました。最終的には風船を光らせつつ、それをニクロム線で割る作業が残りました。
M:「レーザーで風船を割りたい」とひとこと言ったら、すごく難しい割り方をしてくださって(笑)。
真鍋:実は、本番まで1回も成功していなかったんですよね。
菅野:リハーサルで1度もできていないということ?
真鍋:今思うと、それをあの規模でやっていたのはすごかったなと。

こちらアドタイでも対談を読めます!

※2時間の講演の一部を公開しております。
※後編は4/4(土)公開