身体を有機的に表現する(後編)

Dentsu Design Talk №52

  • MIKIKO
  • 真鍋 大度
  • 菅野 薫

2015/04/04

身体を有機的に表現する(後編)

2月4日に行われた電通デザイントーク第124回のテーマは「身体を有機的に表現する」。コリオディレクター(演出振付家)であるMIKIKO氏は、「Perfume」「ELEVENPLAY」「BABYMETAL」など数々のアーティストを担当してきた。特にPerfumeの演出振付では既存の照明、映像、レーザーなどの視覚的な演出のみならず、ウェブサイトやモバイルアプリで収集したデータをライブ映像に重ねるなど新たなエンターテインメントの領域を切り開いた。人間の身体を起点にテクノロジーなどを駆使してつくる有機的な演出は、デジタルな手法の中に、身体の質感やしなやかさも表出する。今回は、MIKIKO氏、真鍋氏、菅野氏の3名が、映像、ステージ、メディアの枠を超え、身体とテクノロジーを駆使する新しい演出の方法論について語り合った。その模様の後編をお届けする。(前編はこちら

企画プロデュース:電通イベント&スペース・デザイン局 金原亜紀
企画プロデュース:電通イベント&スペース・デザイン局 金原亜紀

テクノロジー使いはコンセプトありきで

菅野:2012年の「Spring of Life」のMVも真鍋チームが参加しての仕事ですね。田中裕介監督は、関監督とはアプローチが違って緻密な演出コンテを描いてきっちり撮る方ですよね。

真鍋:絶対にMVには映りこまないであろうところも、きっちり作りこんでます。僕たちは光る衣装やネイルの演出などを担当しました。ちょうどPerfumeの海外向けのサイトが同じころにローンチしたのですがウェブサイトには3人自身は登場させず、音楽と振付の素晴らしさを伝えることに特化しました。Perfumeの3人のモーションキャプチャーデータと音源を配布し、2次創作ができるような環境を構築したのですが想像を遥かに超える作品数が生まれました。本人たちが踊る画は、ワールドツアーで初めて見せようという趣向です。

菅野:Perfume Global Site 」の最初のプロジェクトですね。アイドル的に愛されているアーティストのデータを配布するというのは、相当ぶっとんでいますよね。

M:この時は、事の重大さにマネジメントが気付いていなかったんです(笑)。まさか、後からあれほど話題になると思わなくて。

菅野:僕は2013年のカンヌライオンズにPerfumeが登場したプロジェクトで初めてチームに参加させていただきました。

M:ヨーロッパへのワールドツアーの一環でした。ワールドツアーって、日本のファンにとっては、嬉しいけれど、遠くに行ってしまう寂しさもあるもの。日本からも応援できるよう、日本のファンの皆さんが作った柄やつぶやきで3人の衣装をプロジェクションマッピングし、リアルタイムでステージに参加できるようにしたんです。

菅野:2週間前にPerfumeがカンヌに参加するというニュースを発表し、このニュースがツイートされるほど、彼女たちの姿が明らかになっていくというティザーサイト、1週間前にはダンスするPerfumeの姿に柄をデザインをすることができるサイトを立ち上げました。

真鍋:こういうものをコンセプトなしにやると、ただプロジェクションしているだけ、電飾が踊っているだけになってしまう。PerfumeのプロジェクトではMIKIKOさんがきちんとストーリーを構築しているのでプロジェクションする意味がきちんとある。その結果、作品に強度が出ていると思います。僕はMIKIKOさんからもらったお題をテクノロジーを用いていかにスマートに、効果的に見せるかを考える役目を担っていると思っています。翻訳作業とシステム設計半々ですね。

 

アイデアは映像で見せて伝える時代

菅野:MIKIKOさんが率いるダンスカンパニー「ELEVENPLAY」のお話も聞かせてもらえますか。

M:ELEVENPLAYは女性ならではの身体表現を追求していて、今自分自身が表現したいものを発表したり、実験する場なんです。

菅野:真鍋さんのチームも参加していますが、演出はお互いにアイデアを出すんですか。

M:テクノロジーでできることを真鍋さんにまず教えてもらい、それを私が音楽にはめていく感じです。

真鍋:最新の「モザイク」の時は、ドローンをコントロールするシステムができたので、ビデオで撮って「ひとつよろしく」という感じでMIKIKOさんに送りました。

菅野:まず面白い表現ができそうだというネタを送って、そこからMIKIKOさんがイメージを広げていくんですね。

M:このときはドローンの振付をまず考えて、それに合わせて3人のダンサーがドローンを演出するようなダンスにしています。

真鍋:演出が入らないと、僕らがやっているのはデモでしかない。それを人が感動できるものに変換するのが、MIKIKOさんの力です。テクノロジーのいいところを振付や演出の力で伝えていくのが上手いなと思います。

菅野:ドローンの振付ってどう考えるんですか?

M:ダンサーと接触しないように距離を取るのがまず一番で、その上で最大限できることを考えます。このときは、ドローンとダンサーの関係を視覚的に面白く見せようと考えていきました。

菅野:最新のテクノロジーを使っているけれど、作品には人間味がある。Perfumeも、テクノロジーが入れば入るほど、3人のアナログとしての素晴らしさが際立つところがいい。ちなみに、ドローンの購入など、費用面はどうしているんですか?

M:手弁当です。アイデアを伝えるのに、紙と言葉だけだと想像力が追いつかないことがあるので。そういう時、実験映像に何度も助けられています。

菅野:アイデアがどんな画になるかは、やってみないと分かりませんからね。広告はオリエンから制作まで期間が短いので、検証する時間が取れないことがほとんど。普段からやってみて、発展させてアイデアを育てておく。そういう研究開発がとても重要になってきますよね。

M:一見遠回りをしているようですが、検証できている強みはすごくあります。

真鍋:2014年末のNHK紅白歌合戦でPerfumeの演出にドローンを使えたのも、ELEVENPLAYでの実績があったからです。

M:紅白は生放送だし、転換の時間も1分くらいしかないし、お客様もいるし。ハードルはかなり高かったんですが、この映像を見せたらNHKの方もゴーサインを出してくれて。

菅野:この演出を紙のプレゼンで分かってもらうのは絶対に不可能ですよね。やはり、見せないと分からない時代になっているのだと感じます。ELEVENPLAYは、最近は海外公演の方が多いようですね。

M:はい。テクノロジーとダンスの振付が正確に合っているのが海外では不思議なようで、日本ならではの演出と思われているようです。これからも日本代表となれるような活動を続けていきたいですね。

<了>
※2時間の講演の一部を公開しております。

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