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調査から見えた、七つのビジネスマンクラスター

2016/10/18

はじめまして。電通出版ビジネス・プロデュース局の中村一喜です。出版社のウェブメディアを活用したソリューション開発を担当しています。

消費者を取り巻く生活環境が激変するに伴って、消費者そのものも多様化しているということは言われて久しいです。出版社と私たち電通は、出版社のメディアを通して、日々、消費者の変化と向き合っています。そんな中で今回は、PV数の成長が著しい「ビジネスジャンル」のウェブメディアユーザーを細かく見ていきたいと思います。

ビジネスジャンルのウェブメディアのユーザーの約7割が男性であることと、商品のターゲット分類も男性向け・女性向けとなっていることが多いことからも、今回は男性(=「ビジネスマン」)に特化した分析を行いました。

多様化している消費者の中で、「ビジネスマン」が具体的にはどう分類されるのか、電通が2015年4月~6月に実施した調査の結果からクラスター分析を行い、その結果を紹介します。

■七つのビジネスマンクラスター

今回の調査対象は、かつてはエリートと呼ばれていたであろう、30~49歳で個人年収が600万円以上の有職男性681人です。あえて、「かつて」という言い方をしているのは、消費者が多様化することで、個人の価値観や考え方にも変化が生じていて、何をもって「エリート」なのかということも、一言で言い表すことができなくなっているからです。

かつてのエリートであるこの母集団を、クラスター分析によって七つのクラスターに分類しました。

クラシックエリート

①クラシックエリート

実直な性格なため、ささいなこともいいかげんにはできない、真面目なタイプ。新聞への接触率が最も高いのも特徴的です。仕事に対するやる気も強く、昔から職場にいた「良い管理職」的性質のクラスターです。

※構成比率24%

大衆リーマン

②大衆リーマン

現状の生活満足度が高く、上昇志向が強いといったタイプではありません。趣味やメディア接触においても、特筆すべき特徴はありません。消費傾向としては、はやりものよりも、丈夫で長持ちするものや環境に良いものなどを選ぶ傾向があります。

※構成比率20%

堅実リーマン

③堅実リーマン

その名の通り、堅実な思考を持った大企業の一般社員に多く存在するクラスター。情報感度は高くないものの、必要な情報は押さえています。安定志向が強く、将来を見据えた貯蓄を心がけています。お金をかける趣味ではなく、パソコンで動画視聴などを楽しみます。

※構成比率18%

イノベータービジネスマン

④イノベータービジネスマン

最もチャレンジ精神が旺盛で、新しい考え方や取り組みに敏感なクラスター。自分に対する自信を持っているため、個の主張がはっきりしています。職業として、スタートアップ企業で役員を務めている比率が他のクラスターよりも高いのが特徴です。

※構成比率13%

スマートリーマン

⑤スマートリーマン

多様な情報の収集や活用に最も積極的なクラスター。広告の情報も有効活用する傾向があり、趣味もショッピング・食べ歩き・旅行・ドライブと幅が広い、かなりアクティブなクラスターです。タブレットデバイスの使用率が最も高いのも特徴です。

※構成比率9%

低関与リーマン

⑥低関与リーマン

ルーティンワーク的な仕事に取り組んでおり、趣味なども少ない傾向があります。メディア接触においても、特筆した注目点がなく、何事にも意欲的ではないクラスターといえます。

※構成比率8%

ポテンシャリーマン

⑦ポテンシャリーマン

SNSを生活のインフラとして利用しており、最も年齢構成の若いクラスター。情報接触態度は広く・浅くという傾向があり、キュレーションメディアからの情報取得が中心です。ネット上のコミュニティーに関わり、積極的に情報発信をするのが特徴的です。

※構成比率7%

 

■ビジネスウェブメディアからの情報取得比率が高いのは・・・

スマートリーマンとイノベータービジネスマンが、他のクラスターに比べてビジネスジャンルのウェブメディア接触率が高いという結果が出ました。

ビジネスウェブメディア接触率
 

非常にアクティブなその特徴からも、電通はこの二つのクラスターに注目しています。

各クラスターの好奇心・挑戦力と情報収集熱心度

ビジネスジャンルのウェブメディアを代表して、東洋経済オンライン・山田俊浩編集長、現代ビジネス・川治豊成編集長、ハフィントンポスト日本版・竹下隆一郎編集長が登壇したセミナー「いま攻めたい!ビジネスマンの新機軸-7つのクラスターと3人の編集者から読み解く-」が8月24日、電通ホールで開催されました。

各編集長の話から、この2つのクラスターへの理解をより深めていきましょう。

左から、ハフィントンポスト日本版・竹下編集長、東洋経済オンライン・山田編集長、現代ビジネス・川治編集長

■ビジネス系ウェブメディア編集長が語る自社メディアの読者特性とは?

セミナーは、ビジネスマンの7つのクラスター紹介を前半に行い、その後に、自社メディアや読者特性を表すような象徴的な記事を用いての各編集長による講演という形式で進められました。

まず初めにマイクを握ったのは東洋経済オンラインの山田編集長です。

東洋経済オンライン・山田編集長

東洋経済オンラインを象徴する記事として紹介されたのはこちらの記事でした。
<「時給910円」で働く39歳男性の孤独な戦い>

東洋経済オンラインの読者は、25~44歳の比較的若い世代のビジネスリーダーで、サイトの月間PVは約2億、UBは約3000万と、ビジネスジャンルのウェブメディアの中でも最大規模です。

この記事は「貧困」という社会的テーマについて考える連載記事の1本ですが、こうした社会問題を上滑りの「べき論」で済ませるのではなく「日本社会で何が起きているのか」をきちんと自分なりに消化・理解しようとする東洋経済オンライン読者に向けて、企画・取材された記事です。

山田編集長は読者について、「年齢は関係ありません。常に現場でアクティブに動いている人、前向きに物事を考えられる人、積極的に意思決定に関与していこうとする人に対して、エビデンスを持った役立つ記事を提供していきたい」と語りました。

次に話したのは、現代ビジネスの川治編集長です。

現代ビジネス・川治編集長

現代ビジネスの代表記事として紹介されたのはこちらです。
<坂口恭平の熊本脱出記>

講談社が運営する現代ビジネスは、総合出版社である強みを生かした豊富な書き手の存在が特徴的です。経済情報だけでなく、教養や文化など幅広いジャンルの記事を取り扱うサイトです。

この記事も、そんな書き手の一人である、熊本在住の作家・坂口恭平氏による渾身の熊本地震ドキュメントレポートです。突然の大災害の中、筆者がどう考え、行動したかを被災者の立場からレポートすることで、誰もが熊本を近く、生々しく感じることができます。

「誰が記事を書いているか、ということを大事にしたいです。専門家にきちんと書いてもらうことで、ユーザーには教養を持ってもらえればと思っています。新しい情報がどんどん入ってくる中で、よって立つのは教養です」と川治編集長は説明しました。

最後に語ったのは、ハフィントンポスト日本版の竹下編集長。

ハフィントンポスト日本版・竹下編集長

こちらが紹介された、ハフィントンポスト日本版を象徴する記事です。
<オバマ大統領が去った広島で、23歳のボランティアガイドが思うこと。>

ハフィントンポストは世界16カ国・地域(11月には南アフリカ版が加わる予定)で展開されるグローバルメディアです。政治やビジネス、社会情勢などの各分野の専門家や有識者と個人が意見をやりとりできる、ソーシャル性の高さが特徴のサイトです。

この記事は、ハフィントンポストが誇る1000人のブロガーの1人が書いた記事です。インターネットの集合知が感じられ、また、リアリティーをもって伝えるには、ブロガーのオリジナルな視点や文章が重要であることに気付かされます。

竹下編集長は「例えば転職するとそれだけで新しい知見を抱えることができます。ちょっと海外に行くだけでも、普段とは違った情報を検索しますよね。そういう『移動』をし続ける人がエリートだと思っていて、そういった中で個人の視点を発信でき、多様性を受け入れられる人をターゲットにしています」と述べました。

■ビジネス系ウェブメディアでビジネスリーダーへのアプローチを

「スマートリーマン」および「イノベータービジネスマン」というクラスターは、積極的な情報収集や新しいことへのチャレンジというキーワードが特徴的なアクティブなクラスターです。

そういった特徴を裏付けるかのように、これらのクラスターの共通点として「課題意識を常に持ち、自分で何かを変えようと行動しているビジネスリーダー」という像が、3人の編集長の話から浮かび上がりました。

読者の皆さんの抱えるターゲットが「ビジネスマン」である場合、それを単純に「都心に勤務するビジネスマン」や「高年収のサラリーマン」というような属性で考えるのではなく、今回の分析で浮かび上がった「スマートリーマン」や「イノベータービジネスマン」のようなビジネスリーダーにアプローチすることが新たなコミュニケーションやビジネス展開を生むための大事なポイントになってくるといえます。

なぜならば、常に課題意識を持ちながら行動する彼らこそが情報発信力が高く「世の中に変化を起こす力」の持ち主だからです。

ビジネスジャンルの各ウェブメディアは読者属性やデータの整理に取り掛かっており、かなり高度なセグメント対応が可能なウェブメディアも登場し始めています。

商材がB to Bであれ、B to Cであれ、こうしたビジネスジャンルのウェブメディアを活用したリードジェネレーション施策やネイティブアドによって、より効率的・効果的なコミュニケーションが実現できるのです。


 

【ビジネスマン調査概要】
調査手法:タブレット端末貸与による電子調査票方式
実施期間:2015年4月~6月
調査エリア:主要7地区(東京50㎞圏、関西、名古屋、北部九州、札幌、仙台、広島)
調査対象:ビデオリサーチ社ACR/exパネル
個人年収600万以上の30歳~49歳有職男性、681サンプル
調査実施機関:<企画>電通 <実査>ビデオリサーチ