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AI MIRAIが考える、ちょっと先のAIとシゴトNo.1

全社横断AIプロジェクトチーム「AI MIRAI」始動!

2018/01/31

「あー、こんな仕事、AIがやってくれればいいのになぁ」

そんなボヤきを耳にすることが増えました。2010年代の初頭から始まった「第3次AIブーム」は、18年に入っても続いているようです。

しかし、その潮目は確実に変わってきています。一言でいえば、「AIでどれだけすごいことができるか」から、「AIをビジネスの現場でいかに活用するか」に軸足が移ってきました。また、AIのビジネス活用は今までのITシステム開発とは全く異なる性質を持っており、そこには発想の転換が求められています。
 
これから6回にわたって、実際の開発案件を通して、拡散を続ける「AI」というモノに対する電通の捉え方と取り組みを紹介します。初回は、17年に結成した電通の統括プロジェクトチーム「AI MIRAI」 の事業内容や、AIのビジネス活用に関する今後の見通しについてお話しします。

電通の「AI MIRAI」とは?

自己紹介が遅くなりました。初めまして、AI MIRAIの統括をしている児玉拓也と申します。
AI MIRAIは、マーケティングの企業である電通ならではの視点で、さまざまな切り口での技術・ソリューション開発を進めるための推進母体として結成したプロジェクトチームです。


AI MIRAI ロゴ

 

詳しくは後述しますが、私たちは「Marketing」「Business Development」「Workstyle」の三つの柱を注力領域として掲げながら、実践的なAI活用を社会やクライアントに提案していきたいと考えています。 

AI MIRAIには純粋な「技術者」はいません。その代わり、広告会社の本業であるデジタル、マーケティング、 マスメディア、クリエーティブから働き方改革、人事まで幅広い分野で活躍するメンバーが40人以上集っています。おのおのが自分の領域でAIをどう活用できるかを真剣に考え、パートナーと協力してそのチカラと限界を知り、ビジネスにどう応用できるかという「実践知」の収集エンジンのような役割を担っています。

では、なぜ電通はこのようなプロジェクトを立ち上げたのか。その背景には、AIを取り巻く環境の変化が関係しているのです。 

AIのビジネス活用は、「アイデア」と「柔軟性」が鍵

インターネットがビジネスの場に登場した90年代後半、あるいは「クラウド」や「ビッグデータ」が登場した2000年代と、AIを取り巻く現代の環境を比較してみると、大きく異なる点が二つあります。

一つ目は、「オープン化」の流れです。
現在、IBM WatsonやMicrosoft Azureなどの大手に限らず、AI・機械学習に関するさまざまなアルゴリズムやソリューションが、オープンソースやAPIとして使いやすい形で公開されています。加えて、ChainerやTensorFlow、Kerasなどの機械学習フレームワーク、WordNetやImageNet、Wikipediaなどの良質なデータセットも整備され、技術ハードルは非常に低くなっています。企業をはじめとする利用者は、専門的な知識がなくとも、それらを適切に組み合わせる(=マッシュアップ)ことで、従来のITシステム開発よりもスピーディーに、ソリューションの開発に取り掛かることができます。

そこで必要になるのは、技術シードをビジネスでどう活用するかという「技術ドリブン」発想ではなく、「ユーザー体験/事業課題ドリブン」発想です。「この事業課題を解決するために、どういう技術を組み合わせればよいか」「どうすれば顧客体験をリッチにできるか」などのアイデアが、開発の起点になっていきます。

技術ドリブンの開発とユーザードリブンの開発

 

二つ目は、AIならではの「予測不可能性」です。
AIを活用したシステムは、データを与件に沿って学習させても、狙うべき精度が得られるかは非常に不確実で、着手段階で成果やROIが予測できることは多くありません。従って、与件やROIを事前に固めてから開発に着手するのではなく、「失敗も成果のひとつ」と割り切り、PoC(Proof of Concept)やフィージビリティースタディーを交えながら柔軟に、幅広く開発を進めていくことが鍵となります。

以上の通り、AIの開発と活用に必要な資質・マインドは、以下の2点において従来の一般的なITシステム開発と大きく異なります。

  • テクノロジーに関する知識に加え、ユーザー体験や事業課題から発想する「アイデア」
  • 不確実性の中でさまざまな開発にトライする「柔軟さ・スピード感」
AI活用と一般的なシステム開発との違い

ここまで読んでいただいてお気付きかと思いますが、AIの開発・活用は、従来のITシステムの開発というよりは、むしろマーケティング施策に近いのではないでしょうか。ユーザー体験や事業課題のインサイトを正確に捉え、幅広いアイデアとスピード感で課題を解決していく……これからのAI活用に必要なのは「マーケティング発想」といえるかもしれません。
  
だからこそ、電通がマーケティングの企業として積み重ねてきた、クライアントの課題や生活者に対するインサイトと、AI MIRAIを通して得られた実践知を重ね合わせることで、より柔軟に、実用的なAI活用を設計・提案できると私たちは考えています。


AI MIRAIの「三本の柱」

では、AI MIRAIが注力する三つの領域をご説明しましょう。

3本の柱

1. Marketing

電通の本業である広告・マーケティング領域でのソリューション開発。ウェブ電通報で連載しているAIコピーライターの「AICO」や、すでにリリースを発表している視聴率予測AI「SHAREST」はこのカテゴリーです。電通の得意とするデジタル・マスメディア・クリエーティブ領域をはじめ、広い視点でAI活用の余地を探っています。合わせて、そこで培ったノウハウやネットワークを生かして、クライアントの課題に即したAIの利活用にも積極的に取り組んでいます。

  • AIコピーライター「AICO
  • 視聴率予測AI「SHAREST
  • AICMプランナー
  • 未来トレンド予測アルゴリズム
  • 高度報道分析ツール開発

2. Business Development

他社と積極的に協業し、マーケティング領域にとらわれず新しい事業創出を目指します。こちらもすでにリリースを出している文化放送をはじめとする媒体社との協業や、その他さまざまな企業のデータや資産とAIを掛け合わせた事業開発を推進しています。

3. Workstyle

生産性向上や働き方の変化に伴うビジネス改革を目指します。RPA(Robotics Process Automation)へのAIの組み込みや、非定型データの定型化を通して、現業支援だけでなく、業務の付加価値を高めて時代に先駆けた事業変革を狙います。電通における業務変革はもちろんですが、そこでのノウハウをクライアントの課題解決に生かしていきます。

  • 定型業務のAI移管/高度RPA
  • 業務資料自動仕分けアルゴリズム
  • ウェブサイトクローリングのAI化

AI MIRAIは上記3領域を合わせて、すでに25件以上の開発案件に取り組み、業務への活用を通して、知見とネットワークを広げています。

「こんな課題があるのだけれど、AIで何とかならない?」
「AIを導入してみたけれど、どうもユーザー体験向上につながっていないみたいで…」
「こんなデータがあるけれど、AIを使って価値のあるビジネスにできないか?」

など、さまざまな相談にお応えできる体制を整えています。

と、売り込みっぽい話が続いてしまってすみません。
私の話はここまでにして、次回からはAI MIRAIでの実際の開発事例をご紹介しながら、AIが切り開く、ほんの少しMIRAIの扉を、順番に開けていきましょう。