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生きる。 映画監督・河瀬直美氏にその意味を問うNo.3

2020/09/23

ビジネスの意味が、変わり始めた。映画監督・河瀬直美氏の見解とは?

河瀬監督の作品や日常には、一貫して「生きる」というテーマがあるように思う。生きるとは、自然体であるということ。生きるとは、普遍的な価値を慈しむこと。めでること。生きるとは、刹那の喜びと、重ねた歳月の重みをリスペクトするということ。その思いを、広く世の中と、そして世界の人と共有するために
映像と、真摯に向き合う。作品を通して、人と深くつながりたいと願う。

そうした彼女のスタンスは、ビジネスの世界にも通じるものがあるはずだ。「見えないものこそを、大切に撮りたい」と、彼女は言う。自分でも見過ごしがちな微かな感情の揺らぎであったり、なにげない日常の中にある、素朴な喜びや深い哀しみであったり。その先に祖母が遺した「この世界は、美しい」という言葉の意味を読み解く何かがあると信じているからだ。

毎月の新月と満月の日に、彼女は決まって今は亡き祖母の墓前に赴く。月の満ち欠けのハザマで、彼女は「生きること」と向き合い続けている。10月23日に公開予定の最新作「朝が来る」に続いて、2021年の東京2020オリンピック競技大会の公式映画の監督も務める 河瀬監督に「この時代を生きることの意味」を、シリーズで尋ねてみたい。


あらためて、貨幣の価値とは?

映画監督というと、ひたすら自己と向き合って、表現を突き詰める、みたいなイメージがあるのかもしれませんが、私の場合、むしろ真逆です。

もちろん、そうした作業も必要なのですが、基本姿勢としては「それは、チームを幸せにするか?」「それは、ビジネスとして成立しているのか?」そして「それは、社会を、世界を幸せにできるのか?」ということなんです。

©2020「朝が来る」Film Partners
©2020「朝が来る」Film Partners

人間は、単体では弱い。裸の状態で、ライオンの前に立たされたら確実にやっつけられてしまう。でも人は、炎を手にいれた。槍を手にいれた。貨幣を手に入れた。そのおかげでライオンさえも御するだけの力を手にいれることができた。

システムを維持していくには「思想」こそが大事

もちろんその先には、環境破壊であったり、さまざまな問題があるわけですが、ポイントは「人間は、システムをつくれる動物である」ということだと思うんです。例えばお金ですが、お札やコインってそれ自体、暖もとれないし、食べられもしないですよね。貨幣経済というシステムがあるから、価値が生まれる。そして、ここからが大事なことなんですが、「システムを成立させ、維持していく上で必要なのは、思想だ」ということ。

システムや制度をつくると、人はひとまずホッとしちゃうんです。でも、待てよ。なんのためのシステムだっけ?みたいなことに、なんとなく世界中が気づき始めているような気がするんです。人が心からホッとしたり、ああ、人生っていいな、と思えるのはシステムがあるからではない。だれもがイライラしたり、ストレスを抱えているようなシステムになんか、なんの意味もないと思うんです。

自身がディレクターを務める「なら国際映画祭」では次世代の育成に力を入れる。写真は8月に奈良で開催された、ユース映画ワークショップにて。
自身がディレクターを務める「なら国際映画祭」では次世代の育成に力を入れる。写真は8月に奈良で開催された、ユース映画ワークショップにて

システムを維持していくためには、「思想」こそが大事

私はクリエイターですが、いつもビジネスのことを考えている。それは、お金もうけをしたいとか、そんなことじゃない。私の愛する仲間を、世の中の人を、どうしたら幸せにできるのだろう?そんなこれまでにないシステムを、つくれないものだろうか?ということを、常に考え続けているということです。

もちろん、簡単に答えになんかたどり着けませんが、「なんのために、私は生きているのだろう?」という思想を深めていくことから、表現も生まれるし、新たなビジネスも生まれていくのではないか、と私は思っています。


河瀬直美氏のインスタグラムは、こちら
月満ち欠けに合わせ、新月→上弦→満月→下弦の日の朝8時より新作映画「朝が来る」のオンライントークを配信中。

最新作「朝が来る」公式HPは、こちら

なら国際映画祭2020特設サイトは、こちら

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