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SDGs達成のヒントを探るNo.9

2020/12/03

外国人材雇用の「SUCCESS」をつくる

SDGsが掲げる「持続可能な社会の実現」のためには、教育やビジネスにおいて多様な人材交流が欠かせません。

今回は、外国人留学生の教育・就職支援や、企業の外国人材雇用の啓発に尽力されている、関西大国際部の池田佳子先生にインタビュー。コロナ禍における外国人留学生の就職支援、今後企業に求められることなど、ビジネスで多様な人材を受け入れていくためのヒントを聞きました。

池田佳子
関西大国際部の池田佳子教授

外国人留学生の就職を支援する「SUCCESS-Osaka」の取り組み

──現在池田先生が取り組まれている、留学生支援促進プログラム「SUCCESS-Osaka」について教えてください。

池田:2017年、文部科学省が取り組む「留学生就職促進プログラム」の実施大学として、関西大を含む全国12校が選定されました。その中で関西大が、大阪大、大阪府立大、大阪市立大と連携し、事業として打ち出したのが「SUCCESS-Osaka」です。大阪府をはじめ、さまざまな自治体、経済団体、民間企業でコンソーシアム(共同事業体)を組み、外国人留学生の支援を行っています。

もともと、文部科学省の委託事業で「CARES-Osaka」という外国人留学生の住環境と定着支援をするプロジェクトが2016年からスタートしていました。定着支援は、優秀な外国人留学生たちに継続して日本で働いてもらうために欠かせない一方で、成果が数値化されにくく、目に見える形で表れにくいのが実情です。そこで、外国人材の育成に特化した、成果重視の「SUCCESS-Osaka」も始動させ、留学生の活動の履歴や就職内定数のトラッキングなども行うことになりました。

SUCCESS-Osakaの活動には、二つの大きな柱があります。一つは、大学を基盤としたキャリア教育・研修のカリキュラムを構築し、実施することです。1~2年次で日本語基礎能力やビジネス日本語能力を養うための科目が用意されています。その後、2~4年次にかけて本格的なインターンシッププログラムが実施され、日本の企業文化や就職活動の流れなどを学んでいきます。

もう一つは、外国人留学生の受け入れ経験が少ない企業への支援です。留学生と接する機会を増やしたり、外国人材の育成・定着に向けた勉強会やセミナーも実施したりしています。

留学生×企業で、SDGsをテーマにビジネスプランを生み出す

──今年はコロナの影響も大きく受けたと思います。どのように取り組みを進められたのでしょうか?

池田:関西大では東アジアからの留学生が非常に多いのですが、今年はコロナの影響で自国から出られなくなる学生が多くいました。そこで、就職に関連するキャリア系のセミナーや、インターンシップは3月ごろからすべてオンラインに切り替えました。

今年は「インターンシップは実施しない」という企業も多かったのですが、SUCCESS-Osakaで関係を築いてきた企業の中には、「やってみようかな」と手を挙げてくださるところもありました。そことタッグを組み、「バーチャルインターンシップでどんな成果が得られるのか」を一から一緒に考え、チャレンジしました。

3年前から行っている発展型のインターンシップの一つに、「SUCCESS-Osaka Future Design」というものがあります。このインターンシップでは、SDGsをテーマに、留学生と企業が共同でビジネスプランをつくります。留学生たちは、SDGsについて理解を深めた後、SDGsに関連する自国の社会問題について考えます。その中から、自分の専門分野を踏まえつつ、特に関心のある問題を研究し、課題解決のためのビジネスプランを、企業と共に考えます。

昨年のインターンシップでは、実際に事業化に向けて取り組もうと動いたプランもありました。その一つが、中国の余剰介護人材に日本で活躍してもらうためのビジネスプランです。中国には介護人材が多くいるものの、同国では家族の面倒は家族で見るのが一般的で、人材が余剰傾向にあります。また、地方では、介護の高いスキルを身に付けて病院に就職しても待遇が良くないため、離職率が高いという問題もあります。一方、日本では介護人材不足が喫緊の課題です。そこで、介護スキルを持つ中国の人材が日本でキャリアを築いていく仕組みを企業と共に起案。日本での介護職体験ツアーを実施する案などが盛り込まれています。

今年の留学生たちは、残業問題、外国人児童の教育、介護などを切り口に取り組みました。このインターンシップの目的は、課題解決のためのビジネスプランを考えて、実際の事業として動かすこと。留学生たちにとっては非常にハードルの高いものです。そして企業にとっては新しいビジネスを創出するチャンスでもあります。今年はオンラインで行いましたが、例年と変わらず、留学生と企業の双方が多くの時間を費やして議論を重ね、社会課題の解決策を模索しました。今後も実現に向かうビジネスプランがどんどん出てくることを期待しています。

SUCCESS-Osakaのネットワークと知見を生かし、活動の幅を広げたい

──SUCCESS-Osakaの他に、現在池田先生が取り組まれていることはありますか?

池田:SUCCESS-Osakaは5年間の期限付きの事業で、来年が最終年度になります。しかし事業が終わったからといって、留学生の支援をやめるわけにはいきません。そこで、SUCCESS-Osaka で築き上げたネットワークを生かして、今年の4月に「Transcend-Learning(トランセンド・ラーニング)」という一般社団法人を設立しました。事業内容は、SUCCESS-Osakaと同じように、外国人留学生の就職支援や、外国人材の雇用促進のための企業支援が中心です。

大きく異なるのは、活動の規模です。「Transcend」には、「飛び越える、乗り越える」という意味があります。SUCCESS-Osakaは、活動拠点が「大阪」のため、参加できない学生や企業もありましたが、Transcend-Learningではそういった制限が取り払われました。大阪だけでなく、国内全体、さらには国境を超えて外国人材の育成をする、そして変化の激しいこれからの世界で活躍できる人材を国籍関係なく育成していくという理念が、このプロジェクトの根本になっています。

中でも、企業と外国人留学生が一緒になって進めていくような課題解決型のプロジェクトやビジネスコンテストの実施に特に力を入れていきたいと考えています。SUCCESS-Osaka Future Designのように、留学生たちにとっては実践的な学びの機会に、企業にとっては留学生への理解が深まるきっかけにできればと考えています。

池田佳子

「日本の企業で働きたい」と思ってもらうためには、企業の国際化が不可欠

──そもそも外国人留学生は日本の企業のどのようなところに魅力を感じているのでしょうか?

池田:実は、日本の企業にそれほど魅力を感じていないという留学生は多くいます。賃金は決して高いとはいえず、GAFAやアリババほどの世界的な先進企業があるわけでもない。それでも留学生が日本に来てくれるのは、日本のカルチャーが好き、食べ物が好き、だから日本に住みたい、といった外部要因での評価が非常に高いからです。これは調査からも明らかになっていて、今後も日本のポップカルチャーを大切にしながら、さらに発信していくべきだと思っています。

ただ一方で、留学生と企業をつなぐ私たちとしては、「この日本企業が好きだから、ここで働きたい」という気持ちを、留学生たちにまず持ってもらいたいのです。そのため、日本企業自体の魅力を留学生たちに感じてもらえるよう、企業側へ働きかけることも、私たちの大事なミッションだと考えています。

先ほども述べた通り、SUCCESS-Osakaでは企業啓発も一つの柱になっていて、コンソーシアム全体でサポートしています。そもそも外国人材を雇用することに対して、いまだに“食わず嫌い”をしている企業が多いのが実情です。「コミュニケーションが問題なく取れるのか」「文化や価値観の違いでトラブルにならないか」といったネガティブなイメージを勝手に持ってしまい、雇用する前から構えてしまう企業も少なくありません。

SUCCESS-Osakaに初めて参加した企業と話していると、「留学生ってこんなに日本語ができるんだね」と言われることもあります。「外国人留学生」と一言で言っても、どのような背景・理由で日本に来たのか、どのくらいの期間日本にいるのか、どのくらい日本語が話せるのか、などはさまざま。この前提を、まずは企業の方々に知っていただきたいです。

外国人留学生たちとの接触がないから敬遠してしまうし、ステレオタイプに埋め込んでしまう。この問題を解決していかなければ、前には進みません。ただ逆に言えば、解決策は「とにかく接触をしてみる」という、とても単純なことです。

そして一人雇えば、外国人留学生たちの優秀さを実感できると思いますし、採用や育成の仕方も分かってくるので、企業側にも自信がついてきます。一つの「SUCCESS」をつくることが、多様な人材雇用への突破口になるはずです。

──外国人材の雇用を促進させるには、まだまだ企業側に課題がありそうですね。

池田:留学生たちはもう十分頑張っています。大学で専門性を身に付け、日本語も堪能で、中には英語ができる子もいる。唯一無二の素晴らしい人材がたくさんいます。それなのにまだ、世間では「人材育成」ばかりに注目が集まっている。これから注力すべきことは、「企業の国際化」ではないでしょうか?国際化が進めば、採用される人材はすでに揃っていると私は思います。

しかし正直なところ、「企業の国際化」について私のような大学人が語っても、企業になかなか響きません。そこにもどかしさを感じる場面が多々あります。中小企業では現在、技能実習生の層が求められていて、その先の高度外国人材を採用するところまでなかなか意識が向いていません。しかし、日本で働き手が減少し、人材不足が深刻化するのは時間の問題です。来年、再来年の短期的な視点だけでマネジメントを続けていくことはできません。最近ではESG投資などが注目され、企業でも「サステナビリティー」の考え方は常識になりつつありますよね。外国人材をはじめ、多様な人材を雇用すること、そして、一人一人のバックグラウンドや価値観をリスペクトして受け入れていくことが、イノベーションを生むきっかけになるはずです。

TeamSDGs

TeamSDGsは、SDGsに関わるさまざまなステークホルダーと連携し、SDGsに対する情報発信、ソリューションの企画・開発などを行っています。

TeamSDGsのウェブサイトでは、ウェブ電通報とは違う切り口で池田先生のインタビューを紹介。併せてご覧ください。

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