井口理氏インタビュー

「今こそ目指す広告とPRの融合」第2回

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    井口 理
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 局長 チーフPRプランナー
今こそ目指す広告とPRの融合 電通パブリックリレーションズ 井口理氏

第2回

 
情報流通構造を押さえ「自分ゴト」から「社会ゴト」へ

では、戦略PRとは何をすればいいのでしょうか。分かりやすく、また実践しやすいソリューションとして研究しているものが二つあるのでそれをご紹介しましょう。まず一つ目が、メディアや生活者を包括した情報流通構造を把握し、これをベースにした情報拡散設計です。

PR活動では、最大のリーチを図りつつ、生活者の関心や発信内容への理解度を高め、共感を生み、購買やレピュテーション(好感度)獲得へとつなげることを狙います。人を動かすという最終成果を重視します。

現在、いわゆる4マスにインターネットが加わり、今ではソーシャルメディアも、人に情報が届くまでの流れを考える上で欠かせないチャネルになりました。例えばテレビとSNSを同時に楽しむ「ソーシャル視聴」など、生活者の楽しみ方も広がっています。PRを実践する側としては、そうした新しい動きや、刻々と変化するメディア間のつながりを常に把握しておく必要があります。

その情報流通構造をウェブ中心にひもといたものが、図1です。情報が拡散していく経路は大きく分けて二つ存在すると考えています。一つは以前からあるストレート系ニュースの流れで、情報源から発信された情報が、既存の報道機関などの電子メディアを経由してポータルサイトに届き、さらにはテレビや新聞などにも波及するという流れ。もう一つが、「J-CASTニュース」や「ガジェット通信」「ロケットニュース24」などのソーシャル系メディア(ミドルメディア)と呼ばれるサイトを情報源にSNSで情報が拡散し、さらに「NAVERまとめ」や「はてなブックマーク」(通称はてブ)などのまとめサイトで“まとめ”られ大きな広がりを見せるというもの。今や、この二つは密接に関わり合っており、リアルなクチコミの輪を生むにはどちらが欠けても成り立ちません。その中でも、最近特に影響力を強めているのがミドルメディアです。さまざまなニュースを生活者目線で面白く、また分かりやすく編集するスタイルが、生活者のクチコミに適しており、SNSでのつぶやきネタ探しの場として人気を博しており、企業の関心も高いのです。この流通構造にうまく乗るような、単なるファクトではない、ターゲットの利点とうまく合致するようなコンテンツの創出と発信が大切なのです。

  情報流通構造(図1)

また、こういったミドルメディアやSNSで話題になることは、最終的に企業から一番望まれるテレビ番組での露出にも大きく寄与します。テレビは企画を通す前段で、ネットでの盛り上がりなどをチェックしますし、雑誌でどのくらい特集されているかなど一連の話題感をチェックしてとり上げるべきか否かを判断するわけです。メディアは他メディアの取り上げ方も企画の判断材料にしているということ。これを私は“メディアtoメディア”(M2M)の情報流通と呼んでいます。メディアは決して1次情報だけを見ているわけでなく、社会がその情報をどう受け取るか、またその需要度がどのくらいあるのかを常に測っているのです。

情報流通構造の把握に並ぶもう一つのテーマは、図2に示した、自走するためのPRトライアングルです。PRで発信していく情報への生活者の納得感を最大限に高めることによって、生活者が自らの言葉で語り出すという2次的・3次的な広がりをつくることができます。この最初の設計をいかに緻密につくっていくかで、その後の自然拡散性が大きく異なるわけです。そこで私が提唱するのが「気付き」「納得」「体験」の三つのステップです。これをターゲットに順番に提供することで強い共感を生み出し、継続的な関係を築いていきます。特に「体験」は重要です。クチコミ一つとっても自身が体験したものってやはり語り口が非常に強くなりますよね。それがまた周囲の人への「気付き」となり、3ステップのサイクルが生活者起点でスパイラルに広がっていくのです。

自走するためのPRトライアングル(図2)  

この3ステップは、実はメディアに対しても重要なポイントとなっています。図中に青字で記したのが、メディア視点に置き換えたもの。まず「きっかけ」はメディアがこの情報を今取り上げるべき必然性を明確にするということ。次に、マスメディアが取り上げるに足る「信頼性」を担保する。そして、それが情報だけでなく、リアルな現象として起こっていると確認できる「取材場所」を用意する。例えば、イベントを開催して一般の人が体験して喜ぶ様子をつくり上げることができれば、それがそのままメディアの取材場所となるのです。

信頼性や取材先は、その獲得のためにメディア自らが動くものですが、こちらでも準備できればベターです。もちろん、最終的に取材先を決めたり、取材した内容を採用するかどうかは、メディアが判断することは言うまでもありませんがそのサポートをすることは大いに歓迎されるべきことだと思います。

そして、ターゲットにおいてさっきの3ステップがスパイラルに広がっていくのと同様に、メディア間においてもあるメディアの報道で、また別のメディアがその情報価値に気付いて取材の検討を始めるというトライアングルが自走し始めることが期待できるのです。

 ここで図解した二つの考え方の他、いくつかの最新事情を踏まえて「自分ゴト化」から「社会ゴト化」となるのが、いわゆるブームというものではないでしょうか。もちろん各案件の課題次第で適した施策は全く異なるため、われわれはパブリシティーという手法にこだわらずイベントによる直接体験の場を創出するなど、成果に合わせた最適なソリューションをニュートラルに計画していきます。これが、これまでのPRと戦略PRの違いといえるかもしれません。一つの手法でなく、より広い概念でPRを活用していくということが戦略PRの本質なのだと思います。


第3回へ続く 〕

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プロフィール

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    井口 理
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 局長 チーフPRプランナー

    1990年電通PRセンター(現電通パブリックリレーションズ)入社。コミュニケーションデザインを手掛けるチーフPRプランナー。
     
    企業のコーポレートコミュニケーションから、製品・サービスの戦略PR、動画コンテンツを活用したバイラル施策や自治体広報まで、幅広く手掛ける。最近では、熊本県の赤い特産物をアピールするため仕掛けた「くまモンほっぺ紛失事件」のPRプランを手掛け、世界的なPR業界紙「Holmes Report」が主催するアワードで「世界のPRプロジェクト50選」に選出された他、多数の口コミを起こしたキャンペーンとして、世界的な口コミアワードである「WOMMY AWARD」を日本で初めて受賞。Holmes Report「The Innovator 25 Asia-Pacific 2016」(アジア太平洋地域のイノベーター)選出。
    その他「Cannes Lions」「Spikes Asia」PR部門、「SABRE AWARDS ASIA PACIFIC」「PRWeek Awards Asia」「ヤングカンヌPR部門日本代表選考」審査員。2013年6月に「戦略PRの本質~実践のための5つの視点~」(朝日新聞出版)を上梓。自治体PR事例をまとめた「成功17事例で学ぶ自治体PR戦略」(共著:時事通信社)も好評発売中。

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