自由帳 vol.2
2014/05/22
東京コピーライターズクラブからTCC賞の新人賞が発表された。早々に運をつかんだ方に、年月がかかったぶん実力が光った方には特に、お祝いを申し上げたい。
私の場合、コピーライターを名乗って10年もしてからようやく、このタイトルを手にできた。同期や後輩が次々入賞する中、一度ならず諦めそうになった。賞なんて、と何度つぶやいたことだろう。
遅い春の知らせに一番喜んだのは上司だった。普段は厳しい言葉を短く発するだけの口元が、その時だけ緩んだことを覚えている。一方、先輩たちは違った。受賞後の打ち合わせで私が出すアイデアを、「これが新人賞のコピーか?」と笑うのである。「タイトルを返上してこい!」と真顔で言う人もいた。
広告賞で、新人賞、と名の付くものは、東京をはじめとするコピーライターズクラブくらいではないか。世間には、文学、映画、歌謡曲など、芸事の登竜門とし ての新人賞がある。勝手な解釈をすれば、コピーの新人賞もまさにそれではないのかと思う。コピーとは一種、芸なのではないかと。
コアアイデアの時代である。世界の広告がアート&コピーで構築されたフェーズは終焉(しゅうえん)し、アート&コードの波がコミュニケーションの行方を支配するという。なるほど。しかし、こうも思う。コードとはプログラム、言語の類い。コピーに言葉選びや言い回しの技術の優劣があるように、上手(うま)い下手、あるいは美醜があるに違いない。そして、その道にいる者は、褒められた次にどんなものを書くか、プレッシャーに押しつぶされそうになりながら、ひたすら芸を磨くのだろう、と。(つ)
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