個人と企業をつなぐコミュニケーション・テクノロジー #02

生体信号テクノロジー

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    水川 毅
    株式会社電通 Web&システム・ソリューション局 UXデザイン部

今回は、生体信号テクノロジーを使った企業と個人のコミュニケーションの可能性を考えてみる。生体信号とは、心拍、脳波、脈拍、呼吸、発汗などの生体現象を、センサーによって数値化したものだ。したがって、ここでいう生体信号テクノロジーとは、人間の生体現象をセンサーによって数値化し、それをある種のアルゴリズムで分析・解析するテクノロジーのことである。

装置の小型化でリアルタイム性、携帯性、継続性が高まっている

生体信号テクノロジーのなかでは、心拍計のついたスポーツ用腕時計が普及している。これは、心筋が動くときの微弱な電気をセンサーで感知して電気信号に変換し、信号のパターンから、さまざまな分析・解析を行っている。この技術をウェルネス領域で活用するならば、例えば正常な心拍なのか不整脈があるのかといった、分析・解析が可能となる。

上記フロウは、心電図を見て医師が心配そうに行うことと何ら変わらない、昔ながらのシーンと同じような気がするが、実は全く別のものに変化している。

例えば、電極を仕込んだTシャツを着ることで心拍の微弱電気を捉え、その生体信号をスマートフォンにBluetoothで送る、あるいはクラウドへインターネット経由で送ることができる。そして分析・解析をした結果を、スマートフォンに表示することが可能となる。

つまり、装置が小型化したことでリアルタイム性、携帯性(ウェラブル性)、継続性が高まっているのだ。ここで、第1回で述べたコミュニケーション・テクノロジーに必要な3要素を思い出してみよう。

①リアルタイム性 ②導入簡易性 ③継続性

携帯性(ウェラブル性)とは、コストを除けば本質的には導入簡易性について言っている。要は「生体情報→センサーで電気信号変換→分析解析→結果表示」が、省スペース、低コスト、高速、継続的にできるようになってきたということだ。

さまざまな業種でコミュニケーションの可能性が広がる

近い将来、アパレルメーカーが極薄の電極を仕込んだTシャツを発売するとともに、分析アプリを無料配布することも起きるだろう。年老いた父母にTシャツをプレゼントすれば、スマートフォンで毎日両親の健康状態を把握できるのだ。

高齢者の話だけでなく、若者がヨガ教室に通う場合にも、先ほどのTシャツを着ながら自分の呼吸パターンをモニターすることが可能となる。ヨガ教室の先生は、生徒の呼吸パターンを見ながらの指導もできるようになるのだ。その場合、ヨガ教室には通う必要もなく、レッスンは自宅のパソコンの前で済んでしまうかもしれない。

自動車メーカーの場合はどうだろう。心拍を取れるTシャツと分析アプリがあれば、万が一運転手の心臓にトラブルが起きても、それを感知してスマートフォンから自動車にスピードを落とすように指示を出して、最後は路肩に停止するといったことも可能になるだろう。

また、運転手が小型の脳波センサーを着けていれば、脳波から眠気を感知することができるので、スマートフォンから目が覚めるような音楽が流れ出すといった居眠り運転の防御策が可能となる。バス会社やタクシー会社、運送会社などにとっては、企業と従業員のコミュニケーション・テクノロジーとなりそうである。

航空会社の場合はどうだろうか。飛行機に乗ると大抵イヤホンが各座席に付いている。このイヤホンに脳波センサーが付いていたら、どんなサービスが提供されるのか考えるだけでも面白い。簡単に思いつくのは、機内で聴く音楽が、客の脳波によって自動的に選曲されるというものだろう。脳が快適だと感じる波形をキープさせたり、さらに気持ち良くなる音楽を自動選曲していくのだ。音楽だけではない。機内でどの映画を観たらよいか迷うこともあるが、そんな時にも脳波の状態からリコメンドできる。映画の感想についての脳波記録から、作品への満足度をチャート化することも可能だ。また、何度も乗る顧客の脳波データは、音楽だけではなく機内で販売される商品にも生かされ、顧客の好みに合わせた商品を紹介することもできる。

脳波や心拍といった生体情報は、究極の個人情報でもあるため、扱いには十分注意する必要がある。しかし個人側と企業側が互いに生体情報を活用したサービスを認め合えば、個人と企業をつなぐコミュニケーションの可能性は無限に広がっていくだろう。

プロフィール

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    水川 毅
    株式会社電通 Web&システム・ソリューション局 UXデザイン部

    1966年生まれ。コピーライターからキャリアを始め、CMプランナー、営業を経験。98年からインターネットビジネスに携わるが主にWEBディレクターとしてカンヌなど国内外の広告賞を50件以上受賞。2005年以降は電通の新規事業や、クライアントや、パートナー企業との事業の立ち上げを担当し、iPhoneアプリから事業プラットフォームまでを新たなビジネスモデルを作り出す。 共著に『企業のためのスマホ戦略羅針盤』。

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