個人と企業をつなぐコミュニケーション・テクノロジー #03

3Dプリンター

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    水川 毅
    株式会社電通 Web&システム・ソリューション局 UXデザイン部

最近、注目を浴びている3Dプリンター。あらゆる産業で、3Dプリンターがイノベーションを起こすとまでいわれている。なぜそこまで注目を集めるのだろうか。その理由は、「あらゆる産業で」使えるくらい応用範囲が広いからだ。インターネットがあらゆる産業に影響を及ぼしたように、3Dプリンターも、あらゆる産業に影響を及ぼすと考えられているのである。

あらゆる産業で、新しい可能性が生まれる

今まで、プリンターといえば2Dで紙にインクを印刷するものであり、その進化は画質、速度に限定されてきた。それが3Dになって技術や概念が拡張したことで、あらゆるジャンルに応用される可能性が出ている。つまり、どのような素材、手法で3Dプリントを行うかで、応用ジャンルも変わってくる。

ファッションの分野では従来の布ではなく、プラスチックやゴムなどで3Dプリントすることで、これまで見たことのない複雑な造形や質感、触感のものが作り出される可能性がある。服だけではなく、靴やネイルアート、付けまつげなどでも、新しい商品ができそうだ。

食品も同じことがいえるだろう。チョコレートを素材にして3Dプリントを行えば、今までに見たことのない造形のチョコレートを作ることができる。形が変われば、食べ方も変わるかもしれない。すると文化や習慣も変わる可能性すらある。宅配ピザもそうだ。ユーザーが好きなピザの形をスマートフォンからデザインして注文すると、オリジナルデザインのピザが宅配される時代も遠くないかもしれない。

観光地へ行くと、写真を撮ってくれるサービスがあるが、そこに3Dプリンターを置いておけば、撮った写真から即座にジオラマを作成して旅の土産にしてくれるサービスまで発展するかもしれない。

医療では、複雑な人間の臓器を3Dプリンターでリアルに再現した教材が作れるだけでなく、移植するための臓器そのものを作ったり、義手、義足制作などにも活用できる。

3Dプリンターの現状は、かつてのデッカイ携帯電話の状態

さまざまなジャンルの人が一斉に、3Dプリンターを使って何ができるだろうと考えだし、実行することでイノベーションが生まれていくだろう。イノベーションが生まれる状況とは、従来の高度で高価だったモノコトが手軽さによって取って代わられる状況である。「手軽さ」とは、従来より時間短縮とコスト削減ができ、それによって可能性追求の回数が劇的に増加すること。3Dプリンターの「手軽さ」とは、以下のようなことである。

・高速出力ができる
・精密造形が低コストでできる
・多様な材質での出力が可能
・それゆえ多くの試作品が作れる
・さまざまな産業で使われる
・プロからアマチュアまで、老若男女に使われる
・誰もがクリエーターになる(クリエーターと言わず、普通に使うようになる)

とはいえ、3Dプリンターは業務用と個人用があり、どちらも発展途上にある。値段が安くなったとはいえ、今後さらに進化し、値段ももっと手頃になるだろう。3Dプリンターの現状は、90年代初頭の巨大な携帯電話の状態かもしれない。だからこそ、3Dプリンターでイノベーションを生み出すためには、さまざまなジャンルの人が、今の段階から使って考えることが重要だといえる。

企業が3Dプリンターをユーザーとのコミュニケーションに活用

企業が広告キャンペーンなどで3Dプリンターを活用する場合には、ユーザーに3Dプリントを体験してもらうという視点から、以下のような施策が考えられる。

・3Dオリジナルノベルティーグッズのプレゼント
・3Dプリンターを店舗に置くことで来店促進
・ウェブ(アプリ)から3Dプリント体験の提供
・イベント会場での3Dプリント体験

3Dにする対象物は、ユーザーの写真から起こした顔や、商品のキャラクターなどが考えられる。または、新商品そのもののデザインをユーザーから募集し、優れたものを実際に3Dプリントして展示したり、プレゼントするといったことも考えられる。つまり、ユーザーに対し、以下の体験を提供できる。

①どんな3Dになるか想像してもらう
②想像したものを実際に作ってもらう(現場、あるいはウェブ、アプリ上から)
③製造プロセスを見てもらう(現場、あるいはウェブ、アプリ上から) 
④できたものをプレゼントする(触ってもらう)

①~④を通じて、ユーザーに何を伝えるか、ユーザーと一緒に3Dプリンターで何ができるかを考えることが、企業と個人をつなぐことにもなるだろう。ただし、3Dプリンターは、考えるだけでは前に進まず、使ってみなければ何も分からないのだ。難しく考えずに、企業もユーザーと同じ速度で考え、実行してみればよいのである。極端な話が、企業がユーザーに対し、3Dプリンターでしてみたいことを聞いてみるという手もある。あるいは安価な3Dプリンター複数台を導入して使い始めてみてはどうだろうか。

個人の場合は、いきなり3Dプリンターを購入するのが難しければ、3Dプリンターが置いてある工房などで体験してみるのがよいだろう。

3Dプリンターは、「個人情報を形にする」側面を持っている。ユーザー本人の靴のサイズから歯型、身体パーツ、臓器、DNAまで。それらは究極の個人情報である。それらを扱う企業は、その側面での配慮を求められることは言うまでもない。

プロフィール

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    水川 毅
    株式会社電通 Web&システム・ソリューション局 UXデザイン部

    1966年生まれ。コピーライターからキャリアを始め、CMプランナー、営業を経験。98年からインターネットビジネスに携わるが主にWEBディレクターとしてカンヌなど国内外の広告賞を50件以上受賞。2005年以降は電通の新規事業や、クライアントや、パートナー企業との事業の立ち上げを担当し、iPhoneアプリから事業プラットフォームまでを新たなビジネスモデルを作り出す。 共著に『企業のためのスマホ戦略羅針盤』。

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