顧客を動かすデジタル・マーケティングの実践 #02

「グローバルトレンド・テクノロジーの浸透と海外企業の取り組み」

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    森 直樹
    株式会社電通 CDC 部長 事業開発ディレクター、クリエーティブ・ディレクター

テクノロジーのグローバルトレンドで注目されている「IoT(Internet of Things)」。あらゆるモノがインターネットに接続されてつながっていく未来に向けて、グローバル企業はさまざまな取り組みを行っている。数年後に訪れるIoTの世界において、企業はいかにして競争優位を高めていくべきなのか。外すことのできない3つの重要な視点を解説する。

 

急速に拡大するIoTの世界

テクノロジーに関する海外企業の最新動向を、CES(Consumer Electronics Show)の事例で俯瞰し、幅広い視点からグローバルトレンドを紹介します。CESは毎年1月にラスベガスで開かれている世界最大級の家電ショーで、テレビや情報家電、フィットネス、ウェルネス、自動車など2000社以上の企業が参加し、10万人以上が来場します。最近はイノベーションを起こす主役としてモバイル関連の出展が増えており、特に今年はIoT(Internet of Things)に関しての発信が多くありました。

IoTは「モノのインターネット」といわれ、全てのものがコネクテッドされた状態のことを示しており、今後、市場が急成長していくと予測されています。2017年には、自動車や家電、電球、テーブルタップ、鍵など従来ネットにつながっていないもののネット接続総数が、パソコン、タブレット、スマートフォンの総数を超えるといわれています。

IoTに関わるソリューションの一つとして、インテルが「Edison」というチップを発表しました。SDカードサイズのデバイスに通信機能とCPUが搭載され、これをいろいろなガジェットに差し込むことでイノベーションが生まれるという提案をしています。また、ウェアラブルではメガネや時計、シューズなどに内蔵のセンサーがネットにつながることで、商品やサービス自体にイノベーションを起こしています。ヘルスケアやウェルネス、ライフスタイルの領域でも、血中酸素濃度や脈拍など体調をモニターするガジェットがネットにつながり、新しいソリューションが生まれています。もっと大きなスケールでは、家や自動車をネットにコネクテッドしようとする取り組みもあります。グローバル企業各社は、自動車とインターネットがつながった世界に大きなビジネスチャンスを見いだしており、黎明期の今から、大手IT企業各社が参入してしのぎを削っています。AT&Tは自動車をビジネス戦略の大きな柱の一つとして位置付け、「AT&T Drive」というスタジオで、テクノロジー企業やスタートアップなどとともに、機械工学とネットビジネスの両面から、自動車に関わるアプリやインターフェースの研究、開発を行っています。

IoTで重要なのは、API、オープンイノベーション、デジタル・コンタクトポイント

IoTにおいては、API(Application Programming Interface)、オープンイノベーション、コンタクトポイントの三つが重要となります。

APIはデジタルと接続する機器が情報をやりとりするためのインターフェースで、グローバル企業のCMOはAPIの活用が企業のコミュニケーションや経営戦略に大きく影響すると考えています。APIを活用した事例として「hue」というLEDのライトがあります。「hue」は「bridge」という端末を介してネットに接続され、スマートフォンなどのアプリで色や明るさ、オンオフなどをコントロールできます。この技術をAPIで公開することで、「hue」をコントロール可能な多くのアプリが個人やベンチャー企業によって開発されるようになり、商品自体の価値が向上しています。

また、オープンイノベーションに関しては、AT&Tが年に25回開催している「ハッカソン」の例があります。技術やデザインに優れた個人やスタートアップの人を集め、アイデアを募ったり、新しい商品のプロトタイプをつくったりして競い合う場で、AT&Tが提供するサービスを使ったアプリケーションを毎年500個つくり続けています。「Quirky」というプラットフォームもあります。一般ユーザーからアイデアを募り、その審査・評価を行い、商品としてつくり上げて、販売、マーケティングの支援を行うものです。企業の持つパテントやテクノロジーを外部の人の力で商品化することもあり、冷蔵庫の中で卵の管理をする「スマート卵トレイ」や、「スマートエアコン」などの商品が生まれています。

コンタクトポイントの視点では、UI(User Interface)/UX(User Experience)が重要となり、これをしっかりと設計することで商品価値を高めることができます。電通は「BUSINESS STRATEGY UI/UX」というフレームワークを提供しています。企業の抱える事業課題や経営戦略、商品戦略について深く洞察し、商品のインターフェースに落とし込んでいくもので、ストラテジーを考え、プロトタイピングを行いPDCAで評価し、最終的なデザインにしていくというプロセスで行います。

IoTは全てのものがネットにつながりデジタル化するという事象で、ネットビジネスの考え方が既存のビジネスに融合していくことを示します。そして、ネットに無関係であったものも、ネットビジネスの文脈に沿って考えることで競争優位が飛躍的に高まる可能性があります。その際に重要となるのがオープンイノベーションであり、ブリッジとなるAPI、さらにネットとのコンタクトポイントを設計するUI/UXです。これらのテクノロジーで商品に機能的価値をつくっていくとともに、使い勝手がよく、心躍らせるための情緒的表現を考えていく必要があります。マーケッターは、情報システムの領域で扱われていたこれらのテクノロジーを活用しながら、新しい商品の出し方、見せ方、広げ方を考えていくことが求められるようになります。

プロフィール

  • 97 mori l2
    森 直樹
    株式会社電通 CDC 部長 事業開発ディレクター、クリエーティブ・ディレクター

    光学機器のマーケティング、市場調査会社、ネット系ベンチャーなど経て2009年電通入社。デジタル&テクノロジーを活用したソリューション開発に従事し、AR(拡張現実)アプリ「SCAN IT!」、イベントとデジタルを融合する「Social_Box」、「SOCIAL_ MARATHON」をプロデュース。さらにデジタル&テクノロジーによる事業およびイノベーション支援を手がける。最近は、経営や事業戦略に基づくUI・UXデザインや、ネット事業モデルによる事業革新の支援プロジェクトに取り組む。
    日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会の幹事(モバイル委員長)。著書に「モバイルシフト」(アスキー・メディアワークス、共著)など。ADFEST (INTERACTIVE Silver他)、Spikes Asia (PR グランプリ)、グッドデザイン賞など受賞。ad:tech Tokyo 公式スピーカー他、講演多数。

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