顧客を動かすデジタル・マーケティングの実践 #06

「ちょっと先行く“スマホ体験”の創造」後編

~O2O、セカンドスクリーン技術とコラボで生み出すイノベーション~

スマートフォンビジネスは、ただアプリをつくれば成功するというものではない。むしろ、既存のプラットフォームアプリを活用することで、効率的にビジネスチャンスを拡大できる可能性が大きい。前編で紹介したポイントを踏まえ、後編では、スマートフォンビジネスに有効なプラットフォームアプリを、O2O、セカンドスクリーン、アプリタイアップの視点から具体的に紹介する。

 

普段使いのアプリで、新しいエコシステムをつくる

ちょっと先行く「スマホ体験」をつくるための方法として、プラットフォームとなるアプリを、O2O、セカンドスクリーン、アプリタイアップの3つの切り口から紹介します。1つ目として、スマートフォンから店舗につなげるO2O (Online to Offline)のプラットフォーム、「スマポ(※1)」です。

店舗に来店してもらったユーザーにポイントを付与して、店舗への新規来店、再来訪を促進するサービスです。ユーザーがスマポを立ち上げると、周囲にあるチェックイン可能な店舗が検索でき、来店してチェックインすることでポイントを獲得することができます。このポイントは各加盟店との互換性があるので相互に来店のモチベーションを喚起することができます。リリースして3年弱のサービスですが、O2Oの画期的なサービスとして各メディアなどから注目されており、実証実験では、実際の購買促進につながることも示されています。新たにプロダクトにチェックインする機能も導入されました。店舗にチェックインし、プロダクトを確認することで答えられるクイズに解答するとポイントが付与されます。また、音響通信という基本技術を使用するため、個々の端末による制約を受けにくく、かつ、コーナー単位などの狭い範囲にピンポイントで誘客が可能です。

2つ目はセカンドスクリーンの事例です。スマートフォンを、テレビを見ながら立ち上げられている2番目のスクリーンとして捉え、マスメディアからスマートフォンにつなげていく考え方で、Offline to Onlineと呼んでいます。このプラットフォームとして「GGM(Gガイドモバイル)(※2)」という番組表のアプリがあり、現在、1700万ダウンロードされています。

東阪のテレビ番組を常時リアルタイムに音声認識する機能があり、テレビを見ながらアプリを立ち上げると、音声認識でどの番組を見ているかが分かり、CMとの連動も可能になります。テレビ視聴者に、リアルタイムでクーポンやデジタルコンテンツの配布、自社サイトへの誘引など、さまざまな形でアプローチできます。例えば、バイト探しの「an」を運営するインテリジェンス社はキャンペーンとして、スポットCMを偶然キャッチした人が応募できるという仕組みによる、時間帯を指定しない新たな形態の施策を実施しました。GGMはCMとの親和性が高く、音声認識を使ってプッシュで企業情報を送り込むことで、自発的には行動を起こさない潜在顧客に対し、偶然性をフックにした新しいアプローチを実現します。

O2Oとセカンドスクリーンをつなげると、マスメディアから店頭までの一貫した施策が可能になります。これをO2O2O(Offline to Online to Offline)と呼んでいます。

このプラットフォームの事例として「Stac(※3)」があります。

テレビや街頭、店頭などあらゆるコンタクトポイントで、音声認識またはQRコードを使ってスタンプを集められるスタンプラリー型のキャンペーンアプリです。放送を基点として、スマートフォンを使ってリアルの場まで誘導していく仕組みで、クロスメディア施策の効果をアップすることができます。スタンプラリー達成でインセンティブが付与されるというモチベーションの設計で、ユーザーに楽しみながら商品関与を高めてもらえるとともに、企業にとっては、自社アプリを使用しなくても、深さ、広さの両面からコンテンツコミュニケーションが可能になります。

そして3つ目の切り口は、アプリタイアップです。普段使いのアプリを企業のコミュニケーションに活用する考え方で、事例としてカレンダーアプリの「Jorte(※4)」を紹介します。

「Jorte」はグーグルカレンダーやフェイスブックと連携でき、カスタマイズも可能です。全世界で2000万ダウンロードを超え、国内でも間もなく1000万となります。企業が強いコンテンツを保有する場合は、「日めくりカレンダー」としてJorteにオリジナルのコンテンツを組み込むことが可能で、そうでない場合は、「イベントカレンダー」の機能で、企業関連の情報を毎日の予定の一つとして表示していくことが可能です。例えば「今日のおすすめレシピ」や「タイムセール情報」「新商品ニュース」などの企業情報を、設定したターゲットのスケジュールに違和感なく入れることができます。予定を確認するために1日1回は立ち上げられ、ユーザーのスケジュールに重ねることで予定をつくり出すことができ、オンライン、オフラインへの送客が可能になります。

最新技術を活用した取り組みも必要ですが、スマートフォンビジネスにおいて一番大切なことは、ユーザーが普段から使っている、あるいは使いたくなるという視点です。そして、音声認識など、どのような端末でも使える基本技術を活用することも重要です。LINEやフェイスブックを活用することも有効ですし、自社アプリをつくることも否定しませんが、今までのやり方では埋もれてしまいます。もっと大きな視点で、新しいエコシステムをつくることも一考の価値があります。そこにはまずペイドメディアとしての広告があります。一方で企業が保有するオウンドメディアがあり、そこでリピートを促すためのCRMが行われ、顧客をつなげるものとしてロイヤルポイントが活用されます。さらにアーンドメディアにおいて購入したものなどのシェアが行われ、そこでリワードしていく方法も考えられます。これらの間に常にスマートフォンが介在し、O2O、セカンドスクリーンなどの施策が行われます。そして全体がつながっていくとDMP(Data Management Platform)によるパーソナライズ配信の世界観が構築され、コンテンツマーケティングがやりやすくなります。さらに、オムニチャンネルの取り組みや、下支えになるビッグデータの活用も可能になるわけです。

そしてこの中心に、普段使いのスマートフォンアプリが存在するというエコシステムをつくることができるのではないかと思います。

 

(※1)『スマポ』・・・スポットライト社が独自のモバイル通信技術を用いて開発した、スマートフォンによる来店共通ポイントシステムです。無料のアプリをダウンロードして、提携ブランド(大手量販店や大手コンビニなど)のお店に行くだけで、商品の購入に関係なく共通のポイントなどの特典がたまる、というO2O の先駆け的サービスです。スポットライトと電通は来店ポイントシステムを活用した企業マーケティング支援サービスで業務提携を行っています。

 

(※2)『Gガイドモバイル』・・・インタラクティブ・プログラム・ガイド社(IPG)が提供する携帯電話利用者向け電子番組表(EPG)サービスです。「音声キャッチ」機能により、テレビ放送のダブルスクリーン端末として利用でき、テレビを見た後にクーポンを配布したり、視聴中に特別な番組情報を確認したりなど、新しい視聴体験を提供することが可能となります。音声キャッチ機能は、IPGの「minds」(Meta Information Distribution System、マインズ)のメタデータと電通のキャンペーンプラットフォーム「Click AD(クリックアド)®」の音声認識技術および素材ID管理技術を活用した、独自の番組・CMマッチングサービスです。

 

(※3)『Stac』・・・日本エヴィクサー社が提供する「くらしにプラスα」になるものをためるスマートフォンアプリです。音声認識技術を活用することで、指定された音声が流れる場所(スタンプスポット)でアプリを起動するだけで自動的にスタンプがたまり、お得な特典に交換できます。また、企業や店舗に対しては、メディアミックスにも対応する集客・販促ツールのキャンペーンプラットフォームを提供します。日本エヴィクサーと電通は「Stac」を活用した企業マーケティング支援サービスでパートナーシップを結んでいます。

 

(※4)『Jorte』・・・ジョルテ社が提供するシステム手帳/カレンダーアプリです。本物のシステム手帳の雰囲気に近付け、見た目の良さ、使いやすさにこだわり抜きました。ジョルテと電通は「Jorte」を活用した企業マーケティング支援サービスでパートナーシップを結んでいます。

 

プロフィール

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    丸山 裕史
    株式会社電通デジタル

    2000年から大手シンクタンクでビッグデータ解析に従事。
    2005年に電通入社後、マーケティング効果検証/コンサルティング業務を経て、現在は国内外のテクノロジー企業とのサービス/ビジネス開発をベースとしたソリューション提供を行っている。主な担当領域は媒体社、デジタルプラットフォーム、小売流通業など。

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