Dentsu Design Talk #36

ファッション・イメージで、新形態メディアをつくる!(後編)

  •  1 pr
    軍地 彩弓
    株式会社gumi-gumi gumi-gumi代表取締役/ファッションディレクター
  •  3 pr
    米津 智之
    EROTYKA TOKYO PARIS クリエイティブ・アートディレクター
  •  2 pr
    ティファニー ゴドイ
    EROTYKA TOKYO PARIS クリエイティブコンサルタント

電通デザイントーク第120回「ファッション・イメージで、新形態メディアをつくる!ファッション・ブランディング」の後編(前編はこちら)。米津智之氏とティファニー・ゴドイ氏、そして軍地彩弓氏がデジタル時代の雑誌の可能性、日本のファッションカルチャーやブランディングの可能性について語り合う。

雑誌だからこそできるクオリティーをつくり出すこと

ここからは、スペシャルゲストとして軍地彩弓氏が登場。軍地氏の新しいキャリア展開から話が始まった。

 

 

軍地:私はいろいろと雑誌を変遷してきまして、ついこの間7月1日付で『Numero TOKYO』に移籍しました。私はもともと『ViVi』という女性誌の編集を長年やってきまして、そこから2004年に『GLAMOROUS』という雑誌を立ち上げ、米津くんやティファニーと対極にある、ものすごく大衆的な、いわゆる日本のガールズマーケットの世界でずっとやっていました。そんな私が、ある日突然、世界で『VOGUE』を出している会社から新雑誌をつくってくれと言われて、2008年にコンデナスト・ジャパンに異動して『GLAMOUR』の日本版をつくりました。その後も紆余曲折あって、『GQ』をやったり、2011年には『VOGUE girl』という新雑誌、日本人のリアルな女の子たちにモードを着こなしていくことを伝える雑誌を立ち上げました。またパッドサイズという新メディアを開発して、初めてポケットサイズの雑誌を出しました。同時にiPadに力を入れたので、アプリも出して。両方iPadのサイズの基準です。アプリ版は世界中でダウンロードされて、4号の累積で100万ダウンロードを超えました。うれしかったのは、調査をすると3、4割ぐらいが海外からのダウンロードだったこと。やっぱりビジュアル・コミュニケーションって言語を超えられるんですね。

雑誌とウェブ、そこをつなぐSNSがある。現代の編集者はそれぞれの良さ、それぞれの強みを生かしながら使っていかなきゃならないのかなと思います。ウェブの一番正しい使い方っていうのは、情報をきちんと格納すること。雑誌が発信起点になるプラットフォームになって、アーカイブがウェブでできていく。そのためにはやっぱり雑誌じゃないとできないクオリティーをつくり出すことがまず重要。雑誌が心臓だとしたらSNSは血管だと思っているので、紙から発信されたものをいかにたくさんの人に伝えていくか、そこはそれぞれの特性の使いようだと思っています。

 

紙は記憶、ウェブは記録

ティファニー:今は誰でもウェブで自分のメディアを立ち上げられるから、逆に紙をベースにするのがプロフェッショナリズムだと思います。そこをバックボーンにするのは今の時代、すごく大切ですね。

軍地:やはり私の中での雑誌編集者としての志は、人に記憶を与えたいということ。「あの雑誌は良かった」という読者からの言葉が、私が今までやってきた編集者人生を支えているもの。かつてコピーで「ミーハーで何が悪い」というのを書いたんですけど、それをいまだに好きだと言ってくれる人がいます。この体験と、デジタルの数秒で記憶からなくなっていくフローの体験のギャップでしばらく苦しんでいたのは事実。自分のプラットフォームはアナログに置いて、あとはツールとしてウェブやデジタルを使っていけばいいという結論に至ってから、逆にすごくアナログ回帰をしたくなったというのが本音です。その中で、一番モードの発信性といろんな可能性があり、日本だけじゃなくインターナショナルをつなげるメディアとして『Numero』を選んでこのたび移籍しました。

米津:その紙回帰というのも、デジタルを一周して、あらためて紙の使い方を問うということですよね。

軍地:そうですね。やっぱり紙がやらなきゃいけないことは編集力であり、有料のメディアであるということ。このことによって、買った人はすでに自分のファンであるという関係性ができます。私が思っている紙とウェブをどう差別化していくかへの答えは、「記憶と記録」なんですね。今のウェブの中で流れている情報が、フェイスブックで話題になって、バズが上がったりというのはあるけど、そのたくさんのタイムラインを超える、「あの時の『ViVi』の安室ちゃんの表紙ってすごかったですね」と言ってもらえるようなものを紙でつくり続けなきゃいけないと思っています。それは退化しているとか、時代錯誤で博物館的な考え方と言われるかもしれないけど、私はもう自分の残りの編集者人生で、ちゃんと記憶に残るメディアをつくっていきたいというのが、今の心境ですね。

ティファニー:本当にしっかりとしたクリエーションがあって、そこからキュレーションする。ファッション・クリエーションはエゴイズムじゃなくて、文化。人間の生活を鏡にするもの。だから、そこをちゃんと追求したら、残るものになる。何年も後で思い出すものになる。それがお互いにやるべきことですね。

米津:結局メディアというのは、イコール「メッセージがある」ということですよね。メッセージがあるから、人に伝えるためにメディアがあるわけで、デジタルだけになってしまうとフロー情報は結局記憶に残らない。記録だけになってしまう。そうするとそのメッセージは何だったのかという話につながるということですね。

軍地:そうだと思います。特に私が今、編集部で言っているのは、とにかく何を伝えたいかをコアに考えていこうということ。今は雑誌がカタログ的になってきて、伝えるべき強いメッセージを持っている媒体が少なくなったのかなと思います。あとは、やはり2000年代から広告主導のつくり方にかなり大きくシフトしてきてしまって、タイアップが入っているから編集でもそのブランドに大きく誌面をとらなきゃいけないというような、編集と広告の力の逆転がある。だからさっき米津さんたちが、1号目は広告を一切排して、まず自分たちのクリエーティブ表現だけを見せたというのは、すごく目が覚める思いでした。

 

ファッションが国際社会で貢献できること

軍地:2020年東京オリンピックをひとつのポイントにして、何を日本が発信するのかといったときに、ファッションの役割はすごく大きいと思います。まず、海外に比べてファッションリテラシーがこれほど高い民衆はいないし、そのファッションリテラシーの高さをつくっているのは、着物かもしれないと思っています。着物ってジェンダーレスじゃないですか。合わせればどうにでもなるものをつくって、戻すと小さくたためて、また仕立て直せてという、未来に必要なコンセプト、ジェンダーレスとかエシカルな部分とか全部持っているのが実は日本の着物カルチャーだと思っていて、そういうものをつくり得た日本だからこそ、ファッション国家としてもっとアピールしていかなくちゃいけないと思うんです。そこでファッションに求められるものは、日本のこれからの未来への示唆だったり、いろんな美意識が背景にあるもの。それはこれから私たちがよりやっていかなきゃいけないテーマだし、もっと日本のファッションを盛り上げたいです。

ティファニー:メード・イン・ジャパンに世界はいつも興味を持っています。日本の昔からのデザイン文化は、世界の美的センスと全く違うから。日本から発信するオリジナルなファッションはこれからもすごく出てくると思います。ただ、若い世代はそのような日本的繊細さから離れてきている気がして、それはすごくもったいない。日本の美意識は、世界のスタンダードにもなれる価値なのに。

米津:ファッション×イノベーションですよね。日本にはテクノロジーや技術がすごくあるので、それプラス、独自のファッションイメージで、新しい文化を世界に発信していきましょう。

〈了〉

企画プロデュース:電通人事局・金原亜紀 記事編集:菅付事務所 構成協力:小林英治

プロフィール

  •  1 pr
    軍地 彩弓
    株式会社gumi-gumi gumi-gumi代表取締役/ファッションディレクター

    大学在学中から、リクルートのフリーペーパー「SENSOR」編集部でプランニングとマーケティングを学ぶ。同時に、講談社「Checkmate」誌でフリーランスのライターとして活動をスタート。大学卒業後、同社「ViVi」編集部で、ファッションライターとして活躍。2000年からの109ブーム、安室奈美恵に始まるギャルブーム、ブリトニー・スピアーズをいち早く表紙で起用した、セレブブームなど数々のヒットを生み出す。2004年「GLAMOROUS」創刊にファッションディレクターとして関わり、「エイジレス」「アラサー」などのコンセプトを打ち出した。コンデナスト入社後、「GQ JAPAN」編集長代理を経て、2011年「VOGUE girl」を創刊。モード業界とリアルマーケットをつなぐ存在となる。VOGUE girl クリエーティブ・ディレクターを務めるとともに、gumi-gumi代表取締役 ファッションディレクター。

  •  3 pr
    米津 智之
    EROTYKA TOKYO PARIS クリエイティブ・アートディレクター

    EROTYKA TOKYO PARISのクリエーティブ、アートディレクション、デジタルセクションを担う。shu uemura cosmetics、Mark Jacobs、Parfums GIVENCHY、Veuve Clicquot、L'oreal Paris、ato、JOHN LAWRENCE SULLIVANなどファッション、ビューティーを舞台とした数多くのディレクションに携わり日本特有のエレガンスとシンプリシティーを極めた作品を数多く生み、国内外での評価も高い。また近年では、アートディレクションやデザインの枠にとらわれず企業などのブランディングに携わり、クライアントと消費者の目線からお互いがコミュニケーションをとれるような多角的なアウトプットでインパクトあふれるクリエーティブを発信している。京都精華大デザイン学科非常勤講師。

  •  2 pr
    ティファニー ゴドイ
    EROTYKA TOKYO PARIS クリエイティブコンサルタント

    EROTYKA TOKYO PARISのクリエーティブコンサルタント、 ファッションエディティングセクションを担う。 1997年に来日以降、パリと東京を拠点にライフスタイル、ファッションエディターとしてNew York Times、V、encens、VOGUE JAPAN、SPUR、また style.com、 nowness.com、colette.fr など多種媒体に寄稿。style.comから「インターナショナル•ファッション•インサイダー」の称号を受ける。 ニューヨークのF.I.TやJapan Society、またH&M、ナイキなど、日本マーケットを意識した団体・企業から日本のストリートファッションのエキスパートとして認識され、コンサルタントやレクチャー、またスペシャルプロジェクトへの参加など、幅広く活動。著作に「Style Deficit Disorder 」(Chronicle Books、2007)、「Japanese Goth」(Universe、2009)があり原宿を拠点にした東京ストリートファッションを網羅している。

バックナンバー

関連記事

続きを見る
ページ先頭へ