“社会”からリソースを得る「ソーシャル・ソーシング」の可能性 #06

社会と共創するために必要なリスク管理とは

  • 蓮村 俊彰
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター
 
※用語解説
【ソーシャル・ソーシング】アイデア、資金、スキルなど社会から必要なリソースを提供してもらうことで、社会の皆と共創していく仕組み。
【クラウドファンディング】インターネットを介して広く個人からお金を集める仕組み。「寄付型」「購入型」「融資型」「投資型」など、さまざまな手法がある。
【ファンドレイズ】ある特定の目的のためにお金を集めること。

 

 

 

前回ご紹介させていただいたJ-WAVE LISTENERS’POWER PROGRAMによる「サッカークラブ“湘南ベルマーレ”の魅力を伝えるラジオ番組を作りたい!」のファンディングは無事に目標金額を超える支援を集めることに成功しました。
今回は購入型クラウドファンディングを例に、そこに存在するソーシャル・ソーシングの「リスク」を分析したいと思います。
前提として、本コラムで取り上げてきたJ-WAVE LISTENERS’POWER PROGRAM広島テレビ てれびdeふぁんでぃんぐ ひろしまは「購入型」と呼ばれるクラウドファンディングです。購入型以外に「寄付型」「投資型」「融資型」と呼ばれるものがありますが、今回は触れません。
クラウドファンディングプロジェクトに登場するプレーヤー「支援者」「プラットフォーム」「プロモーター」の3者を挙げ、それぞれによる、それぞれへのリスクを確認していければと思います。


ソーシャル・ソーシング06図

 


◆プラットフォームに潜在するリスク

まず、支援者やプロモーターから見た「プラットフォーム」に潜在するリスクとして、

 
 

 システム障害や外部の攻撃によりプラットフォームが停止、プロジェクトが頓挫する
資金の振り込み前に事業者が破産、倒産する。もしくは事業者が資金を持ち逃げする
 個人情報が漏洩、流出する。無断で個人情報を2次使用したり転売する
 何らかの不祥事によりプロジェクトに甚大な悪影響を及ぼす

 
 

など、故意の有無にかかわらずさまざまなリスクが想定されます。
支援者やプロモーターによるプラットフォームリスクの管理方法として、実績が豊富で、システムが安定し、セキュリティー意識が高く、組織のガバナンスが行き届いた、経営が安定しているプラットフォームを選ぶとリスクヘッジにつながるといえるかもしれません。
しかしなかなか、外部から見て分かる部分と分からない部分があるので、口コミの調査や起案経験者へのヒアリングなどを積極的に行い情報を集めるとよいでしょう。
もう少し市場規模が拡大してくれば、預かり金を分別管理し信託保全する会社も現れるなど、さまざまな選択肢が生まれるかもしれません。
大手マスメディア系では、J-WAVEや広島テレビをはじめ、静岡新聞社・静岡放送が運営するプラットフォームなどが存在します。昨今の報道ではフジテレビがクラウドファンディングプラットフォーム事業に参入するなど、業界が活性化しています。
プラットフォームはその手数料率も無料(カード決済手数料のみ)~20%など、事業者間で差があるので、さまざまな要素を見比べつつ、安心安全を第一に選択するのがよいでしょう。

 

◆プロモーターに潜在するリスク

支援者やプラットフォームから見た「プロモーター」に潜在するリスクとしては、

 
 

 目標に掲げたプロジェクトが失敗する。もしくは最初から実現するつもりがない(詐欺)
 目標に掲げたプロジェクト内容やリターンの仕様、時期を説明なく変更する
 プロジェクト完了前にプロモーターが破産し実現が困難になる
 個人情報を漏洩させたり、同意なしに2次利用や転売をする
 リターンに掲げた品やサービスのクオリティーが著しく低い

 
 

などがあります。残念なことにクラウドファンディング先進国・米国に限らず、日本国内でも「詐欺事件」の疑いを持たれたケースがあります。信用のおける、実現力のある人物や団体か否か、プラットフォームの審査力と支援者一人一人の鑑定眼が求められます。
フェイスブックやツイッターでプロモーターのアカウントを眺めるだけでも、友人関係や過去の発言から人柄や交友関係が見えてくるので、一支援者としては、そういったものを支援を決める前に見ておくことも参考になります。

また、プロモーターが気を付けなくてはならないのが、リターンの内容です。冒頭の通り「購入型」と呼ばれるクラウドファンディングの場合、リターンで「金銭」やそれに準ずるもの「金券等」を返すことはできません。対価性のある商品やサービスといったものをリターンにする必要があります。


◆支援者に潜在するリスク

プラットフォームやプロモーターから見た「支援者」に潜在するリスクとしては、

 
 

 悪意ある者の参加を防ぎにくい(クレーマー、ストーカーなどの出現)
 反社会勢力の介入
 目標金額達成後のカード決済キャンセル
 炎上・風評被害の発生

 
 

などがあり得ます。クラウドファンディングに限らず、BtoC小売ビジネスを行っている限り、ついて回るリスクです。真摯かつ誠実な対応を心がけ、支援者との間に信頼関係を形づくることでトラブルの多くは防げます。しかし最初から悪意がある人間から害意に基づく攻撃や妨害を受けた場合、早めに専門家に相談するなどの対応が必要です。

 

◆クラウドファンディング市場の健全な成長のために

リスクを挙げ連ねましたが、おおよそ、クラウドファンディングに限らず、さまざまなビジネスにおいても発生する可能性があるリスクです。その他のビジネスと同じく、一つ一つ気をつけていけばよいと思います。
クラウドファンディングにおいて特有なのは「いまだ世の中に存在していないもののために、先にお金をもらう」という点です。支援者の期待値と実現されたものの間に乖離があるとトラブルの元になります。支援者、プラットフォーム、プロモーターの間でコミュニケーションを密接にとっていき、トラブルが起きないようにすることが大前提ですが、このクラウドファンディング市場が今後健全に成長するためには、プラットフォームの役割が鍵になります。
現実的に一般生活者が全てのプロモーターの信用力や実行力を自ら調査・判断するのは不可能です。自己責任を求められると支援自体が面倒に思えてしまい、市場が縮小します。そのため、市場の健全な成長のためには、生活者が安心して気軽に、気に入ったファンドに対して支援を行える仕組みが不可欠です。その安心を提供できるプレーヤーこそ「プラットフォーム」だと感じています。
プラットフォームは自社サービス利用者であるプロモーターを審査しています。審査するだけでなく、立案から実行までプロモーターを支援するプラットフォームも存在します。この審査力、支援力、もしくは審査で合格させ支援したにもかかわらず事故が起きてしまった際の支援者への補償力が、今後プラットフォームに期待される最大のバリューとなるでしょう。そしてこのバリューが市場に提供されて、プラットフォームのブランド価値が向上していけば、この業界は更に発展すると感じています。

2011年に日本で始まった購入型クラウドファンディングですが、まだ社会問題になるような大きな事件、事故は起きていません。このまま健全に市場が大きく成長し、日本のスタートアップ起業や地域活性化を担う社会の公器となっていけば、とてもうれしく思います。

プロフィール

  • 蓮村 俊彰
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

    学生時代にカメラマン業で法人化(起業)。約40カ国を取材。その後、社会的影響力のある組織でソーシャルビジネスを興したく電通に入社。電通主導のビジネスの新規開発に取り組む傍ら、空港民営化などのPFIコンセッション入札事業構想アドバイザリ業務などのPRE/PFIコンサルティング、新規商業施設開発事業構想コンサルなどに従事。
    事業開発例として、2013年日本初のクラウドファンディングによるマスメディア放送「LISTENERS’POWER PROGRAM」事業を構想、立ち上げに参画。2016年日本初のFinTech産業拠点The FinTech Center of Tokyo 「FINOLAB」の事業を構想、 設立に参画、現在も運営チームとして日々活動中。

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