ろーかる・ぐるぐる #43

爆☆妄想

「大都会東京の大学」に進学したつもりが、国分寺から単線の電車に揺られてひと駅。1、2年のいわゆる教養課程は小平市の片すみにあるキャンパスで過ごしました。せっかく商学部に入ったのに講義は一般教養ばかりなので、ついついさぼりがち。学食でテニスサークルのメンバーとひたすら駄弁るのが日課でした。

学食のカレー…といっても現在お世話になっている慶應(三田)のですが。

 

そんな中、人生で初めて「マーケティング」を教えてくださったのが田内幸一先生(たしか「商業通論Ⅱ」)でした。単位が取りやすいといううわさもあって大勢履修していたものの、1限目だったしほとんど出席も取らないので出席者はまばら。ぼくも決して熱心な学生ではありませんでしたが、大教室の後ろの方で聞いたお話が今でも頭の片隅にあります。

仏教には「莫妄想(まくもうぞう)」という教えがあります。妄想すること莫(なか)れ。ここで言う「妄想」とは心が外界を判断、分別すること。そういった考えや思いにとらわれて、心が迷い、不安や執着に陥らないように、という教えです。しかしマーケティングの基本は「妄想」。あれこれ自由に考えるチカラです。たとえば暇な時、「カラス―黒い―のり―巻く―ヒモ―水商売―銀座…」。永遠に連想ができるのも、ぼくの頭が柔らかいから。君たちは頭が固いから、すぐ連想もストップしちゃうでしょ?もっと妄想をしなさい。妄想を。

なんせ出来の悪い学生の記憶なのであまり自信はないのですが、おおよそこんな内容だったと思います。他にも「価格決定にはいろいろな理論があります。でも誰もが知っている経営者に言わせると『一晩寝ずに悩んで、明け方ふっと心に浮かんできた価格が正解』っていうんだから、どういうアプローチが正しいかはよく分からないよね」ともおっしゃっていました。

 

当時、教科書だか参考図書だかに指定されていた「マーケティング」(田内幸一/日本経済新聞社刊/既に絶版)を久々に見てみたら「科学としてのマーケティング」や「市場の把握」などの章で科学的・客観的アプローチにそれなりのページが割かれていました。もちろんそれらはマーケティングの重要な要素ですが、一方で最初の出会いの時に「それは人間的な営みだ」「それは科学であり、科学でない」という側面も紹介してくださった田内先生には心から感謝しています

フィリップ・コトラー教授のお名前を初めて知ったのも田内先生の授業でした。そのコトラー教授が先日、電通報の「いま日本企業に求められるマーケティング重視への大転換」という記事の中で「経営とはマーケティングそのものである」「マーケティングとは、顧客と企業とを結び付けるもの」とおっしゃっていました。こんな「当たり前」とも思えることを改めて強調しなければならないのは、いまだに多くの人が「マーケティング」を単なるプロモーションとか、調査とか、生活者をコントロールする仕組み、ビッグデータで復権しつつある時代遅れのアプローチだと考えているからでしょう。

「マーケティング」がそんなに退屈なものだというレッテルを貼ったのは誰なんでしょう?まぁ犯人捜しをしても仕方がないので、少なくともぼくはこれからも真の意味でのマーケティングにチャレンジしたいです。そしてその時には必ず妄想、妄想。全身全霊で妄想しようと思います。

さて、次回は11月18日に発売される新商品「天国のブタリーナ」のご紹介をしましょう。

どうぞ召し上がれ!

プロフィール

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    山田 壮夫
    株式会社電通 第1CRプランニング局

    1969年生まれ。アイデアを核として広告キャンペーンはもちろん、店舗開発からテレビ番組の製作まで手掛ける。特に最近は全国の地方新聞社厳選お取り寄せサイト「47CLUB」と連携してローカルにおける商品開発作業にチャレンジしている。2009年カンヌ国際広告祭(メディア部門)審査員。慶應義塾大学(メディア・コミュニケーション)、明治学院大学(経営学)非常勤講師。著書に『〈アイデア〉の教科書 電通式ぐるぐる思考』(朝日新聞出版)。

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