DMCラボ・セレクション ~次を考える一冊~ #26

破壊的アイデアを生み出す5つのステップ『デザインコンサルタントの仕事術』

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    京井 良彦
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター  プランニング・ディレクター

今回は、ルーク・ウィリアムス著『デザインコンサルタントの仕事術』(英治出版)を取り上げましょう。著者は、元は世界的なデザインコンサルティング企業「フロッグ」のクリエーティブディレクターです。
邦題が誤解を与えそうですが、原題は「DISRUPT(破壊せよ)」であって、デザインについてではなく、ビジネスにイノベーションを起こすための「破壊的な思考法」を身につけるための実務書です。

ばらばらの靴下を3つ1組で売ったらどうなるだろう?「リトルミスマッチ」
ばらばらの靴下を3つ1組で売ったらどうなるだろう?

誰も考えていないことを考え、誰もしていないことをしなければならない

ここでいう「破壊的」の意図は、他の誰も想定していないソリューションを送り出して、マーケットを驚かせるということです。
これからの10年、企業がビジネスの競争に打ち勝っていくためには、競合が思いもつかず、まねもできないようなアイデアを生み出し、実現していかなければなりません。そのためには、「誰も考えていないことを考え、誰もしていないことをしなければならない」というわけです。

これまでビジネスに関わる人は、問題点(=修正が必要なところ)を見つけ出し、そこを集中して解決するように訓練されてきました。しかし本書では、この「壊れていなければ触るな」という態度を、破壊的思考に敵対するものだとしています。
これから重要なことは、そういう態度ではなく、「どうしたら、今うまくいっている勢力図を破壊できるか?」という思考だというのです。つまり、「壊れていないところ」こそ、手をつけるべきだというわけです。

常識を破る5つのステップ

本書では、破壊的思考を実践していく方法が「常識を破る5つのステップ」として説明されていますので、以下に紹介しましょう。

1.破壊的な仮説を立てる
「色を替えたら…」や「新機能を増やしたら…」などのちょっとした小細工を考えるのではなく、想像のはるかかなたを突き抜けるようなアイデアで頭を揺さぶります。それを「正解を探すためには、あえてまず間違えることだ」と説明しています。 例えば、「ばらばらの靴下を3つ1組で売ったらどうなるだろう?」という仮説から「リトルミスマッチ」というファッションブランドが成功した事例などが紹介されています。

2.マーケットに眠る破壊的チャンスを見つける
次に仮説の対象である人々を観察します。どんな人がどんな目的で行動しているか、中でもいちばん目につかない場所を探ろうというものです。
本書では、従来型の調査ではなく、短時間で、直感的、定性的にインサイトする手法がいくつか紹介されています。

3.破壊的アイデアをいくつか生み出す
見つけた破壊的チャンスを分解し、製品、サービス、情報の要素を混ぜ合わせて、破壊的アイデアに転換する手法が紹介されています。例えば、任天堂「Wii」のモーションコントローラーは、テレビゲーム機を参考にしたのではなく、全く関係ない自動車のエアバッグに使われていた加速度センサーからひらめきを得たものです。
また、「iPod」の清潔でミニマルなデザインは、デザイナーのジョナサン・アイブ氏がアップルに入る前、便器のデザインを手掛けていたことによるという事例も紹介されています。
このような全く関係のないところで見つけたチャンスをいろいろと組み合わせ、まずはそこに「名前」をつけることからアイデアに転換していこうと説明されています。もちろん、こういった想像もつかないアイデアには、競合も現れないというわけです。

4.アイデアを破壊的ソリューションに仕上げる
破壊的アイデアは素晴らしいですが、それは実現されてはじめて価値を生むものですので、今度はそれを破壊的ソリューションに転換しなければなりません。
本書では、この段階でエンドユーザーを開発プロセスに巻き込み、いくつかのアイデアを人々に試してもらいながら評価を受け、プロトタイプ開発を進める手法が紹介されています。つまり、実現策に転換する段階で、共創マーケティングのノウハウを活用していこうというわけです。

5.破壊的プレゼンで売り込む
本書がユニークなのは、これまでのステップで生み出された破壊的ソリューションを、社内や社外のステークホルダーに売り込み、投資や賛同を得る手法まで紹介されているところです。
ほとんどの人は、破壊的ソリューションを、破壊的だという理由だけで採用しません。そこに価値があるということを信じてもらうためには、普通以上の破壊的なプレゼン(なんでも破壊的ですが…)が必要になるわけです。

本書では、これを9枚のスライドを使い9分間でプレゼンする手法が述べられています。

従来の延長上を探していてもダメ

このように本書でいう「破壊的思考」とは、「破壊的」という言葉とは逆に、全く新しいマーケットを「創造する」ことを狙いとしたものです。
「創造」、つまり「クリエーティビティー」とは、顕在化している課題を解決することではなく、現時点ではうまくいっているように見えるものを壊すことによって可能性を見いだすことだと気づかされます。

僕は電通で未来創造グループという部署に所属し、ミッションのひとつとして「商品・サービス開発の共創マーケティング」に取り組んでいます。
これも同じく、企業がこれまで取り組んできて手法とは全く違った角度から、アイデアを生み出していくチャレンジです。本気でビジネスにイノベーションを起こし、未来を創ろうとするならば、従来の延長上を探していてもダメなわけですね。
これまでのやり方を破壊することから未来創造が始まるということを、あらためて学べた一冊でした。

【電通モダンコミュニケーションラボ】

 

プロフィール

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    京井 良彦
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター  プランニング・ディレクター

    1969年生まれ。大手銀行でのM&Aアドバイザーを経て、2001年電通入社。
    営業局でグローバルブランドや官公庁など多岐にわたるクライアントを担当し、現在はソーシャルメディアやデジタル領域を中心とする戦略プランニング、コミュニケーションデザイン、共創マーケティングを手掛ける。東京都市大非常勤講師。著書に『ロングエンゲージメント』(あさ出版)、『つなげる広告』(アスキー新書)などがある。

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