「そのひと言」の見つけ方 #06

自分の失敗文章を残しておく。

僕は書いたコピーをすべて残しています。データだけでなく、紙に書いたコピーもスキャニングしてPDFで残しておく。
たまに見返すと、5年前はこんなことを考えていたんだなとか、3年前はこの仕事でこういうコピーを書いていたんだなと、いまの自分の立ち位置や成長の度合いがわかります。これが視野を広げたり、自分の視点を増やしたりすることにつながるのです。

広告は、同じクライアントからの依頼はありますが、同じコピーの仕事は基本1回きりです。
「信じがたいかもしれないけれど、おなじコピーは、二度と拵えられないんです。時代と企業のオーダーメイドなものですからね。」と書いたのはコピーライターの巨匠、糸井重里さん。著名なコピーライター10人が選んだ『日本のコピーベスト500』(宣伝会議刊)の帯コピーです。つまりコピーの仕事は一期一会。それなのになぜ過去の仕事を顧みる必要があるのでしょうか。

自分の失敗文章を見返してみると、世に出なかった理由や、クリエーティブ・ディレクターに理解されなかった理由がわかります。さらに時代背景の確認や、いまだったらこのコピーをこういうふうにプレゼンできるとか、失敗の原因をあらためて洗い出すことができます。

将棋には感想戦というのがあって、対局が終わったあと、対戦者同士でもう一度最初から同じ将棋を指し、勝因(敗因)がどこにあったのかを双方で分析します。
この感想戦という行為を毎日の仕事でできれば人はものすごく成長する気がします。
失敗から人は学ぶ。だから、失敗をなかったことにするのではなく、自己の成長のためにあえて残すほうがよいと思うのです。

たとえばボツになった企画書や、上司に注意されたメールなど、何かで失敗したものを残しておいてください。そして数カ月に一度、見直す機会をつくって活用してください。失敗文章を見返すのは5分で終わること。短い時間で意外な発見があってビックリすると思います。
このテクニックは一般事務のようなルーティンワークでも使えます。たとえばうまくいかなかった業務を記録しておき、見直しをクセにしてみたらどうでしょうか。
古いやり方を改善したり、効率化を発見したりすることで、モチベーションのアップにもつながります。やはり仕事に対する働きかけがあるかないかで、充実度も違ってくるものですから。
何の仕事でも失敗がないなんてつまらない。
恐れずに常にチャレンジすれば、失敗は財産に転化すると僕は信じています。

失敗は財産。
絵/工藤章子(電通 第1CRプランニング局)

 

プロフィール

  • Yosukewatanabe photo
    渡邉 洋介
    株式会社電通 第4CRプランニング局

    コピーライター。
    2007年電通入社。おもな受賞歴に、宣伝会議賞シルバー、ACC CM Festival ブロンズ、文化放送ラジオCMコンテスト優秀賞、読売広告大賞協賛社賞、日経BP賞、英国D&AD賞 IN BOOK、ヤング・カンヌファイナリスト、ヤング・ロータスファイナリストなど。
    著書に『「そのひと言」の見つけ方』(実務教育出版)。

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