新明解「戦略PR」 #20

質問①「戦略PRやりたいんすけど、いつ声掛ければいいっすか?」「イマでしょ!(怒)」

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    井口 理
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 局長 チーフPRプランナー

どーもどーも、新明解「戦略PR」シーズン2、お楽しみいただけてますでしょうか? えっ? 新シーズンになってるの知らなかった? もー、いけずなんだからー。ってなことで、引き続き読者のみなさんからの質問に答えていきたいと思います。題して、「そこんとこ、いのっちに聞いてみよっ!」のお時間です。

さて、前回はPR業を営む方々から多かった「PR目線を育てるにはどーすりゃいいっすか?」にお答えしましたが、みなさん実践していただいてますかね。ま、簡単にできちゃうとこちらも商売あがったりなんで、苦労してもらいたいところなんですが、今回はクライアントさんからよくいただく質問に回答してみたいと思います。それは

「いやー、戦略PRとかやりたいんすけど、いつどういう感じでお願いすればいいのか分からないんですよねー」

というもの。思い立ったが吉日なんていいますが、ま、それはそれで置ておいて、実際のところをお話ししていきましょう。あ、そういや別の話ですが、最近なんか文章長くね? というクレームをいただいたので、今回から少しばかり端折っていきますね。決して手抜きではないので悪しからず。

「戦略PRをやりたいが、声がけのタイミングが分からない」という悩み

そもそもなぜ、このような悩みが出てくるのでしょうか。まず「戦略PR」っていうのは、広報よりも事業部や宣伝部の方々が広告以外でなにかしら効果的なものに取り組んでみたい、チャレンジしてみたいという中でオーダーが発生することが多いんです。すなわち、広告的なオリエンからプレゼン、実施に至るまでのプロセスが本流なわけで、PRの進め方を知らないケースも多々あります。そりゃいつ組み込めばいいのか分からなくなることもあるのかなと。

しかも「PR=パブリシティ」と理解してしまっていると「CMとか固まった後で少し落ち着いてから話してみようか」なんて思っちゃうんですね。いやー、遅い。それじゃ遅すぎるんです! 戦略的にPRやりたいんなら、いっちゃん最初からそのプロセスに巻き込んでください。PRを成功させるには、いかにプランニングの川上でPRパーソンを巻き込めるかが、ことさら重要になってきます。すなわち、これらの相談は「いっちゃん川上で、しかも関係者が一堂に会するようなワンテーブルで」、というのが私の回答なのです。

たとえば、製品やサービスにUSP(独自の強み)が見つからないといって、クリエーティブのおもしろさだけをファクトにPRしてください、なんてオーダーがあったりします。しかし広告的表現というのは演出も入るわけで、いわばプロモーション色で固められた内容となります。それでは客観性を欠いた、独りよがりなファクトに受け取られてしまいます。PR的にも扱いにくいのは自明の理。だったら事前にご相談いただくことで、もっとそこにPR的視点で盛り込めるコンテンツがあるんじゃないかと強く思ったりするわけです。

そもそもPRはファクトありき、と常に申し上げますが、これはPRが社会的ニュースを扱う既存のマスメディアを対象とした活動をしているから、ということもあります。しかし、信頼性ある内容でないとダメだよね、というだけでなく、拡散インフラであるSNS含むソーシャルメディア上での話題化にもこれはやっぱり必要な視点です。生活者が普段語るにも、何かしら言葉にしやすい、語る機会が数多く発生するようなコンテンツが含まれていてほしいですし、あるいは薄くても、生活者全般に広く共感を生み出すようなコンテンツが欲しいわけです。そういった目線で、話題となり得るコンテンツをさまざまなプロモーション施策の中に混ぜ込んでいくことができれば、その拡散性は大きく変わってくるはずです。

クリエーティブの中にもPR要素を盛り込もう!

たとえばCMにも、いろいろ語りたくなるような要素が盛り込まれているといいですよね。「あのド派手な役者さんは見たことないけど、いったい誰なの?」とか「あの映像監督は実は外国人らしい」「あの音楽は実は30年前に大ヒットした曲なのだ」とか、はたまた「あのロケ地は、どうも20代カップルが今一番行きたい場所らしいよ」「実はあの15秒CMは、同じキャストでドラマ化されるらしい」など。それによってCMを語るきっかけが生まれてくるわけです。あるいは製品的なUSPをPR目線で増幅していくことも可能かもしれません。少しコモディティ化したUSPを、どのように映像の中で見せたら分かりやすくなるのか、魅力的に見えるのか、また語りやすいのか、などもPR視点で考えられるでしょう。また、もっと大本に戻って、そのUSPをCM以外の施策で伝えた方が分りやすいんじゃないか、話題になるんじゃないか、なんてことも川上であれば議論できるはずです。

2014年のカンヌライオンズで各分野で受賞したVOLVOトラックの「Epic Spirits」や「Live Test Series」なんてまさにそう!細かい説明を重ねるということでもなく、きっちりとそのUSPを瞬間的に伝えることに成功しています。これもPR的に見れば「…ということらしいんだよね」とつい語りたくなる内容になっており、その後の口コミ拡散も期待できるわけです。「映像で見せるだけでなく、やっぱり体験しないとこの良さは分からないよね」ということなら体験イベントを実施し、それを動画で拡散、利用者のナマ声を通じてそのUSPを理解してもらうといった手もありますよね。

与えられたお題に対して、マーケティング担当やクリエーティブ、またPRパーソンが同時に情報共有し、ワンテーブルで議論することで、全体最適なアイデアが生まれてくるわけです。そして、ここで顔を合わせた各担当者が有機的に展開される一連の情報展開を想像・共有できれば、その後の進行もスムーズなはず。まずはプランニングの第一段階で、関係各所がワンテーブルで議論できることが理想と言えるのではないでしょうか。「川上」「ワンテーブル」というキーワード、ぜひオリエンの際に一度試してみてください。

今こそ戦略PRが生きる時代

上記に関連して、もうひとつ問題があります。もちろんキャンペーンを受注するわれわれが川上 かつワンテーブルで議論し、連携していくことは重要ですが、それにひも付くクライアント側の関係各所とも連携しほてしいのです。できればこのワンテーブル に一緒に座ってほしいなと。これによって、横の部署がいつ何をするのかが共有され、そこに連動した各部署の仕掛けというのも、さらに生きることになると思 うのです。タイミングひとつとっても、「あ、その日にそれやるんだったら、こっちのは翌日やるとシームレスだよね!」みたいな。逆に「その日にそれやるな ら、もう少しタイミング置いた方が重複しなくていいよね」なども。自然とそういった連携が取れるようになるんですね。そして、さらに横の部署の仕掛けを最 大化するためのアイデア出しなんかも始まったりして。

とはいえ大企業になればなるほど部署の壁は厚く、連携が難しいというのがこれまでの経 験から言えます。ですが、最近感じるのです。こういった全社をあげた連携の動きが徐々に始まっているなぁと。振り返ればすでに5~6年になりましょうか。 2009年に戦略PRという言葉が流布し、こぞって各企業がトライしましたが、成功を収めたのはわずかではないでしょうか。しかし、それは当時の企業のあ り方にも問題があったと思うのです。先の各部署の縦割りの弊害や、戦略PRといった未知の取り組みに対する理解不足、また予算獲得の難しさなど。しかし現 場の担当者は、皆戦略PRに関心を持ち、ぜひやってみたいという意欲を持っていました。その方々がこの5年あまりで会社の中でそれぞれの立場を確立し、今 まさに本気で取り組み始めたんだと思います。その当時、構想はありながらも実践に移していけなかった案件について、当時のご担当者から「再度チャレンジし てみたい」というオファーを、現在数多くいただいているのです。

まさに戦略PRに魅力を感じ、いま改めて万全の体制でこれに挑もうとしてい る段階なのだなと肌で感じます。戦略PRの始まりや終わりを議論する流れもありますが、私は戦略PRは流行りすたりのある手法ではなく、考え方だと思いま す。PRという広い概念から各種のコミュニケーションを俯瞰してみるという姿勢で臨めれば、新たな境地が開けるのではないかと。まさにこれからが新たなス テージの展開だと感じています。ぜひ一緒に、次のステージで活躍してみませんか! ワタシに連絡してくださーい。

プロフィール

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    井口 理
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 局長 チーフPRプランナー

    1990年株式会社電通PRセンター(現株式会社電通パブリックリレーションズ)入社。コミュニケーションデザインを手がけるチーフPRプランナー。
     
    企業のコーポレートコミュニケーションから、製品・サービスの戦略PR、動画コンテンツを活用したバイラル施策や自治体広報まで、幅広く手掛ける。最近では、熊本県の赤い特産物をアピールするため仕掛けた「くまモンほっぺ紛失事件」のPRプランを手掛け、世界的なPR業界紙「Holmes Report」が主催するアワードで「世界のPRプロジェクト50選」に選出された他、多数の口コミを起こしたキャンペーンとして、世界的な口コミアワードである「WOMMY AWARD2014」を日本で初めて受賞。
    その他、受賞歴に、Asia Pacific PR Award、日本PR協会「PRアワード グランプリ」、国際PR協会「ゴールデンワールドアワーズ」、SABRE AWARDS ASIA PACIFIC、PR WEEK アワード・アジア、Asia Pacific SABREアワード、Spikes Asia 2014、Global SABRE アワードなど。
    実務のみならず、大学やトレードショー、PR協会での講義による若手育成にも従事。「Cannes Lions 2012」「Spikes Asia 2012」PR部門、「SABRE AWARDS ASIA PACIFIC 2014」「PRWeek Awards Asia 2015」「ヤングカンヌPR部門日本代表選考」審査員。「New York Festivals パブリック&メディア・リレーションズ部門」Grand Jury。2013年6月に「戦略PRの本質~実践のための5つの視点~」を上梓。

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