「人を動かす」デジタルテクロノジーへ #05

消費者と共に創る
クラウドファンディングやユーザー共創型サービスが世の中を変えそうなワケ

前回はオンラインにおける「ローカル」の重要性と「コミュニティ」との対話から生まれる新しいコミュニケーションの形をお話ししました。今回は、サービスや品質をコミュニティと共に作り上げるということについて、少し考えてみたいと思います。

 

起案者の「想い」が支援を生むクラウドファンディング

クラウドファンディングとは何だろう?と思われた方も多いかもしれません。クラウドファンディングとは、crowd(群衆)+funding(資金調達)という二つの単語を組み合わせた造語で、インターネットを通じて不特定多数の人から出資を募って、誰でも資金調達ができるというサービスのことです。

米国ではkickstarterというサイトがポピュラーで、多くの商品がこのサービスを通じて世界に流通しています。日本でも多くのサービスが立ち上がり、たくさんのプロジェクトがクラウドファンディングを通じて形になっていきました。(もしかしたら、これを読んでいる方の中にも、クラウドファンディングを通じて出資をしたことのある方がいらっしゃるかもしれませんね)

クラウドファンディングとは、実現したいプロジェクトを起案者がクラウドファンディング事業者の運営するサービスに登録し、そのプロジェクトに賛同する「支援者」が、プロジェクト達成のあかつきに手にすることができる「リターン」の内容に応じた金額をクレジットカード決済で出資するというサービスです。ここで面白いのは、起案者はプロジェクトに必要な金額(目標金額)を自分で設定し、期日までに目標金額に達しない場合は支援者のクレジットカードが決済されず、支援金を得ることができないという点です。

ですので、起案者はソーシャルメディアを通じて支援を呼びかけます。この呼びかけがTwitterやFacebookなどで拡散し、想いに共感する人たちによって支援が集まってきます。そして期日が近づいてくるにつれ、プロジェクトを実現させたい!という想いから、起案者と支援者が一体となってプロジェクト内容を拡散させていきます。起案者と、その想いに共感する支援者が一体となってコミュニケーションを重ねるので、支援が確定しプロジェクトがスタートする頃には、起案者と支援者によるコミュニティが形成されています。多くのプロジェクトのリターンにも「結果報告パーティへのご招待」「作品公開レセプションへの参加権」などが用意されており、オンラインのつながりがリアルにつながる、ということまで設計されています。

 

「想い」が消費者と作り手をつなげる

クラウドファンディングで重要なのは、「想い」という要素です。これまでの商品作りやイベントの開催、組織の運営などは、まず「いかに収益を上げるか」という点が大切でした。投資対効果が見込めないと、出資を募り、プロジェクトを遂行することはできませんでした。しかしクラウドファンディングの場合、必要な出資が先に集まっているという状況を創り出します。ですので、重要なのは投資対効果ではなく「いかに共感される想いを持つか」という点です。

この商品で世の中を便利にしたい、こんな組織を作ってこんな人を助けたい、といった強い想いが求められるのです。この想いが強ければ限りなく個人的なニーズでも、オンラインでその情報をキャッチし共感した人が、同じ想いを持った人に対して支援を呼び掛けてくれます。事実、プロジェクトが実現するかどうかはSNS上での密なコミュニケーションが肝で、私個人で出資した数件のプロジェクトで無事実現したものは、例外なく起案者個人からSNS上でフォローいただき、そのプロジェクトへの強い想いと、実現したい夢に向かって取り組む姿勢の発信に心打たれたものでした。このように心打たれた人が、その熱意を拡散することで新たな支援が生まれていきます。

 

「想い」を伝えることから始まるユーザーとの共創

クラウドファンディングは「資金」を集めるという仕組みでしたが、「想い」を中心に据えたコミュニケーションは、お金だけではなくアイデアやアドバイスといった形の支援も生み出します。

ニフティでは以前から「男子スイーツ部」「酒コミュ」といった、インターネットユーザーとのコミュニケーションから、新商品開発や企業とユーザーのタイアップ企画を生み出してきました。特筆すべきは「想いの強い消費者」の意見は生産者にとって資産になるということです。

森永乳業×男子スイーツ部「理想のプリン」 

出典:http://sweets.nifty.com/cs/catalog/sweets_report/genre/category_rpt-category-31/1.htm

 

宝酒造×酒コミュ女子酒部「生姜梅酒」

出典:http://sake-commu.cocolog-nifty.com/main/ume.html

生産者が考えつかないアイデアや、思いもよらない改善点、実は評価されているポイントなど、生産者の手元のデータからは見えてこない消費者の声を生かした商品づくりが可能になること、さらには商品づくりに参加した消費者が「あれはオレが作ったんだ!」という想いから、商品の最初のファンになり、自ら口コミの先頭に立つ広告塔となってくれることは、大変な価値ある資産なのです。

 

消費者と生産者がつながる社会へ

これまでの「消費者」と「生産者」という立場は、これから少し変わっていくかもしれません。これまで消費者と生産者のつながりは、商品やサービスそのものを通じてでしかありませんでしたが、今はソーシャルメディアによって企業が直接消費者とつながる時代です。先に述べたとおり「消費者」はただ消費を行うだけでなく、自らの想いを一緒に実現する事業者との出会いを求めています。そのような消費者と向き合う生産者は「売れるから作る」だけではなく、生産する商品やサービスを通じてこれを実現したい!という消費者の共感を呼ぶ「想い」が必要になってきます。

今後は、このような消費者と生産者が直接つながる接点が増えてくると思います。電通もニフティと共に「うまいもんプロデューサー」という、地方の生産者と消費者をつなげるサービスをローンチしました。

うまいもんプロデューサー https://umaimon-p.nifty.com/

このサービスでは、特に「食」をテーマに地方の生産者さんと消費者のつながり創りを目指しています。サイトを見ればお分かりいただけると思いますが、このサービスには生産者の「顔」が見え、「想い」が詰まっています。どんな人が作っているのか、なぜその商品にこだわっているのかといったドラマが垣間見えることで、これまでとは違った商品との出会いが体験できます。

このように、オンラインのコミュニケーションは、消費者、生産者といった関係性まで変化させてきました。「ホームページ」のつながりだけだったインターネットは人と人のつながりを生み、よりよい社会を創るツールにまでなってきたと言えるのではないでしょうか。

このコラムではインターネットの誕生からweb2.0、ソーシャルメディアを通じてオンラインコミュニケーションの在り方を追ってきました。次回はその総括を行い、オンラインを介したこれからのコミュニケーションの進んで行く道について、思いを巡らせてみようと思います。このコラムは次回で最終回となります。ぜひ最後までお付き合い下さい。

 

 

 

プロフィール

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    佐藤 巡
    株式会社電通

    2009年電通入社。コミュニケーションプランナー。リスティング広告など、パフォーマンスメディアの運用やデジタルキャンペーンの企画立案を経て、ローカルテレビ局担当として番組企画や地方におけるマーケティングを経験。現在はソーシャルメディアを中心としたオンラインとオフラインを横断する企業のマーケティングや、ソーシャルメディアにおけるユーザーと企業のコミュニケーションを担当。

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