コンテンツマーケティングの現場から #02

私たちがコンテンツマーケティングを
選ぶ理由

今回から3回にわたり、ネクステッジ電通代表取締役社長の杉浦友彦さんと、コンテンツマーケティングに行き着いた経緯、実際に進めていく上での課題、2015年の見通しなどを語っていきます。電通iPR局とネクステッジ電通はコンテンツマーケティングを実践するためのチームを組み、活動を開始しています。

 

郡司:まず、お互いにどういう経緯で「コンテンツマーケティング」に行き着いたかというあたりから話を始めましょうか。

杉浦:ネクステッジ電通では、Eコマースなどの分野で求められる「パフォーマンス・マーケティング」に注力してきました。ここではWebサイト上の売り上げや顧客獲得、費用対効果の最大化が常に求められます。従来は、運用型広告のチューニングを中心にしていたんですが、ここ数年でデジタルの広告手法が一般化し、競合各社もネット広告に積極的に取り組み始めています。そうすると、ユーザーも慣れてきて、反応が鈍くなってきたり、競合との差別化が難しくなってしまう。そうした状況を、どう抜け出すか。また競合よりも成果を出すためにはどうするか、といったことを考えている中で、コンテンツマーケティングということを真剣に考え始めました。

郡司:なるほど。

杉浦:もうひとつ側面があって、それはウェブマーケティングにおいて売り上げをどうやって増やそうかと考えるとき、ブランドが成熟していくにつれ、広告経由の集客比率は徐々に低くなり、ブランド指名やSEO経由等などのオーガニック流入のベースが太くなってくるというのが一般的な成功パターンです。広告集客の競争が激しくなると、よりポテンシャルの大きいオーガニック流入部分を何とか大きくできないかと考えるようになるんです。ただ、このオーガニックな流入を増やすのはそもそも困難ですし、SEOの環境も常に変化する。そこで長期的にユーザーと良い関係を築いて絆をつくったり、絆を深めていくことが、結果的にはオーガニックの流入を多くする、つまり興味を持ってもらえるコンテンツを発信することがオーガニックな流入を増やし、持続的な集客の土台になっていくことが分かってきたんです。

郡司:結局は、生活者から求められるものを提供すれば喜ばれるという本質的な話ですよね。

杉浦:われわれはアウトバウンドとインバウンドと言うんですが、インバウンドでどう選んでもらうかが、差別化そして成果の改善を考える際により重要になっています。ユーザーに能動的に来てもらったり、指名されるためには、地道に人々のニーズに応えていく取り組みが必要で、それがウェブの世界だったらコンテンツというところに集約される。ここを起点に、どう広告以外の流れをつくり、ユーザーの課題を解決したりとか、気持ちを変えていくか。その中で、短期的には購買につなげることも考えるし、いつか欲しくなったときに選ばれるようになることなどを考えていかないと、マーケティングの課題解決にならない。こういう視点でコンテンツマーケティングに取り組んでいます。

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郡司:話を整理すると、従来の運用型広告の施策は続けながらも、それに加えてコンテンツを起点にした手法も取り入れて、生活者のニーズに応えたり、気持ちの変化を促しながら温かい関係を築いていくということですね。
私は、杉浦さんのようなウェブマーケティングとは対極のところでクリエーティブの仕事をしてきました。従来の広告は、クリエーティブをつくったらそれを置くメディアの枠がユーザーに届けるところまでをやってくれたので、企画制作が中心でした。けれど、これだけソーシャルメディアやキュレーションメディアが発達してきた中で、コンテンツを作るときは、どうやって届けるか、ということも意識しないといけなくなり、その接触の仕方もクリエーティブの一部と考え直すようになりました。

杉浦:本来はつくったものを、ちゃんと届けようと思ったら、そこまで考えたくなりますからね。

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郡司:さらに、スマートフォンやパソコンの接触時間が増えたことなどが象徴的ですが、生活者のメディアへの接し方がバラバラになっています。しかも、実はターゲットになる人たちがどこにいるかがよく分からない、なんてことも、私のまわりでは起き始めているのですが、そうなると、ますます届け方を考えることが大事になってくる。このソーシャルメディアを活用してコミュニケーションしたり、オウンドメディアなどデジタルの場を絡めてブランドのファンを増やしていく領域は、誰もが手探りなんです。そうした中で、私のいるiPR局では2年ほど前に「コンテンツマーケティング」というキーワードがアメリカで注目されているということを聞きつけました。ここに、私たちの未来のヒントがあった。当時は、まだ日本語の情報が皆無だったので、まずはそこから着手しようということでiPR局と電通PR共同で2冊の本(『~編集者のように考えよう~ コンテンツマーケティング27の極意』レベッカ・リーブ著、翔泳社、『エピック・コンテンツマーケティング 顧客を呼び込む最強コンテンツの教科書』ジョー・ピュリッジ著、日本経済新聞出版社)を訳したのですが、この翻訳プロジェクトは別々のチームでやったので、合計十数人のメンバーが関わって、いろんなことを学び、それを具体的な現場の作業に生かしているというのが今の状況ですね。

杉浦:とはいえ、ウェブ上に良いコンテンツをつくってユーザーに届けてマーケティングに活用する手法は、昔からやってきたことで当たり前の話なんですよね。僕も15年以上デジタルマーケティングの仕事をしていますが、昔からコンテンツを創り、クライアントのウェブサイトに載せるなんて普通にやってきた。ただ、メディアを取り巻く環境要因が変わったこと、スマートフォンを中心とした生活スタイルへの変化などで、ウェブサイトを通じて企業と消費者がより出会いやすくなりました。またウェブサイトに良いものがあれば、消費者から見つけてもらいやすくなっている。

郡司:その「消費者が見つけられるように送り手側がそっと準備しておく」、という部分は外してはいけない視点ですよね。

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杉浦:今までのやり方は、いいコンテンツをつくり、それを広告で広めていくというものが中心だった気がします。でも、最近は、そう簡単に拡散しないなんてことも起こっている。これは情報流通が根本から変わったから当たり前のことです。ただ視点を変えると、企業が既存のマスメディアと同じような役割を持つこともできるし、極端なことを言えば、個人が1人でマスメディアのような存在になることも不可能でなくなり、大きなチャンスが訪れています。私たちが提案しているのは、デジタルという手法のフレキシビリティーが上がったので有効に使おう、ということなんです。
たとえば、グローバルに事業を展開しているITコンサルティング企業であれば、経営に関するTipsをブログ形式で発信し、中には著名人を招いて対談したり、経営手法を探るコンテンツなどを定期的に発信し続けているんですよね。そういうところで、自社商品やサービスにかかわる情報だけでなく、商品やサービスのニーズを喚起するような読み物や閲覧者からのコメントなどの情報発信に取り組んでいると、お客さんとのコミュニケーションが広がって、結果的に信頼関係が築かれ、ビジネスにつながっていく。オウンドメディアやソーシャルメディアを使うと、そういうことができるという視点があったのだと思います。

郡司:コンテンツをつくるときに、ユーザー調査をしますが、その対象がどんなインサイトを持っているかというのが一番核なのは言うまでもありません。けれど、それを知ろうとしても今まではグループインタビューやインターネット調査など、「調査」という場を設ける方法が最も現実的でした。その中からインサイトを探していたんです。
でも、人間って、調査の場に来たときに必ずしも本音を言うとは限らないし、そこで言ったとおりに行動せず気が変わることもある。また言葉では表しきれない部分があるなど、従来の方法には限界もあったんです。けれど、ソーシャルメディアなどが浸透したことによって、そうした壁が越えられるようになってきたんです。多くのやり取りが本音ベースなので、コンテンツをつくる側もインサイトに寄り添えるようになってきたし、生活者との接点が選べるようになっている。ただし、本音なので、厳しい現実と向き合わなければいけないという面もありますが。

杉浦:本当に、ごまかしがきかなくなっている環境だと思うんですね。

郡司:そうなんです。演出でごまかせなくなっている。それが本当に厳しくて、「どう演出して見せるか?」というHow toではなく、「何を伝えるか?」のWhatが求められる。その情報そのものにどれだけ価値があるかが問われていく時代に突入しています。
私はもともとコピーライターだったので、Whatでコミュニケーションを考えることが中心だったのですが、広告として求められることと一生活者として感じていることが違うときもあって、実はいつもそこが気持ち悪かったんです、ずっと。いま生活者にとって価値あるWhatかどうかが再注目されるようになったことは、生活者はもちろん、企業活動においても結果的にはよい方向に向かうということではないかと思います。

杉浦:おっしゃるとおりです。ここは頭の切り替えをする必要がある。パラダイムが変わり、消費者が主体的に情報を選ぶようになったという意味で、パワーバランスは変わってしまったのです。そうした中で、何となくのイメージだけではいけないし、ファクトはすぐわかってしまうし、比較対象もいっぱいある。本当の中身の部分、商品でいえば実体的な価値、ブランドでいえばユーザーとの関係値のところが比重として重要になっています。

郡司:でも、これはチャンスなので、どう活かすかが現場としては大切ですよね。

杉浦:一方で、デジタルのマーケティングってどんどんコントロールが可能になっていますからね。ユーザーが主体的な行動をし、評価も厳しくなっていますが、これと裏腹でマーケターからすると、本音を引き出しやすい環境になっている。
例えば、流行りの仕組みでいうと、DMP(Data Management Platform)を利用して将来お客さんになってくれそうな人を見つけたら、その見込み客をゆるく囲い込み、そのデータベースを、オウンドメディア側で持つこともできる。そして、その方々が反応してくれそうなコンテンツをどんな風に届けていけば喜ばれるか、さらにはこんな広告を出そうかといったシナリオを設計し、実績につなげていく「オーディエンスターゲティング」「リードナーチャリング」みたいなこともできるようになってきた。今までオウンドメディアって、ばくっとサイトを構えて待ち受けて、その後、ページビューやユニークユーザーでどうかという感じでやって来ましたが、どういう「人」が来てくれていて、その人たちと良い関係をどうやって築いていくか、そして最後は購入まで導いていくようなコントロールがしやすくなってきたと言えるでしょう。

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ただ、それを実行するには、生活者に喜んでもらえるような実体が必要で、「何を」というところがないと、態度変容にまで到達しない。逆に、そういうものがあれば、ソーシャルメディアやSEO等を通じてどんどん広がるという時代になっていることを実感しますね。


【Gunji's eye】

今回の杉浦さんとやり取りした内容のポイントは、

  • コンテンツは、PRなど届け方も含めて考えなければいけない
  • ソーシャルの時代は、ごまかしがきかない。生活者が、主体的に情報を選ぶようになり、(情報の)送り手と受け手のパワーバランスが変わってしまった
 

ということでしょう。

ソーシャル時代はごまかしがきかないので、「何となくのイメージ」では届かないし、ファクトはすぐに確認が出来てしまううえ、比較対象となる情報もあふれている。商品でいえば実体価値、ブランドでいえばユーザーとの関係値が重要になっている、というところを認識することが最も大事なところと思います。
またコンテンツも、届けるメディアが決まると、その流通方法は自ずと決まりました。が、生活者が主導権を持って情報を集めるようになった現在では、届け方を意識しないと接してもらえないという事態が起こります。この点は、見方を変えると、面白いこと、役に立つことなら、情報を見つけてもらいやすくなっているともいえます。よって生活者のことをもっと知り、理解することは、とても大切になっています。
そのためには、ソーシャル上にあふれる生の声と向き合い、それを精査していくことが必要です。ごまかしが効かない世界なので、本音のアプローチが求められます。

 

 
 

ネクステッジ電通
「成果に立脚したPDCAの実行による顧客の事業成長への貢献」をテーマに、デジタルマーケティングの支援事業を行なう。2013年5月設立の電通グループ会社。

iPR局
電通で、ソーシャルメディア、オウンドメディアを活用して、生活者と企業が24時間365日つながり続けている中でのマーケティングコミュニケーションのプランニング・実施・運用を担当する部門。

パフォーマンスマーケティング
「パフォーマンス」には英語で業績の意味もあり、最終成果を上げるためにPDCAサイクル(Plan:計画→Do:実行→Check:評価→Act:改善の4段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善する手法)を回しながら必要な施策を行い続けるマーケティング。

運用型広告
検索エンジンの結果と連動して表示されるリスティング広告、バナー広告などを指す。杉浦氏がいう「運用型広告のチューニング」では、ターゲティングの設計 や、入札による広告掲載のコントロール、バナー広告のクリエーティブ改善、ランディングページ(広告を見たユーザーを誘導するウェブページ)で何を語るか など、さまざまな試行錯誤を行う。

オーガニック
ここでは、SEO(Search Engine Optimization、検索エンジン最適化)によって、自社の情報を検索エンジンの検索結果の上位に表示させたり、スマートフォンやパソコンなどの ブックマークからアクセスをしてもらうなど、人々の自発的な行動による流入を指す。最近はGoogleのアルゴリズム変更などに伴い、テクニカルなSEO 対策が逆にリスクとなるケースがある。そのため良質なコンテンツを起点にしてマーケティングを行うコンテンツマーケティングが求められているという側面も ある。

アウトバウンドとインバウンド
従来の広告メディアを活用したマーケティングでは、情報を届けたり、発信することを中心にしていた。これに対してSEOやソーシャルメディアのマーケティ ングでは、ユーザーが自分で情報を見つけたり、自分が発信して仲間などとコミュニケーションする中で関係を築いていく。前者をアウトバウンドマーケティン グ、後者をインバウンドマーケティングとも呼ぶ。アウトバウンドマーケティングは対象に働きかけを行うのに対し、インバウンドマーケティングでは内的な行 動を促すことに大きな違いがある。

 

プロフィール

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    杉浦 友彦
    株式会社電通デジタル 執行役員

    1998年電通入社。2009年コロンビア大ビジネススクール通信情報研究所(CITI)客員研究員。電通フューズ、電通イーマーケティングワンなどの立ち上げに参画し、ウェブコンサルティング、オンライン広告のROIマネジメント業務を担当。主に金融・保険、Eコマース企業の顧客獲得支援や、IT、自動車業界向けのeマーケティング戦略立案・PDCA運用業務に携わる。併せて、マス広告×ウェブ統合分析のメソッド開発や、オンライン広告プランニング最適化、アトリビューション分析など、独自のデジタルマーケティング最適化ツール開発を主導。13年ネクステッジ電通代表取締役社長。

  • Gunji akiko pr
    郡司 晶子
    株式会社電通デジタル 執行役員

    1992年電通入社。クリエーティブ局で、広告・キャンペーンの企画作業に従事した後、コンテンツマーケティングの領域に携わる。現在は、日用品・ファッション・自動車・レジャー・住宅などの業種で、ブランドエンゲージメント、CRM・ロイヤルティ向上の支援、コンテンツを起点とした顧客獲得支援などを目的に、コンテンツ戦略・企画・制作・運用のディレクションを行っている。
    2014年「コンテンツマーケティング27の極意」(翔泳社)、「エピック・コンテンツマーケティング」(日本経済新聞出版社)の2冊を共訳。講演歴は、2013年、2014年のWOMマーケティングサミット、Outbrainパブリッシャーズセミナー、Web&モバイルマーケティングExpo2014秋、2015 ad tech TOKYO internasionalなど。

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