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電通スマプラNo.13

スマートフォン×ファッションで住みたい未来をつくる
(VASILY×電通スマプラ)

2015/03/12

電通スマプラの浅井康治です。スマートフォンがあらゆる世代に普及した昨今、誰もがいつでもどこでも情報にアクセスできるようになりました。特にファッションに関する情報はトレンドに敏感な若年女性を中心に、よくアクセスする情報として注目されていると思います。

スマートフォンのますますの普及によって、ファッションに関心の高い若者やファッション領域に関わる企業はどう変化していくのか。そして日本のファッション文化はどのようなものになっていくのか。

今回、電通スマプラではファッションコーディネートアプリ「iQON」を運営するVASILYの金山裕樹さんに様々な角度からお話をうかがいました。

金山氏と浅井氏

インターネットのチカラで“住みたい未来”をつくる

 

浅井:なぜファッション業界でサービスを提供しようと思ったのですか。

金山:そもそも私たちはファッション業界にいるとは思っていないんです。「iQON」は女性がオシャレをしたくなる瞬間を創発するアプリではありますが、ベースはインターネット業界にあると思っています。

浅井:そうなんですね。ファッション×スマートフォンの組み合わせを考えたきっかけはなんですか

金山:学生の頃から、インターネットと何かをかけ合わせるとうまくいくんじゃないか、と思っていたのですが、ファッションコンテンツとインターネットの組み合わせってあまりない。それを「マズイな」と思ったんです。
なぜならインターネットに費やす時間が今後ますます増えていく中で、女性がファッションコンテンツに触れる時間がなくなっていくと、これからの女性はオシャ レじゃなくなるんじゃないかと。そういう未来に住みたくない!と思ったので、自分で女性がオシャレを楽しむ未来をつくろうと思ったのがファッション領域に 注目したきっかけです。女性がもっとオシャレを楽しめる未来が“僕の住みたい未来”だと思ったんです。映画「ターミネーター」の主人公みたいな気分ですね (笑)。

浅井:住みたい未来をつくるために女性ファッションとインターネットの掛け算に注目されたわけですね。

金山:前 提として、僕はこれまで誰もやったことないビジネスをやるのがベンチャー、スタートアップと呼ばれている企業、一方でこれまでやったことあることを小さく 始めるのが中小企業、スモールビジネスと考えています。創業時からVASILYはベンチャーでありたい、と思っていますので、自分が一番つくりたい未来、 女性がオシャレを楽しめる未来をつくっていきたいと考えました。

浅井:女性がオシャレを楽しめる未来、僕も賛成です!

 

スマートフォンは人類史上もっとも人に近いメディア

浅井:金山さんはスマートフォンをどんな存在ととらえていますか。

金山氏

金山:スマートフォンは人類史上最も身体との距離を縮めた デバイスではないでしょうか。携帯性の高さと身体との物理的な近さから私たちの生活に大きな影響を与えていると思います。特に重要なのはスマートフォンに よって情報の受発信コストがさらに低下したことだと思います。インターネットがもたらしたイノベーションは基本的に情報受発信コストの低下だったわけですが、スマートフォンについては、お金の面だけでなく時間や手間などの心理的なコストも圧倒的に下げたと思います。たとえばフィーチャーフォン時代にもアプリやブラウザーはあったわけですが、フィーチャーフォンは携帯を開いて、メニューボタン押して、アプリ一覧を見て、アプリ選択して…とけっこうな手間が必要でした。一方スマートフォンは画面ロック解除してホーム画面にある好きなアプリをタップするだけで終わります。さらに常時の高速インターネット接続と情報をスムーズにやりとりできるSNSが登場して発信も気軽にできるようになりました。100年前には考えられなかったですよね。

浅井:確かにそうですね。電通スマプラとしてもスマートフォンの普及によってあらゆる世代で情報大爆発が起きていると考えています。

金山:情報受発信コストの低下によって、世の中の情報量は爆発的に増えました。今、人は情報に対して「lean back」、ゆったりとした姿勢をとって“情報漬け”になっていると思います。20世紀は「lean forward」、前のめりの姿勢で自分から情報を取りに行く時代でしたが、スマートフォンの普及で情報に対してlean backになったと思います。21世紀は無目的にインターネットに接してもSNS上のタイムラインやフィードと言われる場所に延々と無限にコンテンツが流れてくるのでそれを眺めているだけでも満足できてしまいますし。

浅井:ではスマートフォンはファッション業界にどんな影響を与えているでしょうか。もっと多くの人にファッションに興味を持ってもらうきっかけになるといいなと僕は思っていますが。

金山:ファッション業界にとって、スマートフォンやインターネットは良いものだという認識を広めていかないと、と思っています。ファッション業界はテクノロジーを取り入れる初動がうまくいかなかったと思います。そのため、インターネットを使ってイノベーティブなことをしている人が他の産業に比べて少ないと思っています。スマートフォンやインターネットは電気や水道のようなインフラになっていきますから、これを取り入れないと産業としてなくなってしまうかもしれません。

金山氏と浅井氏

リアル店舗や雑誌はどうなっていくのか?

 

浅井:スマートフォンの普及によるファッション業界のインターネット化によって、今までのファッション文化をつくってきたリアル店舗や雑誌はどうなっていくと思いますか。

金山:店舗や雑誌にとってインターネット化は大チャンスだと思います。例えば雑誌。出版社が紙の上で配信している情報、コンテンツには今も変わらず価値があ ると思います。むしろインターネットを通じて玉石混交の大量の情報が流れてくる中で、プロの編集者が考えた研ぎ澄まされた情報は貴重なものです。 VASILYでもその情報コンテンツを活用していきたいと思っていて、まずは講談社さんと資本業務提携に合意しました。

浅井:電通スマプラとしても既存の優良コンテンツのスマホ化について、何かお力になれるようなことができればと思っています。ではリアル店舗についてはどうでしょうか。

金山:店舗にとっても大チャンスだと思います。インターネットでの情報発信を通じた集 客ができることは10年に1度のチャンスですよ(笑)。「iQON」ユーザーの多くがアプリで情報を見て店舗で服を買っているというデータも出ているので、「iQON」としても店舗の方々と一緒に何かやっていきたいと思っています。

浅井:私も頻繁に店舗を見に行くのですが、その前にインターネットで情報収集してから行くことが多いですし、店員さんからも、Instagramなどの写真を出して「これ探してます」というお客さまも多いと聞きます。 そうすると今後リアル店舗を持たないブランドというものも考えられるかと思いますが、そのあたりどうお考えですか。

金山:バーチャルブランドの形成は難易度が高いとは思います。ブランド形成に必要なのは受け取る情報量だと考えています。1メガとか3ギガとかいった“情報容量”ですね。私たちが店舗に行って感じる情報、たとえば匂い、温度、明るさ、目に飛び込んでくるディスプレーや商品、店員さんの動きや表情、そういったものを全てデジタル化できるとすればものすごい容量になる。そういった五感で感じる全ての情報がブランドからのメッセージであり、それよりブランドに対しての愛着やイメージが形成されていくと考えています。5インチ程度のスマホの画面から受ける情報とは圧倒的に量が違います。それゆえバーチャルのコミュニケーションだけでブランドに対する愛着を持ってもらうのは難易度が高い、と今は考えています。

浅井:店舗に行って五感で感じることは強烈なブランド体験ですね。特にブランドが持っている空気感や雰囲気はファッションブランドを好きになる大きな要因だと私も思います。ではスマートフォンの登場によってファッションブランドは今後どうあるべきなんでしょうか。

金山:オンライン上で情報発信していないブランドはオンライン上では存在していないに等しいと思いますので、オンライン上での可処分時間がますます増えていくこれから、オンラインでの情報発信は必須だと考えています。あとはユーザーさんの取捨選択できる範囲が広がっているので、ただ良いモノをつくっているだけではダメだと思います。人に何か伝えたくなったり、自分の表現の一部となるストーリー性のあるブランドが求められると思っています。

浅井:従来はスペックや歴史といったうんちくのようなものがストーリーでしたが、スマートフォン時代のこれからは自分のライフスタイルに共鳴することが求められているのかもしれないですね。

 

スマートフォン世代は「マス」ではない。

浅井:話は変わりますが、金山さんはスマートフォン世代の10代や20代をどういう存在ととらえていますか。

金山氏

金山:自分が 10代の頃は情報を調べる手段も限られていたので、共通の話題が生まれやすかったと思います。「あの雑誌であの人が着てたアレ」みたいな(笑)。今は先ほ ど申し上げたように情報が爆発的に増えていて、それゆえ分散化し、みんな注目しているアイコニックなコンテンツや情報源が減ってきていると思います。あっ たとしても僕が10代の時のような大きなコミュニティー形成には至っていないと思います。それゆえファッション分野のコミュニティーは細分化されていく方向にあり、以前に比べて捉えにくい存在になってきていると思います。彼ら彼女たちをいわゆる「マス」という考え方を持って何か仕掛けたりはあまりないですね。「iQON」も一人一人へのサービスカスタマイズを重視しています。

浅井:そうするとターゲットをいくつか規定して順番に取り込んでいくことがサービス、特にアプリの浸透のためには必要になってきますね。そのあたりどうお考えでしょうか。

金山:「iQON」でターゲットだと考えたのは、ファッションセンスはとてもあるのに外に向けてそうした情報を発信していない、でも発信してみたいと思っている人たちです。日本人はファッションセンスが高いのに情報発信に対してシャイな人が多いのではないでしょうか。スマートフォン化による情報の受発信コストの減少によって、誰もが情報発信できるようになったことで、そういう人たちを後押ししたいと思ったんです。 むかしであれば「赤文字系」とか「裏原系」とか、ファッションの嗜好性でターゲットを絞りこんだと思うのですが、それだと今はボリュームが小さくなりすぎてビジネスを成り立たせるのに十分ではないと考えました。それにインターネットサービスなので物理的な制限はありませんし、どんなに多種多様なジャンルがあってもコストはほぼ一定です。TwitterやFacebookが特定の嗜好性のユーザーのためのサービスではないように、iQONもまたファッションというジャンルに限っていますが、SNSという点で特定のジャンルだけに偏ったユーザーをターゲットとはしていません。嗜好性のマッチングはテクノロジーによって成り立たたせて、多種多様な嗜好性を包括できたらなと思っています。

浅井:最近表参道や原宿に行って周囲を見渡した時に、オシャレに関心の高い若者の数が数年前に比べて増えたと感じます。オシャレに関心はあるけど表現できていなかった若者たちが、スマートフォンの普及によって世の中に自分のことを見てほしいと思うようになったからかもしれないですね。金山社長は「iQON」を通じてスマートフォン世代の若者にどんな影響を与えていきたいですか。

金山:若者が「オシャレしたくなる」瞬間をもっと提供していきたいと思っています。オシャレすればどこかに出かけたくなったり、コミュニケーションのきっかけになったり、自分に良い影響があると思いますし、そういう人たちの新しい出会いやアイデアの発想につながっていくとうれしいです。

 

生活者が求める普遍的な価値は「便利さ」

 

浅井:日本のファッション文化を高めるために、これからファッション×スマートフォンの組み合わせのサービスやアプリがもっともっと増えてほしいと私は思っています。ファッション関連のインターネットサービスやアプリは今後どう展開されていくのでしょうか。

金山:爆発的には数が増えないのではないかと思います。理由の1つは技術的な難しさ。インターネットはテキスト中心の文化からはじまっているものですが、ファッションは画像中心の文化です。画像をインターネット上で適切に取り扱うことができる、たとえばコンピュータビジョンに強みがあるような会社がファッションのサービスでブレークスルーしたりするかもしれません。

浅井:その中で「iQON」を今後どう展開していく予定ですか。

金山:絶対的なものとしては技術の会社であることを念頭に、技術的に革新的な領域にトライを続けていきたいと思います。しかしそれだけではなかなか難しいので(笑)、直近の取り組みとしては出版社さんとの協業を進めていきたいと思っています。それによってよりオシャレしたくなるような質の高いコンテンツをインターネット上に増やしていきたいと考えています。そしてもちろん中長期的にはグローバルで勝負してきたいです。

浅井:アプリがオシャレに目覚めるきっかけになることは大事ですよね。そしてその人のオシャレのインフラサービスになれるともっといいのではないかと思います。スマートフォンアプリを長く利用してもらうためには何が必要なんでしょうか。

金山:「便利さ」だと思います。便利なものは使い続けますよね。楽しさなどはライフステージやメンタルによって捉え方は変わると思います。ファッションにおける「便利さ」は難しいことでもありますが、自分の想像を超えてくるような新しい商品との出合いという形で便利さが提供できればと思います。インターネットで自分で検索しても出合えない商品との出合いを提供していきたいと思っています。

浅井:最後に、金山さんは世の中に何を提供していきたいと思っているか教えてください。

金山:人類の進化のスピードを高めるような貢献をしていきたいです。その最初のステップとしてインターネット×ファッションを選びました。インターネットのチカラで人類の進化に貢献しながら、自分の住みたい未来を創ることができる時代が今なんだと思っています。

浅井:ありがとうございました!

 

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◎「電通スマプラ」とは?
スマートフォンを中心としたスマートデバイス(パソコン、タブレットなど)上のビジネスの立ち上げ、成長・拡大に貢献するプランニング・ユニットです。
チーム内には、スマートフォンのゲームやアプリなどのマーケティング・コミュニケーションの実績が豊富な戦略プランナー、コミュニケーションプランナー、コンサルタント、コピーライター、プロデューサーなど、多種多様な人材をそろえています。また、一人一人が何かしらのオタクであるため、課題への深堀りはもちろん持ち前の個性と人間力でクライアントに向き合うことをモットーに、マーケティング活動を支援していきます。