新規事業を成功させる秘訣とは #01

Airレジの構想と誕生秘話を探る!

リクルートライフスタイル・佐々木康太朗氏インタビュー(前編)

  • Sasaki profile
    佐々木 康太朗
    株式会社リクルートライフスタイル
  •            r
    大崎 孝太郎
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター事業開発室 スーパーバイザー

新規事業を立ち上げ、事業化し、成功させるためには何が必要なのでしょうか。
本連載では、成功事例のキーマンをお迎えし、その秘訣をインタビューで聞き出していきます。
第1回と第2回は、無料で簡単に使えるPOSレジアプリ※「Airレジ」立ち上げの中心人物であるリクルートライフスタイルの佐々木康太朗氏に、電通の大崎孝太郎氏が‟Airレジの構想と誕生”について聞きました。

※POSレジとは、POS(販売時点情報管理)機能を備えたレジ

 

 

Airレジの特長とユーザーターゲット

大崎:最初に「Airレジ」のサービス概要をご紹介ください。

佐々木:Airレジは、「無料で簡単に使えるPOSレジアプリ」です。店舗業務にどれだけフィットさせるかが重要なので、画面数を少なくシンプルにして、ボタン配置などのUX※を徹底的に磨くように開発し続けています。2014年11月末で10万アカウントを超え、2015年1月には英語版もリリースし、134の国と地域に配信しています。

主な機能としては、普通の会計レジ機能に加え、どんなお客さまが何をどれだけ買ったかを把握できる売上管理機能や顧客管理機能、飲食店向けの空席管理機能や予約管理機能、小売店向けのバーコードリーダーを使った在庫管理機能などを提供しています。今後もレジに関連する業務を機能に取り込んでいこうと考えています。また、クラウドで情報管理でき、いつでもどこでも確認できることも大きな反響を得ています。スモールビジネスでは、オーナーと現場の店長が異なるケースが多いのですが、経営者がどこにいても、パソコンやスマートフォンなどで売上情報や空席情報などを確認できて、店舗をマネージメントできることは大きなメリットになります。

※UX(ユーザーエクスペリエンス)とは、ユーザーが製品やサービスを通じて得られる体験のこと

 

大崎:レジ機能のメリットもさることながら、それを通じて業務全体をワンストップで確認できたり、適切な指示ができるというところがサービスの本質のようですね。

しかし、既に多くの店舗にレジは設置されていると思うのですが、既存レジからのスイッチを促すのは難しくありませんでしたか?

佐々木:レジは、数万円から数百万円までさまざまなものがありますが、スモールビジネスのお客さまにとっては高価なので、実はレジを導入していない店舗も多いのです。この状況が分かったことで、Airレジを無料で提供すれば普及させられると考えました。また、紙で管理されている情報をデジタル化することで、情報の有用性を高めることもAirレジの目的の一つです。以前、当社の「ホットペッパービューティー」に掲載いただいているお客様の業務支援として、美容室・エステなどの予約管理システム「サロンボード」を企画しましたが、その際に紙の情報をデジタル化することで、業務負荷が下がり集客支援が実現できました。その経験があったので、無料のレジで紙情報をデジタル化できれば導入が進むと考えました。

 

プロジェクト開始の2年前からあったレジの構想

大崎:なるほど。次に、最も気になっている事業立ち上げについて。ホットペッパーなどの既存事業があるなか、新規事業を起案し、サービスローンチするまでには、相当なご苦労があったことは容易に想像できます。事業立ち上げのきっかけや、乗り越えたハードルなど、ぜひ伺わせてください。

佐々木:Airレジのプロジェクトは、2013年4月に5~6人でスタートさせています。サービスのローンチが10月。「とりあえずやってみる」という考え方で進めたのは、リクルートでは珍しいケースだったと思います。プロジェクト開始2ヵ月後の6月にはAirレジのもとになるアプリを作成しました。企画が流れずに成立したのは実際にモノがあったことが説得材料につながったからだと思います。

大崎:わずか2ヵ月ですか!期間だけ聞くとスムーズに経営陣の了承を得て、事業化につながったように映ります。

佐々木:実は、自分自身もプロジェクト発足の2 年ほど前からレジの構想を持っていましたし、前任の先輩方もレジの提案を何度も行っていました。誰もがレジ事業の可能性を感覚的に感じていたのですが、事業化のための説明材料が見つからない。さまざまな人に提案して却下され続けていた中で、突破口となったのはリアルタイムに空席情報を一般消費者に提供できることと、オンラインのリクルートポイントを実店舗のリアルな接点で利用できることでした。

「ホットペッパーグルメ」と連携して、Airレジにある空席の情報をリアルタイムに反映させることや、一般消費者向けに「Airウォレット」というアプリを提供し、QRコードを店舗で使ってリクルートポイントを使用可能にできることを提案し、会社の納得感を得ることができました。時流もあったと思いますが、先輩方も含めて苦労して、2~3年かけてやっと事業化のドライバーを見つけることができました。

大崎:既存サービスとのシナジーを提示したことに加え、概念でなく実際のプロダクトを見せたことで、経営陣の納得につながったと。その前提として、何度却下されても諦めない「事業への強い思い」が大事だったのですね。

 

Airレジの展開と普及

大崎:ホットペッパーなどの既存サービスを通じた広い顧客接点を持ち、営業力があったとしても、実際に導入10万アカウントを達成するまでには苦労があったと思われます。たとえば、スモールビジネスの店舗オーナーにはデジタルデバイスへの苦手意識が強い方が多いといった、いわゆるデジタルデバイドが導入の高いハードルになるように思えます。

佐々木:そこは、よく聞かれるポイントです。デジタルデバイドがないわけではありませんが、やはり顧客接点力の高さでカバーできていると思います。我々には、毎月や毎週、実店舗に伺う営業担当がいて、使い方のサポートを行うことができます。また、リクルートの営業が言うのであればやってみようかという期待感を与えることができたのも導入が進んだ大きな要因だと思っています。当社グループの顧客接点力の高さがあるから期待してもらえ、導入後の支援もできています。

大崎:営業力。そこがリクルートライフスタイルの大きな武器ですよね。さらにそこにもう一つの武器であるテクノロジーが合わさったと。

続いての質問ですが、国内でAirレジを使われているお客さまは、大都市圏に集まっているのですか。

佐々木:大都市圏の方が店舗の数が多いため集中しているように見えるかもしれませんが、全国津々浦々で、満遍なく利用していただいています。

大崎:一方で、いきなり134の国と地域でアプリストアを通じて海外展開するには、言語対応が相当大変だったのではないでしょうか。

佐々木:基本的には英語圏、または英語が利用できる国が多いと考えて、とりあえず英語版を出しています。スタートアップ企業なら、リスクが多少あってもフットワーク軽く海外進出できると思うのですが、大企業では難しい。彼らができるのに、なぜ僕らはできないのだろうと立ち返り、リクルートらしい起業家精神で海外展開するなら、元々のAirレジの誕生と同じように「まずは出してみる」ことが重要だと考え、英語版だけで展開することにしました。経営陣がそれを認めてくれていることも大きいと思います。

 

業務負荷低減と予約しやすさがAirレジのメリット

大崎:店舗がAirレジを入れることによって、店舗とエンドユーザー(来店客)にどのようなメリットが生まれるのでしょうか。

佐々木:我々が実現したいのは、店舗業務の簡便化です。たとえば、これまで予約業務はサロンボードで、会計はレジで、というようにバラバラに行っていました。Airレジとサロンボードを連携させることによって、予約業務と会計業務をワンストップで行え、業務負荷を下げることに貢献できていると思いますし、そこに期待して多くの店舗に導入していただいています。また、2014年はホットペッパーグルメ経由で2200万人のネット予約が行われましたが、Airレジもこの一部に貢献しているはずです。リアルタイムの空席情報を見て予約できるようになりましたので。店舗にとっては業務負荷軽減、一般消費者にとっては予約のしやすさ。この2つのポイントにAirレジは寄与できていると思います。

※第2回は4/14に掲載予定です。

プロフィール

  • Sasaki profile
    佐々木 康太朗
    株式会社リクルートライフスタイル

    1981年生まれ。2006年リクルート新卒入社後、じゃらんにて営業を経験。その後、宿泊施設向けのサービス・商品の企画開発に従事。
    2010年よりホットペッパーグルメ・ホットペッパービューティーのクライアント向けサービス企画開発を担当。サロン管理システム「サロンボード」のプロジェクトリーダーを経験。
    2013年より、Airレジプロジェクトを立上げ、現在に至る。プライベートでは、年数回の大規模イベントオーガナイズと、渋谷にある飲食店nossaを運営している。

  •            r
    大崎 孝太郎
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター事業開発室 スーパーバイザー

    広告会社、個人事業などを経て、2010年電通へ入社。
    デジタル領域における事業企画、サービス開発と運営、メディア企業との共同事業を主に手掛ける。
    得意分野はスタートアップ企業とのアライアンス構築と食と旅と社外ネットワーク。
    社内横断組織であるThink Pet Projectのメンバー。

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