企画者は3度たくらむ #07

たくらみを阻む見えない壁(前編)

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    梅田 悟司
    株式会社電通 プロモーション・デザイン局 コピーライター/コンセプター

第2回のコラムで書きましたように、私生活では誰もがたくらんでいます。それにもかかわらず、多くの人は、仕事ではたくらめずにいます。そこには一体どんな障害があるのでしょうか?

 

私たちは感情の壁に囲まれている

企画は理論と感情のかけ算によって生まれるため、気持ちの影響を受けることが多いように思います。

失恋をしたら感傷的な発想になりがちですし、気分が晴れ晴れとしていれば、底抜けに明るい企画が生まれやすくなります。

気分が乗らないときや企画に行き詰まったときには、デスクを離れ、気晴らしをするに限ります。街を散策してみたり、見たかった映画を見てみたり、昔から気になっていたことを調べてみたり……。風呂に入って、何も考えずボーっとすることも有効です。

こうした気分によるものであれば、自身で対処方法を考え、矯正すれば事足りるかもしれません。しかし本当に厄介なのは、気分転換では解消しない感情の壁であると確信しています。

「仕事だからちゃんと考えなきゃ」「あと数日でプレゼンなのに、やばい」「あのクライアントだと、ここまでやると怒られるかな」
たくらみを阻んでいるのは、こうした見えない感情の壁です。

大切なのは、まずそれらの存在を認識することです。認識しないままでいると、常に企画にブレーキをかけ続けることになり、強い企画を立てることは難しいです。しかし、いったん壁の中にいることを認識し、壁の外へ出ようと試みることができれば、根本的な解決を見出すことができるようになります。

 

6つの感情の壁を意識する

以下に、いままで私が感じてきた壁を大きく6種に分類したものがありますので、一つひとつ見ていくことにしましょう。

 

 

人間の行動は、自分が育ってきた間に身につけた常識によって支配されています。
常識には、悪口を言わない、困っている人がいたら助けるといった道徳的なものと、自分の経験上こうに違いない、こうに決まっているという先入観によって成り立っているものがあります。当然のことながら、壁は、後者の先入観です。
先入観が一方的に悪いものであると決め付けるわけではありません。判断力と呼ばれる能力も一種の先入観ですし、正しい先入観であれば、企画を考える際に有益にもなります。

その一方で、先入観は、考える幅を無意識のうちに狭めてしまいます。「こうに決まっている!」と決め付けてしまうこともあれば、「それはないだろう!」と選択肢を排除してしまうこともあり得ます。

企画を広げていく際には、自分の持っている常識を一度先入観として捉えてみることで、その壁を疑うことからはじめると有効です。具体的には、自分が常識だと思っていることの反対を考えてみるのも手です。すると、自然に、自分の常識を越えたアイディアを発想できるようになります。

 

私生活では誰もが自然にたくらめています。その理由は「企画しなければならない」という切迫感がないことが一番大きいのではないでしょうか。そうした仕事モードから解放され、普段の自分モードで発想すると、企画は一気に輝きを増します。
そのためには、資料を読み込んだり、課題を自分なりに整理したうえで、ペンとノートやメモ帳だけを持って考えることをお勧めします。

誕生会を企画するときは、わざわざ本人の性格やプロフィールシートなどの資料を振り返ることはないですよね。企画作業も同様に、考えるたびに資料を見ているようでは情報やデータに惑わされることになりますし、資料との整合性をとらなければならないと思うようになり、さらなる仕事モードへと陥ってしまいます。
重要と思われる情報を頭に入れて普段の生活をする。そうすると、バラバラだった情報がつながっていき、ただの数字や文字だったものが、意味を持ち始めます。

次回は、その他の4つの壁について説明を続けていきたいと思います。

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Illustrated by Tokuhiro Kanoh

プロフィール

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    梅田 悟司
    株式会社電通 プロモーション・デザイン局 コピーライター/コンセプター

    上智大学大学院 理工学研究科修了。広告制作の傍ら、製品開発、雑誌連載、アーティストへの楽曲提供など幅広く活動。カンヌライオンズ、グッドデザイン賞、観光庁長官表彰など国内外30以上の賞を受ける。著書に『企画者は3度たくらむ』(日本経済新聞出版社)など。メディア出演歴に、NHKおはよう日本、TBSひるおび!、Yahoo!トップなど。CM総合研究所が選ぶコピーライターランキングトップ10に2014年/2015年連続選出。横浜市立大学国際都市学系客員研究員。

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