“社会”からリソースを得る「ソーシャル・ソーシング」の可能性 #10

モノ作りと資金調達の
ソーシャルネットワーク化が拓く未来

  • 蓮村 俊彰
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター
 
用語解説
【ソーシャル・ソーシング】アイデア、資金、スキルなど社会から必要なリソースを提供してもらうことで、社会の皆と共創していく仕組み。
【クラウドファンディング】インターネットを介して広く個人からお金を集める仕組み。「寄付型」「購入型」「融資型」「投資型」など、さまざまな手法がある。
【ファンドレイズ】ある特定の目的のためにお金を集めること。

 

 

 
 

◆プリンタブルでオープンソースなロボットをクラウドファンディングで

今、日米同時に時代を象徴するようなクラウドファンディングプロジェクトが進行しています。
その名も「誰でも作れる小さなヒューマノイドPLEN2(プレンツー)で、ロボットと暮らす未来をみんなに届けたい!」

このプロジェクトは「デジタルファブリケーション」「クラウドファンディング」「オープンソース」という時代を表すキーワードを3つもまとって世に出ました。

「デジタルファブリケーション」は3Dプリンターに代表される新しいモノ作りの手法です。ファブリケーションとはモノ作りといった意味なので、直訳すればデジタルモノ作りとなります。設計データと出力する機器さえあれば、どこでも同じものを製造できるようになりました。

フィルムカメラ時代の写真の現像は写真屋さんにお願いしないと難しい作業でしたが、デジタルカメラとインクジェットプリンターの普及により、家庭で印画するのが当たり前の時代になりました。それと同じことが3Dプリンターをはじめとする技術革新により立体物でも可能になります。

printout
写真はPLEN2のパーツを3Dプリンターで出力しているところです。
プリンタブルとはプリントできるという意味です。

「クラウドファンディング」もデジタル技術なくして成立しません。クラウドファンディングの成立のためには下記のような要素が必須です。

 (1) 誰もがアクセス可能な高度で安価なインターネットインフラ
 (2) 安全で信頼されているオンライン決済/送金システム
 (3) 膨大な人々がつながり合い情報が拡散するソーシャルネットワーク

これらが社会インフラとして整っている必要があります。一つでも欠けるとクラウドファンディングはその社会で成立しません。

「オープンソース」はレシピを公開するといった意味です。レシピが公開されているので、誰でもその料理を再現できますし、誰でも自分流にアレンジ、改造・改良することもできます。そして、その改良した料理のレシピを更に公開することでオープンソースのプロジェクトは進化していきます。ソフトウェア開発、プログラミングといったデジタル分野で活用されることの多い手法で、ものによって大小様々ですが、世界中のユーザーが開発に参加しコミュニティーを形成します。まさにデジタル時代のイノベーションメソッドと言えます。

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このロボットの主要パーツの3Dモデルデータは無償で公開されます。
このオープンソースの手法も、公開されたレシピにアクセスできる人が少ないと、あまり意味を成しません。インターネットの普及によって国境を越えてレシピがやりとりされ、発展してゆく手法と言えます。

◆“誰でも作れるロボット”がクラウドファンディングで生まれる

デジタルファブリケーション、クラウドファンディング、オープンソース、これらの根底には共通したコンセプトがあります。それは生活者一人一人の可能性を拡張するというものです。

デジタルファブリケーションは個人によるモノ作りの可能性を大きく拡大しています。高価な金型や熟練した匠の技なくして様々なプロダクツの製造が可能になりました。また地球の裏側のユーザーが作成した3Dデータをダウンロードしプリントすることで全く同じプロダクツを作ることもできます。

クラウドファンディングは賛同者さえ集まれば資金調達が可能な世界を切り拓いています。たとえ銀行や投資家の関心を引くことのない極めて個人的なプロジェクトであっても、誰かが応援してくれれば実現する世界がやってきたのです。オープンソースも同様です。誰でもソフトウェアやプログラムを無料でダウンロードし使用でき、さらに多少のリテラシーがあれば誰でも自らの用途に応じてカスタマイズ、改造することができます。見ず知らずの他人とつながり、互いにイノベーションを付加しながら更にいいもの、もっといいものを生み出していくことができる仕組みが取り入れられています。

このロボットの外観は3Dモデルがオープンソース化され誰でも改造可能なので、色や形状を自分の好みにカスタマイズすることができます。
このロボットの挙動、プログラムもオープンソース化されているので、自分の用途や好みに合わせた動きをインプットできます。
外観も中身(動き)も自分好みに改造できる、自分と同じヒト型で、持ち運びしやすい小型ロボット。このコンセプトは非常に大きな共感を呼び、日本(kibidango)アメリカ(KICKSTARTER)で同時にクラウドファンディングが実施されていますが、既に目標金額を突破し、追加目標を設定する人気ぶりです。

◆デジタル化はまだまだ世界を変えてゆく

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前述の通り、クラウドファンディングやデジタルファブリケーションは、デジタル化で変化した要素と要素が掛け合わされて生み出された新しい仕組みです。インターネットに初めて触れたとき、クラウドファンディングやデジタルファブリケーションといった仕組みが現れると予感することはできませんでした。

今後更に様々なものがデジタル化していき、デジタル化されたものが折り重なることで更に新しい仕組みや価値が生まれてくることと思います。クラウドファンディングは新しい仕組みであると同時に、今回のプロジェクトのような更に新しい価値を生み出すプラットフォームとしても機能していくでしょう。

クラウドファンディングのプラットフォームを眺めていれば、今、何が最先端で、イノベーターは何を考えているのか、その片鱗に触れることができます。クラウドファンディングは新しい価値が社会の人々に受け入れられるか否かの登竜門であると同時にインキュベーターにもなります。クラウドファンディングが社会で果たす役割は拡大していくと思います。

プロフィール

  • 蓮村 俊彰
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

    学生時代にカメラマン業で法人化(起業)。約40カ国を取材。その後、社会的影響力のある組織でソーシャルビジネスを興したく電通に入社。電通主導のビジネスの新規開発に取り組む傍ら、空港民営化などのPFIコンセッション入札事業構想アドバイザリ業務などのPRE/PFIコンサルティング、新規商業施設開発事業構想コンサルなどに従事。
    事業開発例として、2013年日本初のクラウドファンディングによるマスメディア放送「LISTENERS’POWER PROGRAM」事業を構想、立ち上げに参画。2016年日本初のFinTech産業拠点The FinTech Center of Tokyo 「FINOLAB」の事業を構想、 設立に参画、現在も運営チームとして日々活動中。

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