ワカモンのすべて #41

“正解”を着こなすイマドキ男子のファッション事情

  • 竹山 香奈
    フリーランス

かつて人気を誇ったファッション誌の休刊が発表されたり、ファッション専門学校の学生数が減っていたり、なんだか最近、若者(特に男性)のファッション熱が低い? 「量産型」大学生増殖中?

若者の○○離れという声は挙げたらキリがないほど言われていますが、その中のひとつが、ファッション。それって、ほんと? そしてなぜ? いつの時代も、若者のファッションは時代性を反映してきたはず。ならば、最近の若者ファッションから読み解ける時代性ってなんだろう、という切り口で、今回はイマドキ男子の意識を掘り下げてみたいと思います。

 

「ファッション好き」は、マイノリティー?

ワカモンの研究活動で、大学生と話していると、よくこんな声を聞きます。

「ファッション? こだわらないといったらウソだけど、そこまでお金をかけたり、目立とうとは思っていません。そもそもかけられるお金がないので。でも、清潔感は大事だから、そこだけは気を付けています」(21歳 大学4年生)

「だいたいみんな似ています。もちろん、服大好き!な友達も中にはいるけど、奇抜だったりお金つぎこんでいる人は少ない。アウトレットとかで安く良いブランドのものを買ってます」(21歳 大学4年生)

今年実施した『若者まるわかり調査2015』でも、「好きなこと・趣味」=「ファッション」と答えたのは男子大学生で26.1%。「ファッション好き」を自認している人は10人中3人に満たない結果に。(ちなみに大学生女子は「好きなこと・趣味」の1位にファッションが(67.3%)。女の子はいつの時代もファッション好きですね)

ただ、特別好きなことではないからといって、気にしていないわけではありません。
同じく大学生と話していると、こんな答えが返ってきました。

「服装も髪形も、ちゃんと気にはしてます、必要だと思うし、身だしなみというか、当然というか。基本嫌われたくないんです(笑)」(20歳 大学3年生)

学生が多く集う買い物スポットや繁華街、大学周辺などにくり出し、見渡してみると、確かに“ちゃんと”している。トレンドのアイテムを持っていたり、清潔感があったり、髪形もきちんと整髪剤を使ってセットしていたり。「好き」とまではいかないけれど、周りから浮かない程度に気にしている。それがイマドキ男子のファッションへの向き合い方のメジャーになっているのです。

 

ググればわかるNGコーデ

みんな“ちゃんと”して見える=身だしなみレベルが高まっている、平均値が上がっている。というよりは、検索すれば「正解」「NG」情報が大量に出てくる中で、「いや~それはない!」的な服の合わせ方の回避能力が高まっているともいえます。つまりは、“ハズさない”力。

“ハズさない”力の背景、それは情報流通量の多さも関係していると考えられます。
「この夏の正解!」「これだけはやめておけ」といったたぐいのファッション関連記事は検索するだけで山ほど出てきます。たとえば、私のパソコンでGoogle検索すると「大学生 NGコーデ 男子」で12.3万件がヒット(2015/6/1時点)。ハズさないための土壌が整っているのです。
大量の情報量から、いや応なく型が見え隠れしている。その中で、“自分で自分の型を見つける”作業はごそっと抜け落ち、ある程度は“見本”通りで何とかなってしまいます。

若者まるわかり調査2015』の中で、「周りから見られたいキャラ」で上位に来ているのが、「要領いいキャラ」。ハズすことなく、無難に、要領よく、がファッション意識にも出ているといえるでしょう。

 

外見も、内面も。無理はしない「身の丈意識」

NGコーデ回避術を身に付け「ダサい」も減った分、その分「驚き」も減りました。90年代後半~00年代前半のストリートファッション全盛期と比較すると、均質化、ともいえる現象が起きているのは事実です。お金のかけなさ、好きという気持ちの希薄化、誰でもどこでも同じものを手に入れられる購買環境の変化、とともに「驚き」の連鎖という“うねり”の少なさも相まって、ファッション熱の低下と評されているのではないでしょうか。

イラスト:小島洋介(電通 第4CRプランニング局)

ファッションの「うねり=ムーブメント」は逸脱から生まれてきました。
つまり、「ナシ」を「アリ」に変えてしまうことが、うねりを生み出すのです。けれども、今はアリもナシも検索できちゃう時代。絶妙な回避力でこぞって“正解”を着こなしています。

「良いもの安く」が基本で、コスパ欲求に正直な若者たち。90年代後半に一大ブームを巻き起こした裏原ブランドや、モードなラグジュアリーブランド全盛期のようなブランド第一主義とは異なり、ブランドネームを押し出した高級品より、安くても似合うものを買う、手に入れやすい店で手に入れられる服を買う、それが消費スタイルのベースになっています。

MEN’S NON-NOの岩佐きぬ子編集長にも、最近の若者ファッションについて聞いてみました。

「比較されがちな90年代に比べて情報量が格段に増えた分、全体的に目が肥えてきているため、安くて良いものを選べるようになっている、というのが特徴です。『消費が一番!』という時代と比べると、違うのは当たり前。今は金銭的な格差も出てきているし、消費の選択肢が増えているので、ファッションは特別にこだわるものではなくなっていますね。一昔前のようなお金をかけて『ブランド』を着る!という熱は確かに減っていますし、ビッグメゾンへの憧れも、やはり以前に比べれば減っています。台頭しているのはファストファッション。好きなブランドを聞いて、ファストファッションのブランド名を答える人も増えました。ここ最近は、全体的に『シンプル』で『奇をてらわない』傾向があるので、その中におさまっているな、という印象を持っています」

若者まるわかり調査2015』の中で、「10年後の自分は、『自分の身の丈に合った暮らしをしている』」に「はい」と答えた人は88.2%(男子大学生)にものぼります。ここからも見て取れる“身の丈意識”の高まりとリンクして、“無理はせず、スマートに”が、ファッションへの向き合い方にもそのまま反映されているのです。

 

浮かず、引かれず、なじみたい

一昔前は、個性の表現の最たるものだったファッション。
しかし今はSNSの台頭により、自己表現のツールが増えた分、ファッションは自己表現の手段としての意味合いが薄れてきています。今やファッションは、「自分はこうです!」という個性を打ち出すプレゼンテーションの手段というよりは、みんなに溶け込み、認められるためのコミュニケーション手段のひとつになっているのです。

「何か自分が着ていたり、持ってるものが周りで話題になったり褒められたりすると、よし!うれしいな!って思います。でもあえて目立とうとしたりはしません」という大学生の言葉には、本音がにじみ出ています。

尖りたいわけではなく、みんなとうまくやるためにどうするか。“完全に同じ=無個性”は回避したいけれど、こだわりをあからさまに表に出して、浮きたくはない。出るくいになって打たれたくはない。周りの人とのコミュニケーションを円滑にするために、引かれないために。
イマドキ男子の無意識の“気づかい”が、ファッションにもそのまま反映されているのです。

あなたのまわりの若者はどんな若者ですか?

 

【ワカモンプロフィール】

電通若者研究部(通称:ワカモン)は、高校生・大学生を中心にした若者のリアルな実態・マインドと 向き合い、彼らの“今”から、半歩先の未来を明るく活性化するヒントを探るプランニングチームです。彼らのインサイトからこれからの未来を予見し、若者と 社会がよりよい関係を築けるような新ビジネスを実現しています。現在プロジェクトメンバーは、東京本社・関西支社・中部支社に計14名所属しています。ワカモンFacebookページでも情報発信中(https://www.facebook.com/wakamon.dentsu)。

プロフィール

  • 竹山 香奈
    フリーランス

    1988年生まれ。2011年電通入社、15年7月退社し、現在フリーに。
    広告戦略、事業戦略、商品開発、地域活性化など、幅広いプランニング業務に従事。
    電通若者研究部(ワカモン)では、関西圏の学生との関係構築を行う他、ナレッジを生かした新事業プランニング、企画開発、ブランドコンサルティングを行い、地方創生に特化したプロジェクトチームであるGAL LABO@ではプロジェクトリーダー・アートディレクターを務めていた。日本映画が大好き。

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