インサイトメモ #45

そのニュースどこ情報?
若者たちがネットのメディアを選ぶ理由。

  • Miwa
    美和 晃
    株式会社電通 電通総研 メディアイノベーション研究部 部長
 

■ネット上のニュースは百花繚乱

近年、スマートフォンの普及により、いつでもどこでもネットに接続される情報環境が実現してきました。その状況に後押しされ、ソーシャルメディアを含むさまざまなリンク先から、次々と新しい情報(ニュース)がリアルタイムで入手できる時代になりました。

ネット上のメディアは、政治・経済から恋愛のノウハウまで幅広いジャンルの情報を日々提供しています。ポータルサイトのニュースは、ネット普及期からすでに不動の人気を誇っています。さらにここ数年、従来の報道メディアが重きを置く報道の順番にとらわれず、高性能なコンピューターがはじき出す読者注目度の予測に基づき、硬軟取り交ぜた様々なテーマを整理してスマートフォン利用者向けに情報提供する「キュレーションメディア」や、特定のニュースを取り巻く状況変化を、ネット上の反応コメントまで交えて、しばしば一般のネットユーザーが中心となって収集・整理して紹介する「まとめサイト」など、ネットならではのメディアが続々と登場し、短期間のうちに人気を集めるようになっています。

人々の情報源となるメディアは、どこに向かっているのでしょうか。

■「頼りにするメディア」の上位に、各種ネットメディアもランクイン

幅広い興味関心に応じてニュース情報にいつでもアクセスできるようになった現在、人はどのような情報源やメディアに頼って生活しているのでしょうか。

テレビ・新聞に始まり、ネットの各種ニュースサイトや個人のブログに至るまで、さまざまな情報源やメディアを71分類し、人が毎日の生活のなかでどのくらい「頼りにしている」のかを調べてみました(図表1)。

グラフは、全国の男女15歳~69歳4367人のあいだで特に「頼りにしている」人の割合が多かった上位20位のメディアを示したものです。テレビや新聞といった従来からのメディアが上位に挙がっているいっぽう、ネット上で人気の比較的歴史の浅いメディア(15位の「まとめサイト」や19位の「ネタ・話題系ニュースサイト」など)も軒並み上位20位以内に入っている点が興味を引きます。

■若者はネットの情報源にかなり頼っている~年齢による違い

実は年齢階層別にみてみると、20代ではさらにネットメディアの位置づけが上がり、「まとめサイト」が7位、「ネタ・話題系ニュースサイト」が13位に上がってくるのに続き、「キュレーションサイト」も18位に顔を見せます。どうやら、頼りにするニュースメディアには、年代による違いがありそうです。

そこで、メディアを13の因子に分けて分析してみました(図表2)。

71分類のメディアに対し、日頃からどのくらい「頼りにするか」をたずね、回答結果を上記の13因子に集約している。        
各項目はいずれも回答者全員(15~69歳)の平均が0となるようにしている。            
青はプラス。つまり、その年代でそのメディアを日頃から頼りにしている人の割合が、全体平均と比べて多いことを示す。
赤はマイナス。その年代でそのメディアを日頃から頼りにしている人の割合が、全体平均と比べて少ないことを示す。 

 

青色の棒は、そのメディアを「日頃から頼りにしている」と回答した人の割合が多いことを示しています。「地上波テレビ報道・情報番組」「ラジオ」「BS・CS」「新聞・情報系雑誌」では、50~60代を中心とした中高年層からの支持が特に高いことが分かります。これに対し「ニュース・キュレーションサイト」「SNS・ブログ」の2つのネット系メディアのグループ、および「スポーツメディア」「女性誌」「男性コミック・ゲームアニメ誌」の3つ(セグメントされたメディアといえるでしょう)は、10代から30代の若年層からおもに支持されています。

特に「ニュース・キュレーションサイト」のグループに注目してみましょう。このグループには、「ネタ・話題系ニュースサイト」「まとめサイト」「一般系ニュースサイト」および「キュレーションサイト」などが含まれているのですが、20代だけではなく10~40代ぐらいまで幅広い年代から支持を広げつつある様子が見てとれます。

■ニュース・キュレーションサイトを頼りにする人の特徴は?

若年層を中心とする「ニュース・キュレーションサイト」のスコアが高い人は、どのような特徴を持った人でしょうか。図表3(重回帰分析といいます)は、その結果を示すものですが、そのままだと理解が難しいので解説を交えて読み解いてみましょう。

 

 

興味関心領域は、かなり「カジュアル」
「政治・経済・時事情報」に興味はあるが、特徴が最も強く表れるのは「コミック・アニメ・ゲーム」への関心。その他、「生活情報」(天気・交通や事件・事故などの典型的ニュースが含まれる)、「芸能・エンタメ」などへの興味が高い点が特徴です。

ニュース情報への接し方・動機は、「個人的興味の満足」や「仲間との話題共有」
ニュース・キュレーションサイトを頼りにする人は、公共に開かれた話題に参加したいなどの「社会的動機」ではなく、自分自身の生活や趣味の充実など「個人的動機」で日頃のニュースに接していることが分かります。さらに、友人・同僚などと歩調を合わせるための会話の素材探しである「協調的動機」も大きく関わっています。

情報行動や消費意識は、「こだわり」でなく「トレンド」を強く意識
情報感度・行動や消費意識の特徴について調べてみると、近年注目される「空気を読む」人々の感性が強く表れています。「流行情報」や「トレンド」への意識が強いいっぽう、消費に「こだわり」を発揮する側面は弱いようです。

このように、ネットのニュースメディア全般を頼りにする人は、ジャーナリズム色の濃い新聞に向かうような動機というよりは、生活や趣味にまつわる軽い話題中心の雑誌に目を通して仲間と会話する時のような動機で情報に触れていると考えてよさそうです。

またビジネスの視点でみると、近年、ネット上で急速に人気を集めている新しいニュースメディアは、こうした人々の特徴をうまく捉えたラインアップや情報表示の仕組みを提供していると評価できます。また、その結果として情報に対するライトな価値観を持つ多くの若者層の受け皿となっていると考えられます(その意味では広告メディアとしても期待できそうです)。

■10年後のネットニュースメディアの姿は?

いま、若年層が頼りにするメディアとしての役割を拡大しているキュレーションメディアやまとめサイトは、10年後にはどうなっているでしょうか。若い世代が年を重ねて社会や家庭の中心になっていく時のニュース情報源として伴走を続けているでしょうか。

その具体的な姿はまだ見えませんが、今後もさらに若いスマホネイティブ世代がニュースメディアに関心を持つようになっていくなかで、ネットからのニュース情報を頼りにする人がますます増えてくることは間違いありません。

選挙権を20歳以上から18歳以上へと引き下げる法律が成立しました。ネットを中心的な場とする新しいメディアは、若年層においてまだ弱い社会的・公共的なニュース情報入手への動機にも火をともし、10年後には新しい総合メディアへと成長を見せているのかもしれません。


【調査概要】
●調査期間 2015年3月6日(金)~3月9日(月)
●調査方法 ウェブ上でのアンケート調査
●調査対象者 全国男女15~69歳(高校生除く)を性別・年齢別・居住地区別人口比に応じて割り付け
●有効サンプル数 4,367名
●調査実施 株式会社ビデオリサーチ

 

 

プロフィール

  • Miwa
    美和 晃
    株式会社電通 電通総研 メディアイノベーション研究部 部長

    入社以来、電通総研にて主に情報通信やデジタル機器・コンテンツ領域の調査研究や官・民のクライアント向け事業ビジョン構築作業とコンサルティングを実施。カメラ、ロボットから電子書籍まで幅広い分野を担当。2012年7月よりメディアイノベーション研究部にて情報メディア全般に関するプロジェクトに従事。2015年11月より現職。

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