Experience Driven Showcase #11

安川電機100周年式典を、ライゾマティクスが演出!

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    真鍋 大度
    ライゾマティクス 取締役/アーティスト/デザイナー
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    石橋 素
    ライゾマティクス 取締役/エンジニア/アーティスト
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    石橋 治子
    株式会社電通 イベント&スペース・デザイン局 プランナー/プロデューサー
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    関口 真一郎
    株式会社電通テック プロデューサー

4月に安川電機は100周年を迎えました。安川電機といえば、産業用ロボット「MOTOMANMH24」が居合術の神業に挑戦する『YASKAWA BUSHIDO PROJECT』のプロジェクト・ムービーが話題となっていますが、実はそれ以外にも挑戦ストーリーがあります。それが記念式典で行われた、「人とロボットの協調」をテーマに、安川電機の産業用ロボットとライゾマティクスの技術、経験を融合したステージパフォーマンスです。今回は、その舞台を手掛けた、ライゾマティクスの真鍋大度さん、石橋素さんに、電通でこのイベントを担当した石橋治子、電通テックの関口真一郎がインタビューしました。

取材構成:金原亜紀 電通イベント&スペース・デザイン局
 

 

安川電機のロボット技術には、もともとすごく関心があった

石橋治子(以下、石橋治):今年1月末に最初のお打ち合わせをさせていただいて半年、手探りの中でいろいろ進めていくことが多かったのですが、終わってどんな感想ですか。

石橋素:1月に最初にお話を聞いたときは、すごく時間あるなと思ったんです。いろんなことにトライできる時間があるなと思って、いろいろトライをして。
最終的に演出とか映像、ダンサーさんの力が大きいとは思うのですが、いいものになってよかった。僕はテクニカルディレクターなので、技術的にもうまくいってほっとしました。

真鍋:クライアントワークですから、制約は覚悟していました。でも振り返れば、いつもと変わらない、「イレブンプレイ」のチームと自分たちがいつも一緒にやっている作品制作とそんなに変わらないでできたなという気はしますね。

石橋治:我々電通側としては、失敗できない、確実性を高めていかなきゃいけないというところがありますが、常にチャレンジしていくところがライゾマティクスさんの魅力なので、なるべくその新しさに沿っていかなきゃ、というところが難しくて。でも終わってみて、すごく学ぶことが多かったです。

石橋素:僕らは安川電機のロボット技術には、もともと関心がありました。工場見学にも行ったことがあります。

真鍋:安川電機が開催する開発プログラムのレッスンみたいな講習を受けて。レッスンの受講カードを2~3年くらい前につくりました。

石橋素:僕も2回受けています(笑)。

 

 

安川電機の技術とコラボしつつ、どのような作品をつくるか

関口:最初に仕事を受けたとき、何かやりたい演出のイメージはありましたか。

真鍋:「ロボット100台使いたい!…みたいなことを多分言わせてもらったと思うんですけど(笑)。初めてロボットアームを使うわけでもなかったので、感触とかはイメージしつつ。すごく有名なボット&ドリー(※1)のCG向けのプラグインを開発しているチームとも、バーで飲んだりしながら、どの辺が難しいとか、こういうことをやったら面白いよとか聞いたりしていて、やれたらいいなあというプランは、何となく最初からありました。

※1:ボット&ドリー…Bot & Dolly社は、グーグルが買収したロボット企業のひとつで、ロボットなどの最先端技術を利用する特殊撮影制作会社。

石橋素:最初はドローンとロボットを使ってとか、レーザーを持たせるとか、ロボットアームにダンサーを乗せるとか、いろいろできることを考えていって、僕らはテクニカルに面白そうなことをやって、それを演出にどう落とし込むかというのはコリオディレクター(振付演出家)のMIKIKOさんがやっていただくという感じ。
今回は最初、何を要素として使うかみたいなところは結構考えがまとまるのに時間がかかったのと、同時に安川電機さんの技術との共同開発的なところも探っていきました。

初期のイメージパース

石橋治:時間の制約的に、1個ずつ詰めるというわけにもいかず、演出と開発を一緒に進める中で、開発の目途が立てば、演出も見えてきて広がるのに、そのまた逆もしかり、という状況で、なかなか決まり切らなかったりしましたよね。
苦労されたところは、どういうところだったんでしょうか。

石橋素:言い方はよくないかもしれないですけれど、ガッと集中してつくれば今までの経験値から形にできるというのはわかっていたのです。わかっていたがゆえに、共同開発的なことにもトライしてみようという感じで、安川電機との新しいつくり方をつくり上げたかった。その見切りをどこでジャッジするかというのはかなり迷いました。

ステージ調整中の様子

関口:最初に目指したのは、どういう感じだったのですか。

石橋素:完全に新しいツールを1個つくる、みたいなことですね。パフォーマンス用というか、表現のためのロボットアームツール自体をつくりたいと。それは今も諦めたわけじゃなくて、そういうものは必要だと思うし、あったら絶対に表現の幅が広がるという人たちはいっぱいいると思うのでやりたいです。

関口:安川電機の技術協力がないとできないですからね。

石橋素:はい。基本的に、CGソフトで動かしたようにロボットアームが動くというのは、今、工業用ロボットとしては必要ないですよね。でもあったら絶対、未来のビジネスへの可能性が広がりますよね。

関口:CGをそのまま工場で、ロボットが人の手を介さずプログラムをしていくというのは、大きな流れでいうとあるはずだと思いますよね。

真鍋:シンギュラリティ(※2)と言われている問題ですけど、それを開発するコストをかけるかどうかというところのジャッジですね。

※注2:シンギュラリティ:技術的特異点(ぎじゅつてきとくいてん、Technological Singularity)とは、未来研究において、人類の技術開発の歴史から推測して得られる未来のモデルの正確かつ信頼できる限界(「事象の地平面」)。

 

 

演出プランの進め方、つくり方

石橋治:演出はどういうふうに決めていかれたのですか。

石橋素:安川電機が始まったときから100年、みたいな時間軸を感じられる何か、それは映像で出すのか、何で見せるのかわからないですが、その100年という時間を感じられるような物語的な要素が必要だなと思いました。あとステージとしては、下にロボットが固定配置されるのはもう決まっていたので、何か上の空間の演出がないとちょっと寂しいなと。サーボモーターを使ってフライングキューブを天吊りをしてという工夫で、何とかうまいこと組み合わさったなと。最初にそれを決めて、次に映像プロジェクションをどうしようかとなり、演出の曲はevala君につくってもらって、という順番ですね。

石橋治:ロボットにどんな動きをさせるかについては、安川電機の技術チームにヒアリングをして、この動きはどうなんだろう、いや、これはちょっと時間かかるよ、みたいな話をした記憶があるのですが、その後ライゾマティクスチームがロボットの動きを詰めていかれて、その動きを見ながらMIKIKOさんが、じゃあダンサーさんはこういう動きをしたら面白いのかな、みたいな同時進行だったのですか?

石橋素:MIKIKOさんは、ロボットに振りを付けるのは前にもやってもらっているので。ソフトバンクのペッパー君5台に振りを付けるとかもやっているし、ロボットアーム3台に振りを付けるとかもやっているので、どれぐらいのスピードでとかの勘はもともとありました。

真鍋:MIKIKOさんは、ふだんからそういうのを仕事でやっているので、演出全体を総合的に見ている、というのはあるとは思うんです。ロボットを人のように扱ってやっているということだと思いますけどね。映像と人の絡み合いも多かったり、インタラクションをつくるのがうまいですね。

石橋素:先に振りがあって、それにロボットを合わせて、映像チームはそれを見て映像をつくる。それはいつもやっているチームなのでできることなのです。

石橋治:長い蓄積があってなせる業ということなんですね。

本番リハ中のオペ卓

関口:意外とキューブとかが不安定だったときに、じゃあ赤外線で追っかけちゃいますか、なんていう話があって。
昔は赤外線でリアルタイムに人間の動きに合わせてやるというのが目的だったはずなのに、今回はある種バックアップ的にそれを使っちゃっているというところが面白かった。

石橋素:カメラとかは、今までやっていない機種を使ったりしていて、今回はステージまで距離が遠いとか、幅が10mでその全体を撮らなきゃいけないとか、そういう条件でいろいろ機材を変えたりはしているんです。バックアップというよりは、それに合わせてまた開発している部分もある。
もしこの先があるんだったら、もっと汎用性があって、普通の今後の撮影でも使えるカメラシステムだったりプロジェクションのシステム開発までいけると、目標設定としてはさらに高いとは思うのですが。

プロジェクションマッピング調整中の様子

 

プログラミング、映像表現、パフォーマンスを子どもたちに教えていきたい!

石橋治:夏休みには、子ども向けのワークショップをやられるんですよね。

石橋素:やります。中高生限定で。

真鍋:大学生に教えるのは、もう遅いなと最近思っていて。高校生ぐらいでもプログラミングできる子は本当にできるので。大学生のすごい子を集めるより、高校生のすごい子を集めるほうが簡単なんです。

石橋素:ワークショップでは、パフォーマンスをつくる。だからプログラミングできない人もオーケーです(笑)。

真鍋:ダンサーだったら、高校生のダンスで有名な子が参加したり。横のつながりをつくってあげるのが大事かなと。すごいプログラマーと、ダンサーと、映像と。多分高校生同士でつくっても良い作品はできるんです。社会人が中途半端にやっているインタラクティブ表現なんかより全然いいと思います(笑)。MIKIKOさんにも先生として入ってもらいます。募集は10人限定。

石橋治:めちゃめちゃラッキーですね、その10人!

<了>

プロフィール

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    真鍋 大度
    ライゾマティクス 取締役/アーティスト/デザイナー

    1976年生まれ。東京理科大学理学部数学科卒業、国際情報科学芸術アカデミー (IAMAS) DSPコース卒業。
    身近な現象や素材を異なる目線で捉え直し組み合わせることで作品を制作し、ジャンルやフィールドを問わずプログラミングを駆使して様々なプロジェクトに参加。
    MIT MediaLab、Fabricaをはじめ世界各国でワークショップを開くなど教育普及活動にも力を入れる。

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    石橋 素
    ライゾマティクス 取締役/エンジニア/アーティスト

    1975年生まれ。東京工業大学制御システム工学科、国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)卒業。
    デバイス製作を主軸に、数多くの広告プロジェクトやアート作品制作、ワークショップ、ミュージックビデオ制作などと精力的に取り組む。

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    石橋 治子
    株式会社電通 イベント&スペース・デザイン局 プランナー/プロデューサー

    2007年 電通入社。テレビ局に配属後、2009年よりプロモーション事業局へ。
    ビューティー、トイレタリー関連などのキャンペーンからイベントまで幅広く担当。
    2011年よりイベント専門室、スペース・ブランディング室(現 イベント&スペース・デザイン局)へ。現局においては、飲料メーカーを中心に、プロモーションイベント、ポップアップストアなど、“ブランド体験空間”のプランニング&プロデュースを手がける。

  •  a2a8942 profile
    関口 真一郎
    株式会社電通テック プロデューサー

    千葉大学工業意匠学科にて空間造形を専攻し卒業後、電通プロックス(現テック)に入社。
    ブランディングに関わるクリエイティブ・戦略を含めたプロジェクトにプロモーション分野のプロデューサーとして参画し、プロモーション領域だけにとどまらず、ブランディング構築のパートナーとして電通の活動を支える。

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