「よりよく生きる」プランニング #10

大屋洋子×小幡道子対談前編
「効果や効能だけではなく、
気持ちをアゲることが大事」

  • Ohya 20140619  01
    大屋 洋子
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター 電通総研 研究主幹/部長
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    小幡 道子
    株式会社電通 マーケティングソリューション局

今回は、「よりよく生きる」プランニングの番外編として、電通「食生活ラボ」の大屋洋子と電通「チームウェルネス」の小幡道子の対談(前編)をお送りします。10年前の健康バブルと現在の健康に対する考え方の違いや、「気持ち」を重視する風潮などについて語ります。

10年前みたいに、成分が話題になるほど、今はストイックではない

 

小幡: この前、ヘルスケア市場が拡大しているというニュースを見ました。食品のコモディティ化によって、価値付けが必要になったときにヘルスケアという価値はニーズがある。ヘルスケアにはどの業界も興味があって、食はその中心になるから、今後もっと盛り上がるはずです。今後どういう商品や価値付けが出てくるのか、ぜひ大屋さんに伺いたくて。

大屋: 私がウェルネスプロジェクトを担当した10年前は、健康の付加価値を付ければ売れるみたいな時代でした。私は健康バブルと呼んでいたけど、例えば、飲めば血液サラサラとか、食べればダイエットできるとか。そういう機能的な付加価値が付いた食品がたくさんあった。でも、そのうち「ただ飲むだけじゃ痩せないよね」「身体にいいからって、食べるだけで健康になれるわけないよね」って、みんな気付き始めた。すると今度は、ラー油かけご飯とか、B級グルメとかメガ盛りが流行って「食べたいものを食べたほうが気持ちがアガるよね」という機運になって…。でも、また「いや、それはやっぱりまずいよね」って戻ってきている気がします。

小幡: まさに私は健康バブルがはじけてから担当になりました。確かに、いま大屋さんがおっしゃったように、戻ってきている感じはします。最近調査の結果を見ていても、みんなの話を聞いていても、健康についての話題が多かったり、情報を収集してるっていう話が増えてきている気がします。でも前とは違うんですよ。流行り方が。

大屋: 「○○○が入ってるからいい!」っていう感じじゃないですよね。

小幡: それこそ炭酸飲料にトクホが付いていると、これならいいだろうとか。

大屋: そうそう。今はトクホの飲料を飲むときに「この成分が飲みたいんだよね」って言う人はあんまりいない。何となく身体に良さそうだから…という感じで飲んでいると思うんですよね。10年前みたいに、成分が話題になるほど、今はストイックではないかもしれません。

小幡: 以前は、例えばポリフェノールという成分名はみんな知っていたけど、今は知らない人が増えています。ただ、知っている人は成分や効能まで知っているという二極化が起きている。さらに、機能的な意味での効果・効能を求めている人がいる一方で、ナチュラルなものを求めている人もいて、そこも二極化している。商品に選択肢が多くなってきたから、情報に振り回されずに自分の好きなものを選ぶようになってきたのかなと思います。

答えが出るのか分からないことに、手間とお金と時間をかけるリスクを背負えない

 

大屋: 以前は身体が良くなればそれでオッケーだったけど、今は「心の健康って大事だよね」「気持ちがアガらないのって、やっぱ良くないよね」っていう流れになっています。要は、美味しいとか好きって思えて、なおかつ身体によくて、腑に落ちるもの。納豆がいいっていうのも、昔から日本人が食べているからという納得感であって、ナットウキナーゼとかイソフラボンとか理屈じゃない。一方で、いざとなれば今は何でもすぐ調べられるから、成分から配合量まで全部見てから選ぶこともできますしね。

小幡: そうなんですよ。ただ身体にいいことだけを追求しているわけじゃない。あと最近あるのが、効果や結果をすぐに求めるという風潮。

大屋: 今って、手間もかけない、時間もかけない、ですよね。インターネットが無い時代は「このお茶に何の成分が入っているのかな」と調べようと思ったら、メーカーに質問の手紙書いて、それを見たお客さまセンターの人が手紙で返事をくれるみたいな。数週間かかっていたことが、今はメーカーのホームページを見ればすぐに分かる。何でも検索すればすぐに答えが分かる。そうすると、答えが出るのか分からないことに、手間とお金と時間をかけるリスクを背負えなくなったと思うんですよ。だから、すごく美味しいとか、Facebookのネタになるとか、そういうものがウケるんですよね。

小幡: そうすると、これからは機能に特化したものと、気持ちをアゲるものが、いろんなバリエーションで出てくると思うんです。この間、大屋さんに頂いた海外のお菓子があって、味はすごいフルーティーなんだけど、見た目は板状のガムっていうか、ゆべしっていうか…。

大屋: ナチュラル過ぎて色は茶色で、え、これ本当にイチゴ?みたいなね。ニューヨークのホールフーズのプライベートブランド商品で、オーガニック100%のフルーツバーなんですけど、見た目がゆべし(笑)で。でもすごいフルーティー。

小幡: その見た目に反して、すごい美味しい。しかも保存が利いて手も汚れない(笑)。未来の健康食な気がして。フルーツが凝縮されているオーガニックのお菓子なんですけど、多分すごい技術が費やされていると思う。そのお菓子を食べて、ナチュラルと技術の組み合わせがこれから出てくるだろうなと思いました。

大屋: 香料や保存料は天然のものが入っていてノンシュガーという。

小幡: しかもパッケージを開けるといい香りがして気持ちがアガる。フルーツって洗うとか皮をむくとか面倒くさいけど、これなら簡単にフルーツを味わえますよね。

大屋: 食生活ラボの調査を見ていても「果物の皮をむくのが面倒くさい」っていう人、結構いるんですよ。だから皮をむいてあるミカンが売れるとか、ミカンより簡単に皮がむけるからバナナの方が売れるとか。面倒くさくないっていうのは大事かもしれないね。今は、食べることまで面倒くさいっていう人もいるので。

私「面倒くさい」って気持ちがよく分かる(笑)

 

小幡: この前、家の冷蔵庫で梨を発見しました…。もう皮をむくのも切るのも面倒くさいんですよ、もう半分ヨレヨレさんになっていて。

大屋: ハリとツヤが(笑)。

小幡: 部分的には食べられる感じなんですけど、でもまた面倒くさくなっちゃって。そしてまたちょっと様子を見ようかなって…。

大屋: え、様子見たの? その梨はじゃあまだ生きているの?

小幡: 見なかったことにして…。なので、私「面倒くさい」って気持ちがとても分かるんです。でも、秋に梨っていうのはいいんですよ、なんかこう気持ちが。だから買っちゃうんですよね。

大屋: なるほど。そういうことね。自分で買ったの?

小幡: 自分で買ったんです。むくのが面倒くさいって分かっているのに。秋だし、風情というか、情緒的にも旬のもの食べなきゃと思って。やっぱり旬のものは栄養があるとか思うけど、結局面倒くさい。

大屋: 「梨バー」を開発しなくちゃね。

小幡: 「梨バー」出てきたら買っちゃうと思う。最近ドライフルーツがずいぶん出回るようになりましたね。

大屋: ドライフルーツもまた注目されていますね。ドライフルーツ入りのシリアルも売れているし。

小幡: やっぱりそうですよね。そういうのがすごく今っぽいっていうか。

大屋: 今っぽいと思います。ドライフルーツってうまみと栄養が凝縮されているようなイメージもあるし。シリアルなら穀類も入っているし。しかもミルクをかけるだけで食べられるっていう手軽さ。

小幡: 実はそれ、最近よく買っちゃうんですけど、パッケージに「そのままでも食べられます」って書いてあって、牛乳さえかけない日があります。それでも普通に美味しいし、栄養摂れている気がして。

大屋: ちょっとぱさぱさしそうだけどね(笑)。

後編へ続く 〕

プロフィール

  • Ohya 20140619  01
    大屋 洋子
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター 電通総研 研究主幹/部長

    1992年電通入社。マーケティング・プランニング部門で、食品、飲料、製薬を中心とした企業のコミュニケーション戦略立案などを担当。2004年から消費者研究センター、08年から電通総研で、ウェルネス、食育プロジェクトのリーダーとして従事。11年から「食生活ラボ」を設立・主宰。2013年から「電通こころラボ」のアナリストも務める。著書に『いま20代女性はなぜ40代男性に惹かれるのか』(講談社)。

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    小幡 道子
    株式会社電通 マーケティングソリューション局

    電通チームウェルネスの戦略プランナー。オリジナル調査や有識者ネットワークなどから収集・分析した情報と知見を用いて、食品、飲料、医薬品、化粧品、トイレタリーなどの幅広いカテゴリーでヘルスケアのトレンドや生活者インサイト視点を盛り込んだ商品開発サポート、販促戦略コンサル、コミュニケーション開発などを行う。

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