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Dentsu Design TalkNo.54

TYMOTEのお仕事、紹介します!

2015/08/07

グラフィック、映像制作、インスタレーションや空間デザイン、サウンドデザインなどの幅広い分野で、メンバーの多様な個性や得意分野を再構築しながら創造性と独創性にあふれた作品を生み出し続けているTYMOTE(ティモテ)。海外からも注目を集め、今では国内外からオファーが舞い込む。彼らと仕事経験のある電通アートディレクターのえぐちりかさん、イベント&スペース・デザイン局の藤田卓也さんが、TYMOTEから村井智、森田仁志、山口崇洋の3氏を迎え、そのクリエーティブワークの発想、手法に迫るトークショーをお届けする。

(左から)TYMOTE:山口氏、村井氏、森田氏 電通:えぐち氏、藤田氏

 

美大生仲間が集まって立ち上げた
クリエーティブチーム

えぐち:昨年末に、CMのお仕事でご一緒させていただいたのが、TYMOTEとの出会いです。制作会社の方が紹介してくださったのがきっかけでした。時間的にも予算的も厳しかったにもかかわらず、とても完成度の高い映像を仕上げてくださって。軽やかにひょうひょうと素敵なお仕事を生み出されている印象ですが、実際どうものづくりをされているのでしょうか? 今日は色々とお伺いできればと思います。

藤田:手触り感やぬくもり、エモーションが僕の好きなTYMOTEらしさです。作風の幅が広いのに、どの作品からも共通して感じます。そんなTMOTEの魅力と謎に、今日は迫りたいと思います。

村井:TYMOTEは1980年代生まれのメンバーが、学生時代に立ち上げたクリエーティブチームで、現在9人です。2007年に横浜赤レンガ倉庫で行われた展示会「The SIX」のために、多摩美術大学、武蔵野美術大学、桑沢デザイン研究所などから仲間たちが集まって、初めて「TYMOTE」として作品を作りました。基本的には“グラフィック好きの美大卒が作った会社”ですが、映像から空間、グラフィック、サウンドデザインまで何でもしますし、それが強みになっています。

藤田:TYMOTEといえば映像のイメージが強いですが、インスタレーションやグラフィック系のお仕事にはどんなものがあるんですか?

森田:昨年TYMOTE全体で手掛けた仕事でISSEY MIYAKE INC.の2014年ホリデープロモーションの「MESSAGE」という企画を作ったのですが、ビジュアル、映像、ウェブ、店頭ディスプレー、店内インタラクションまで一括で担当しました。ギフトがテーマだったので、感謝の気持ちや言葉を贈れたらいいと思い、ブランドの限定商品を使ってAtoZのタイポグラフィーを作りました。

山口:特設サイトでは、文字一つひとつにサウンドファイルを割り当てて、好きな言葉をムービーファイルにして送信できるようにしています。店頭でも、キーボードをタイプすると、文字が出てきて音楽を奏でるような仕組みを作りました。

村井:グラフィックチームがタイポグラフィーを作り、そこに仲間がいろいろなアイデアを持ち寄ってくる。一緒に仕事をする中で、そういうスタイルになってきました。

えぐち:NY ADCでもゴールドを取られていた仕事ですね。素敵です。

藤田:僕がTYMOTEとご一緒したのは、日清食品グループの技術・開発・研究拠点である「the WAVE」のための説明ムービーの仕事です。研究開発についての説明や、開発者へのインタビューといったコンテンツを、少しでもかわいらしくしたいと思ってお願いしました。15分ぐらいの長尺映像ですが、TYMOTEらしいテイストで、子どもでも最後まで見てもらえるムービーになりました。

森田:このときは、話の流れは脚本家に作っていただき、アニメーション部分と音楽を僕らが担当しました。キャラクターアニメーションの経験もなかったのでチャレンジでしたが、その分かなりの経験値を積ませていただきました。

えぐち:特に気に入っている仕事を挙げるなら何ですか?

村井:MTV81」ですね。それぞれの当時のマイブームが良い具合に出ていて。

森田:日本のカルチャーを海外に紹介するウェブムービーのオープニングとエンディングを担当して、浮世絵の要素を抽出したグラフィックを作ったんです。

藤田:先ほどのイッセイミヤケのお仕事でも感じましたが、TYMOTEには和のイメージがありますね。

村井:それは意識したことはなかったですね。和といえば2013年に行われた伊勢神宮の式年遷宮で、海外から訪れた人向けに神道について伝える小冊子「SOUL of JAPAN」を制作する仕事もしました。ある日突然、神社本庁の方から連絡があって始まった仕事ですが、ウェブから200万ダウンロードもされたそうで、驚きました。

えぐち:映像の音は一人で作っているんですか? どんな経緯でグラフィックデザインから音の方面に?

村井:僕が一人で作っています。映像もグラフィックも複数やれる人間がいるので、そこを引っかき回すより、違うことをしようと。音楽だと、両方とうまくつながったんです。

えぐち:グラフィックのトーンが違っても、共通するTYMOTEらしさがあるのは、毎回同じ人が音を作っているからかもしれないですね。

森田:そうですね。それから、何かお話を頂いたとき、こういう感じにするのがいいよね、と選ぶ感覚が僕らは似ています。

村井:個々人が自分の考えや好みはありつつ、TYMOTEという架空の存在が何を作るかに皆が気を使っている感じはありますね。空気をすごく読むというか(笑)。

 

個々の経験をフィードバックして
全体をレベルアップする

山口:僕は他のデザイン事務所にも所属しつつTYMOTEに関わっているので、比較的客観的にメンバーに意見することが多いです。いま活動7年目に入りましたけど、最近はそれぞれ自分のやりたいことも見えてきて、TYMOTEで活動しながらも、自分でアパレルブランドを立ち上げる人がいたり、別のクリエーティブチームを立ち上げたりとメンバーは活動の幅を広げています。

村井:全部無理にTYMOTEでやることはない、でもTYMOTEらしさも突き詰めていこうという感じで。チームワークから生まれる表現や、柔らかい気の利いた表現はもっと追求していきたいですね。

森田:それぞれが自分の分野でレベルアップして、TYMOTEにフィードバックさせている感じです。

藤田:皆が感度のいいアンテナを持っていて、共有できているのがいいですね。最近はどんな仕事が増えているんですか?

森田:海外からの仕事も増えていて、最新はシドニーのオペラハウスへのプロジェクションマッピングの仕事をしました。海外の場合Vimeoからコメントやメッセージが来て、そこから仕事につながったりもしています。

山口:Vimeoで一番盛り上がったのは、クラムボン「Rough&Laugh」のリミックスのMVですね。

えぐち:面白い。こういうものを見た世界の人たちからオファーが来るんですね。

森田:JINSのアイウェア「JINS  MEME」をデベロッパー向けにイントロダクションするムービーも最近の仕事です。

えぐち:ビジュアルだけで、分かりやすく、面白く伝えるのが得意ですね。

森田:ムービーで、言葉の説明に頼りすぎるのが嫌なんです。できるだけ情報を削り、直感的に分かるよう心掛けています。

藤田:次に手掛けていきたい領域はありますか?

村井:僕の場合は実写映像です。今年公開した成田空港「ターミナル3」のインタビュー動画では、監督と音楽と編集に挑戦しました。いつもやったことのないことに挑戦していますが、TYMOTEが良いのは、不安を感じたらすぐメンバーに確認できることですね。

森田:映像を作る際にも、すぐ音の相談ができる。いい空間だと思います。

村井:いい意味で学校みたいな場所で、分からないところはみんなで教え合えます。

森田:僕はイッセイミヤケのような、チームで取り組める仕事を増やしていきたい。皆でやれる楽しさ、皆で考えるからこその爆発力を感じましたし、その上で評価もしてもらえた、手応えのあった仕事でした。

村井:僕らは運がいいんです。食えない時もあったけど、先輩や仲間が面倒を見てくれた。おまえら面白そうだからチャレンジしてみろよと仕事をくれて、それで実績ができていった。学生から仕事を始めているので、最初は仕事の取り方も、自分たちに何ができるかも、どう世の中にアウトプットされるのかも分からなかったですから。

森田:だから、毎回オーバークオリティーを目指して…を繰り返してきたんですよね。

えぐち:頼む側も、そうやって持ってきてくれたらうれしいですよね。今日はありがとうございました。

<了>

 

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企画プロデュース:電通イベント&スペース・デザイン局 金原亜紀