DMCラボ・セレクション ~次を考える一冊~ #37

制限があるからこそ素晴らしいアイディアを産み出せる『テレ東的、一点突破の発想術』

ここ数年、テレビ東京が元気です。
過去は平均視聴率が他局に比べ低く、私自身も、以前まではアニメとゴルフとワールドビジネスサテライトが思い浮かぶばかりでした。また、例えば重大事件や事故が起きた際、他局では特番が組まれても、テレ東だけは何事もなかったようにアニメを流し続けていることがネットでネタにされるなど、独特のポジションのニッチなテレビ局というイメージを持っていました。

しかし最近は、随分7chを見る割合が増えました。映画にもなった「モテキ」(ブルーレイ持ってます!)、「孤独のグルメ」などは大好きで、地元の店が紹介された時は大喜び。選挙特番も、池上彰さんの容赦ないツッコミが楽しみで見るようになり、実際に2014年の「池上彰の総選挙ライブ」は民放の選挙特番の視聴率トップになりました。

こんな元気のあるテレ東の企画の秘訣をまとめた本が、今回紹介する濱谷晃一著『テレ東的、一点突破の発想術』(ワニブックス)です。

テレ東的、一点突破の発想術

予算がないなら、アイディアでカバーする

著者の濱谷晃一さんは、テレビ東京のドラマ制作プロデューサーで、「俺のダンディズム」「ワーキングデッド」「太鼓持ちの達人」など、異色のドラマを手がけられています。

僕も帰宅後テレビをつけて、「太鼓持ちの達人」を偶然目にして思わず引き込まれてしまったことをよく覚えています。

そして本書には、テレ東は制作予算が他局より少ないという記載が散見されます。広告会社的に言えば、ネット局数が少なく、視聴率も低め(だった)局には、どうしても獲得できる広告料が少なくなりますし、そうなると必然、制作コストも掛けられません。

「予算○○万円と聞いて、他局のプロデューサーが『そんな予算じゃ番組は作れない!』と言ったのに対して、テレビ東京のプロデューサーは『そんなに予算があったら、使い道がわからない』と言った」(P.14-15)

例えば、「Youは何しに日本へ?」は、成田空港で来日した外国人をつかまえて話を聞き、外国人と日本の関連性を見つけ出しストーリーにする、海外に行かない海外バラエティー。通常の海外バラエティーで掛かる渡航費用はゼロです。その代わり、気の遠くなるような取材の数で稀にある面白いストーリーを見つけ出して番組にしているのです。

常にアイディアを出し続けなければならない人は、出すためのメソッドを幾つも持っています。そんなメソッド、ノウハウのいっぱい詰まったこの本の章立ては以下となっています。

テレ東のアイディア第一主義
アイディアに年功序列はない!
テレ東的、無理やりアイディア量産! 7つの秘訣
企画に「差」をつける7つの「さ」
「ない」から生まれるナイスな閃き
テレ東の注目Pに聞く発想術
偏差値29からのテレビプロデューサー

私も、アイディアの掛け合わせによる企画発想術は、行き詰まった時しばしば使っていたのですが、「テレ東的、無理やりアイディア量産! 7つの秘訣」の章には「なるべくかけ離れた2つのアイディアで掛け合わせる」「片方のアイディアを固定してもう片方にいろいろなものを掛け合わせて発想する」など、より効率的に発想するための大切なコツが記されています。

予算が限られていることも一つの制限ですが、あえて制限やルールを設けた方がアイディアを出しやすくなりますね。

偏差値29から一浪で慶應・早稲田に合格

更に「テレ東の注目Pに聞く発想術」の章では、「モヤモヤさまぁ~ず」の伊藤隆行さんをはじめとする、テレビ東京でヒットを飛ばすプロデューサー6人にインタビュー。

テレビマンとして何をしたいかが分からなかったという、新人時代の伊藤Pが

「誰でも99%は凡人だ。でも1%の自分の中の天才を信じろ」(P.150)

という上司の言葉で吹っ切れた、など、身近な人だから聞けるエピソードが記されています。著者の発想術だけでも素晴らしいのに、そこに更に6人の発想とエッセンス、企画書の書き方・通し方まで知ることができるんですから、この本お得感半端ないです。

そして「おまけ」の最終章は、高校時代偏差値29から一浪で慶應・早稲田に合格したエピソードと、テレ東に合格した「“一点突破”の就職活動術」。

「自分の経験や選択をすべて志望動機に集約させること」(P.201)

これが理想の就職活動のプレゼンだ、というのに深く同意。私がOB訪問で志望動機を添削する時に指導することとほぼ一緒です。

各章の間には、「コラム 愛しのボツ企画」として、著者の考えたボツ企画が紹介されていて、クスッとさせられつつ、こんな企画も検討するんだ、そして諦めずこのような形でも日の目を見せるんだ、という執念に感心。

企画に悩む方は、自分の発想法を一回整理するためにも役立ちますし、発想法以外にも、ポジティブに仕事を進めていくため役立つ考え方・心構え・習慣が至る所にちりばめられています。面白くて一気に読めてしまうので、ぜひ手に取ってみてください。

プロフィール

  • Take 05 6933 pr
    大木 天馬
    株式会社電通 第17営業局

    10年超の営業経験で、食品・飲料からエネルギー・通信、自動車・不動産まで、幅広い業種を担当。IT技術に明るく、情報システム局にて業務支援アプリの開発や、デジタル・プロモーション部門での企画立案、営業局でクライアントの研究技術を統合した近未来ソリューションデモのプロマネに携わるなど。

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