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コンテンツマーケティングの現場からNo.15

コンテンツマーケティングと
マーケティングのデジタル化

2015/09/02

コンテンツの企画をするときに最も重要なのは、語りかける相手を特定すること。ペルソナの設計ともいわれますが、「企業のビジネスにつながる行動を起こしてもらう」ことを目指そうとすると必然的に、ターゲットは広告のときよりも細かく設定し、コンテンツもそれぞれに向けて別々のものを企画していくことになります。

例えば会員制サイトの場合、ブランドのロイヤルティーが高く積極的に参加してくれる会員とたまにプレゼントキャンペーンに応募するだけの会員とに、同じようなコンテンツを発信しているばかりではどちらの満足も得られないケースが出てきます。あるいは、クルマや保険など検討期間の長い商品は、情報収集をしているだけなのか、今すぐ買いたいのか、家族はいるのかなど検討ステージやライフステージによって求めている情報は違うので、コンテンツはできるだけ個別ニーズに合わせてつくるのが理想です。

また、コンテンツマーケティングでは、コンテンツの内容だけでなく配信のことも同時に考えなければなりません。この情報が欲しい人たちはいったいどこにいるのか。届けたい相手をどうつかまえてくるか。PRをする、インフルエンサーなどを活用してSNSでの拡散を狙うといった広告的な方法もありますが、より「ビジネスにつながる行動を起こしやすい」ようにと考えていくと、アドネットワーク、SEM、コンテンツレコメンドサービスなどを活用してターゲットをセグメントしていくことになります。

コンテンツを機能させようとすると企画は、「適切なコンテンツ」であるだけでなく、「適切なタイミング」で「適切なチャネル」で届けることまで合わせて考えていくことになります。

そしてこれを実現しようとした場合には当然、提供すべきコンテンツは膨大な量になりますし、それを管理し、配信を最適化していく作業はとても人間の労働だけでは追いつかず、なんらかのツールが必要になっていきます。またデータや分析も、オウンドメディアの外にどんな潜在層がいるのか、その人たちはデジタル上でどんな行動をしているのかといったところまで掘り下げるとなると自社ウェブサイトの解析だけでは足りなくなっていきます。

こうした方向性は実は、最近マーケティングのデジタル化の流れの中でよく聞かれるキーワード、DMPやCRM、マーケティングオートメーションなどがやろうとしていることと重なっています。

それもそのはずでコンテンツマーケティングには、オウンドメディアからの情報発信、パブリッシングという捉え方がある一方で、ブランドを認知させ、見込み客に転換、育成し、最後は顧客になってもらうというファネル移行のマーケティングプロセスとつながっていく側面があるのです。つまり、コンテンツマーケティングの定義である「有益で説得力のある情報(コンテンツ)を提供し、既存および潜在的な顧客に企業のビジネスにつながる行動を起こしてもらうこと」に立ち返ったとき、コンテンツマーケティングはマーケティングプロセスでコンテンツを活用していく、という作業をも指すことになっていくのです。

そこまで進化したとき、コンテンツはどう変化していくのでしょう。
広告クリエーティブが得意な「話題化」の要素も必要です。メディアの編集者が考えるような「世の中」的な要素も必要です。技術情報など専門家にしかつくれないコンテンツも必要になってきます。

マーケティング課題を踏まえながら、話題化もたくらみながら、狙いたい相手が振り向いてくれることももくろんで、さらにはPDCAの中で見つかってくる多様な改善点も盛り込みながら、最後は受け手に「面白い!」「へえ、そうだったんだ!」「なるほど!」と思ってもらえるような説得力を持つこと。コンテンツマーケティングのコンテンツは、これまでよりずっとハードルの高いアイデアを求められているのだと思います。

誰にどんなコンテンツをどんなタイミングでどのチャネルに出していくのか。どんなにデータがとれるようになっても、マーケティングツールが高度化しても、コンテンツ戦略、コミュニケーションのプランニングは人間の頭がやらなければならない仕事です。そのときには、コンテンツ戦略・企画ディレクションチーム、ウェブ解析のチームに加えて、オウンドメディアの外も含めてデータを計測し、分析するデータアナリティクスのチームと、マーケティングPDCAを考えていくチームが必要になってきます。広い意味でのコンテンツマーケティングの領域では実際どんなトライアルが始まっているのか。次回以降にご紹介したいと思います。