FASHION HACKED #03

「ファッションとテクノロジーはいかにして恋に落ちるのか?」~デコーデッド・ファッション 東京サミット2015 現地レポート~

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    京井 良彦
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター  プランニング・ディレクター

2015年7月、ついに「Decoded Fashion」が東京で開催されました。
米国で生まれたファッションとテクノロジーの融合を目指すカンファレンスイベントの日本初上陸です。いや、長かった。ここまでの道のり。僕は今回プランニングディレクターとして関わらせていただきましたが、まずは意義のある一歩が踏み出せたかと思います。

ファッション業界の著名人とテクノロジー業界の精鋭が集結

そもそもの発起人は、米国で活動していた女性ジャーナリストのリズ・バセラー氏。

今から4年前、ファッションセレブがソーシャルメディアでコーディネートを公開するなどしてファンとつながる一方、ファッション業界はまだファックスを使ってビジネスをしていたそうです。彼女はこのギャップをチャンスと捉え、「ファッション界をテクノロジーでデコード(再構築)する!」という意気込みで、2011年「Decoded Fashion」を立ち上げました。

ニューヨークから始まったこのイベントは、ロンドン、ミラノ、パリへと広がり、ムーブメントへ。日本では雑誌「WIRED」に特集され、その反響から出版社のコンデナンスト・ジャパンが東京に誘致することになったというわけです。

当日、会場となった東京アメリカンクラブでは、朝からムンムンの熱気に包まれていました。参加者は約400人。ファッション業界の著名人とテクノロジー業界の精鋭が集い、これから始まる議論に期待を膨らませていました。

会場内ではまず、ライトアップされたステージに、リズ・バセラー氏とコンデナンスト・ジャパン社長の北田淳氏が登壇。二人のウエルカムスピーチで幕開けとなりました。

スピーカーは、海外のファッション業界からデザイナーのヘンリー・ホランド氏、スキンケアブランド「Rodial」のマリア・ハッツィステファニス氏ら、テクノロジー業界からYouTubeのファッション・ラグジュアリー・ビューティー担当のケイティ・ジェンキンス氏、Googleファッション担当のリサ・グリーン氏ら、日本からは三越伊勢丹グループ代表の大西洋氏、Origami創設者の康井義貴氏、LINEの田端信太郎氏、シモーネ代表のムラカミカイエ氏、『WIRED』日本版編集長の若林恵氏などなど、そうそうたる顔ぶれが30人近く登壇しました。

その内容は、ミレニアル世代(デジタルネイティブ)のインサイトや彼らとのエンゲージメントの手法、Eコマースの可能性や新しい店頭ショッピング体験、デジタルプロモーション最新事例やそれらを活用したブランドのサクセスストーリーなど、多岐にわたって熱く議論されました。

コンペの優勝者は「MemoMi(メモミ)」

またDecoded Fashionには、単なる啓発イベントで終わらず、この場から実際のビジネスを生み出していきたいというこだわりがあります。例えば、目玉のプログラムとして「スタートアップ・コンペティション」というものがあります。

これは、スポンサーとなるファッション企業がテーマを設定し、それに対するソリューションをスタートアップ企業がプレゼンして競うものです。

今回は三越伊勢丹が「テクノロジーを使った新しい店頭体験」というテーマを設定。コンペの優勝者は「MemoMi(メモミ)」というスタートアップが提案したデジタル技術を使用したミラー・プラットフォームでした。

これは鏡に映る顧客の姿をクラウドで録画共有し、その顧客は他の店の鏡でも服を着ずに試着イメージが見られるというもの。コンペ優勝後、実際に三越伊勢丹で展示されることになりました。

さらに、メーン会場の隣には「メンターシップハブ」といって、実際にファッション企業とテクノロジー系スタートアップ企業をマッチングさせるためのブースと商談スペースが設けられました。本国開催でも多くの実績があるのですが、今回も複数の商談が成立しました。

ブースでは店頭での体験のほか、ペーパーウオッチやサングラスなどのウエアラブルなテクノロジー素材による商品開発や、3Dプリンターによるアクセサリーの製造のオペレーションなど、未来を感じさせる展示も多く見られました。

Decoded Fashion Tokyo Summitのこれから

大盛況だった今回の東京開催ですが、個人的には「ファッションの未来はどうなっていくか」という本質的な議論にまで、もっと踏み込みたかったなと思います。もちろん日本では、多くのファッション企業が欧米ブランドの販社ということの限界はありますが、本当にファッションとテクノロジーの融合を進めるならば避けられないテーマでしょう。

現代社会では、人は単なる寒さしのぎで衣服をまとうわけではありません。「自分が何者か」ということを表現する手段としての衣服をまとっています。つまりファッションはスタイルであり、人々にとっての重要なコミュニケーションというわけです。もはや、衣服というより情報をまとっていると言い換えられるかもしれません。

ソーシャルメディアが普及し、人々がネット上で自分を表現するようになっていく中で、ファッションはどのような意味を持つようになるのか。ネットで形成された人格が、リアルで身にまとう情報はどうあるべきなのか。テクノロジーは、そんな本質的なファッションの未来を具現化していくための、あくまで手段だということです。

Decoded Fashionは、来年も東京での開催が予定されています。日本のファッション業界の未来は如何に?次は今回以上に深く多岐にわたる領域に展開させていきたいと考えています。

どうぞ「Decoded Fashion Tokyo Summit 2016」にご期待ください。

プロフィール

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    京井 良彦
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター  プランニング・ディレクター

    1969年生まれ。大手銀行でのM&Aアドバイザーを経て、2001年電通入社。
    営業局でグローバルブランドや官公庁など多岐にわたるクライアントを担当し、現在はソーシャルメディアやデジタル領域を中心とする戦略プランニング、コミュニケーションデザイン、共創マーケティングを手掛ける。東京都市大非常勤講師。著書に『ロングエンゲージメント』(あさ出版)、『つなげる広告』(アスキー新書)などがある。

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