Experience Driven Showcase #25

KDDIの新体験空間、絶景を自由に旅する「Hello, New World. warp cube」!

  • Hosokawa profile
    細川 直哉
    株式会社ドリル エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター/一級建築士
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    後藤 玲子
    株式会社電通 イベント&スペース・デザイン局 エクスペリエンス・テクノロジー部 コミュニケーション・プランナー

8月28日~30日の3日間、六本木の東京ミッドタウンで、KDDIのスペシャルイベント「Hello, New World. warp cube」が開催されました。世界の絶景を飛び回る約10分間の360度バーチャルトリップを体験できる、この企画を担当したドリルのクリエーティブ・ディレクター細川直哉氏と、電通の後藤玲子氏が、イベント終了後にドリル社内で語り合いました。

取材・編集構成:金原亜紀 電通イベント&スペース・デザイン局

 

 

五感を揺さぶる新体験を、すべての人に

後藤:今回は、私がプロジェクトに加わるかなり前から、先行して細川さんが企画を始めていたんですよね。当初どのようにプロジェクトはスタートしたんですか?

細川:KDDIが新しいブランディングとして、ブランドの世界を体験できるプロモーションを実施したいということでお話がドリルに来ました。デジタルネイティブ世代だけではなく、子どもから年配の方まで誰もがauの通信技術とデジタルを使って先進的なブランド世界を体験できるプロモーションをやりましょう!と提案して決定に至ったという感じですね。

後藤:スマホ、通信の力で何か新しい世界、見たこともないようなものを体験できることを、ブランドとして伝えていくということが命題でしたよね。だから、直接的に通信の技術を見せるというよりは、これからもっともっと新しい世界が広がるよということをメッセージする、言わばキャンペーンに近いのかなとも思いましたが。

細川:いや、しっかり通信の技術を使っていますよ。通信を介してスマホを操作することで映像が動くわけだから。スマホの中の加速度センサーはもちろん、映像の登場人物から電話がかかってきたり、映像とシンクロしてスマホのフラッシュが点滅したり。

イベントは、LEDディスプレーで囲まれた高さ6.15メートル、幅8.1メートルの巨大なキューブの中で、世界の絶景を飛び回る約10分間の360度バーチャルトリップを体験するというもの。warp cubeの中で参加者が同時にスマホを振り上げると世界各地の絶景にワープして、ドローンを駆使して撮影した鳥瞰視点の絶景を楽しむことができます。

後藤:撮影は、万里の長城(中国)、レイキャビク(アイスランド)、グレートバリアリーフ(オーストラリア)、富士山など、このwarp cubeでこれまで見たこともない体験をしていただくためだけに、なんと10カ所以上も回ったんですよね。

中国:万里の長城
中国:上海
アイスランド:レイキャビク
アイスランド:クレイヴァルヴァトン湖
オーストラリア:グレートバリアリーフ
オーストラリア:ヒリアー湖
オーストラリア:ワラマン滝
日本:富士山

細川:撮影した国としては3つですけど、その国に行こうとして行ったわけではなくて、夜景と海と雪山と星空と海を…という必要なシーンを全部ピックアップしていって、それを撮りに一番効率よく回れる場所を世界の果てで探すということをしました。中国とアイスランドとオーストラリアというのが一番効率的に回れるなということで、同時並行でチームが飛んで撮影をしてきました。15カ所ぐらいは行っていますね。

後藤:あとLEDで部屋をつくって360度のインタラクティブ映像体験というのも、頭では想像できる話なんだけど、実際はあまりなかったんですよね。

細川:実写でやったのは世界で初めて。今回VR・ヘッドマウントディスプレイにしなかったのは、一人だけの体験ではなくて、友達とか家族とかと一緒にその中に入って、一緒に体験することで体験が深くなるので、それを実現したかった。一人一人が没頭してしまうのではなくて、みんなで「うわあ、すごい!」と体験を分かち合えることが大事だなと思ったんです。

後藤:VR・ヘッドマウントディスプレイって、自分の手すら見えないじゃないですか。そういうすごくパーソナルな体験だから、隣に誰かいても全く関係なくなっちゃう。没入感はすごいんだけど。

細川:今回ウェブでは、360度映像をぐるんぐるん自分で回せるという、映像の後ろも前も見えるというような、新しい試みもやっています。これもかなり「新体験」なんじゃないかな。

auのブランドスローガン「あたらしい自由。」をどう伝えるか

後藤:なぜKDDIがこのイベントをやるべきなのか、というポイントが重要。そういう意味でどうブランドとエクスペリエンスを結ぶのかというのは結構考えましたよね。

細川:auは「あたらしい自由。」というブランドスローガンを掲げています。要はKDDIは、ただの通信会社ではないということ。通信の力、いわゆるスマホのような新しいデバイスは、もっと人間の可能性を広げてくれるものだと僕は考えていて、ただ電話でしゃべるだけ、メールを送るだけ、写真を撮るだけではなくて、これを使ってまだ見たことがない、体験したことがないことを体験できるはずだと信じている。それをこのイベントで具現化したいなと考えました。

スマホを使って、まだ行ったことないところに一瞬にして行けたりすれば、「あっ、この手にいつも持っているこいつは、もっと面白いことができる可能性を秘めたものなんじゃないか!」と皆さんが感じてくれるはずと思ったわけです。

後藤:一般の方にとって、KDDIはごく当たり前に「電話会社」という存在なんだと思いますけど、今回は通信というものをもうちょっと広い可能性として見せたんですね。

細川:そう、そこを広げていきたいと思った。

 

ドローンでの撮影の大変さ、難しさを乗り越えて

後藤:せっかくだから、ドローンを使った撮影についても話していただけますか。

細川:苦労と奇跡の連続ですよ。

後藤:今、ドローンって、都内でも飛ばせないでしょ。しかも今回は世界遺産とか自然遺産みたいなところが多くて。

細川:そう。撮影許可が下りないところもたくさんあった。

後藤:まず、飛ばせないところが多いでしょうね。落ちたらどうするんだと言われて。

細川:ドローンは強風が吹いたら操作のしようがないんです。

後藤:だから、最初の編集のときは、世界が常に揺れてましたね。

細川:そう。その後、1コマ1コマにスタビライザーをかけて、きれいにシームレスに飛ぶように映像を加工した。

細川:それにあんな高解像度のLEDは日本にはない。まずそれを持ってくるところから始めなきゃいけないし、そこにどんな映像を映したら一番、人間の体感として気持ちいいのかというシミュレーションをしなきゃいけないので、僕らは実際に、青山に大きな部屋を借りて、そこに一回実験場をつくっているんです。

後藤:1カ月以上もあれやこれや、実験室での試行錯誤が続きましたよね。

細川:映像をつくっては、そこに持ち込んで実際に中に立って、ちょっとでも揺れたら本当に気持ち悪くなるなとか、どういう動きが一番人間にとって気持ちいい、ジャンプしている感じに見えるだろうかとか、そういうのを決めてから本番の撮影に行かなきゃいけないから。

行ったら行ったで、ドローンに360度撮影するために6台カメラを積んで飛ばすんですが、また絶景というところはどこもかしこも風が恐ろしく強いわけですよ(笑)。風との戦い! 風があればドローンは揺れるわけで。

後藤:結構リアルに、映像見てても揺れるんだよね。

細川:揺れた映像の中に入るとものすごく気持ち悪い、人間の感覚としては。
なので、ドローンをなるべく揺らさないで飛ばす。揺れてしまったものは後でどうやって補正するかというところまで計算してやる。あと、軌道ですね。人間がジャンプして飛んでいくように見えるように、こういう軌道で飛ばさなきゃいけないとか、そういうことを全部シミュレーションして。

なおかつ僕らは、テレビ番組制作みたいに「いい絵が撮れるまで帰ってこなくていいよ」みたいに2カ月も3カ月も与えられているわけじゃないじゃないですか。1カ所につき1日か2日で撮る過酷なスケジュールだからね。

スケジュールに限りがある中で、風と戦いながら天気と戦いながらやらなきゃいけないというのがすごく大変だった。何日もボートに船中泊したり雪山で遭難しかかったり万里の長城を機材かついで何キロも歩いたり。編集では6台のカメラ映像をつなぎ合わせて切れ目の無い360度の映像に仕上げなければいけないのですが、つなぎ目が不自然にならないように見せるのがものすごく大変なんです。それを1コマ1コマ全部やって。

 

 

 

CGでつくってVR・ヘッドマウントディスプレイで体感するやり方だったら簡単なんだけど、僕らは参加者を本当に世界の絶景に連れていってあげたいと思っていたので、実写にこだわった。実写でこの規模でやったのは世界でも初めて。

映像が完成した後、今度はそれをスマホの動作に連動させてインタラクションを構築しなければいけない。スマホをみんなが振ったらジャンプする、みんなが振らなかったらジャンプしない。どれぐらいの量の振りを合算したらジャンプすることにしようとか、スマホを振ってから0点何秒後にジャンプするのが一番気持ちいいとか、着地した瞬間どうなるのかの検証も難しくて。とはいえ締め切りは近づいてくるし、warp cubeもつくらなきゃいけないし、テストもしなきゃいけないし…(笑)。プロフェッショナルたちが集結して毎晩徹夜で試行錯誤して、なんとか間に合った奇跡のプロジェクトです。

New World、新体験空間の新たな展開を目指して

後藤:お客さまにも地元の方々にも関係者にもよく言われたけど、3日で終わっちゃうなんて、ホントにもったいないって思いました。ひとつのwarp cubeの中での体験だから、それごと別の場所で、ポップアップ的に再現できるといいのに。自分が暮らす街中に、時空を超えるトビラが忽然と現れるっていいじゃないですか。

細川:warp cubeさえあればね。ただ、warp cube自体が完全に建築物なんですよ。トラックの荷台に積んで、ぴゅーっと行ってぽんと置くとか、そんな簡単じゃないんですよね。

後藤:そこのハードルも今回はものすごく高かったですね。たとえ3日間とはいえ、建築物は建築物。バーチャルな体験のための空間であっても、建築はリアルですからね。

細川:今回はauのタグラインの「あたらしい自由。」を掘った。自由って何だ?ということを。見たことがないものが見えること、感じたことがないことを感じることが自由なんじゃないかと。それを若者だけではなくて、子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで伝えるには、難しかったらだめ。テクノロジーは一部の人のためのものではなくて、全ての年齢層の人が何の不自由もなくシームレスに、簡単に使えることが本当の自由だから。

後藤:そうですね。参加者のアクションとしてはシンプルで、スマホを振るだけ。あえて限りなくシンプルにしている。参加した方も、すごい技術ですね、というコメントではなくて、旅行に行きたくなったとか、非常に素直な気持ちになったとか。つまりこれって、裏を返せば、技術がその存在を感じさせないほど当たり前に使われてた、という証しかも。

細川:長蛇の列でしたからね。

後藤:しかも雨の中で。

細川:なるべく早く、次の「New World」に皆さんを連れていきたいと思っています!

 

プロフィール

  • Hosokawa profile
    細川 直哉
    株式会社ドリル エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター/一級建築士

    1970年生まれ。早稲田大学大学院で建築意匠(デザイン)修了。
    クリエーティブ、プロモーション、メディアの全てに精通したクリエーティブディレクター。
    独特なアイデアと実施力で海外でも評価が高い。
    au「Hello, New World.」、ポカリスエット月面到達プロジェクト「LUNAR DREAM CAPSULE PROJECT」、世界最小プロジェクションマッピング「RICE MAPPING @ MILANO SALONE」、日清×マンチェスターユナイテッド「SAMURAI IN MANCHESTER」、Google「YouTube MUSIC WEEK」など、消費者の「体験」を創造・拡散する手法で多くのキャンペーンを成功させている。 
    1995年に電通に入社後、CR局、OOH局、プロモーション事業局、CDCを経て、2011年にドリルのチーフ・クリエーティブ・オフィサーに就任。
    与えられた時間と予算の中で最も劇的にクライアントニーズを解決するというミッションを実行するために組織された少数精鋭のソリューション集団を率いている。
    クリオ、アドフェスト、スパイクスアジアでのグランプリをはじめ、カンヌライオンズ、ニューヨークADCゴールドなど数多くの国内外の広告賞を受賞。2010年ADFEST、2011年Cannes Lion、2012年ニューヨークフェスティバルにてアウトドア部門審査員を歴任。
    東京コピーライターズクラブ会員。一級建築士でもあり、自ら建築デザイン・空間プロデュースを手掛けている。

  •  j6a4601 b2 gotoreiko
    後藤 玲子
    株式会社電通 イベント&スペース・デザイン局 エクスペリエンス・テクノロジー部 コミュニケーション・プランナー

    エクスペリエンスを起点とした、主にイベントやスペース領域におけるコミュニケーション開発業務に従事。

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