ろーかる・ぐるぐる #66

広島の「ワルのりスナック」

sashimi
鯛の松皮造り
シルバーウィークは香川県高松市へ。朝起きてうどんをすすって、海辺を散歩。ちょっとパソコンで仕事して、軽くテニス。晩は地酒と瀬戸内海の白身魚で気分良くなっちゃう、という東京ではなかなか味わえないぜいたくな毎日の繰り返し。本籍が港区新橋だったのでいわゆる故郷がなく、正直なところ「東京以外では生活なんてできないよね」と思っていたぼくにとってこの町との出会いは大きな転機になりました。ローカルでの生活がほんのわずかですがイメージできるようになったからです。
sunset
瀬戸の夕べ

さて。前回ご紹介した通り、明治学院大学の経営学特講で期末試験に出題したのは、香川と同じく瀬戸内の幸に恵まれた広島の海苔屋さんに関する問題でした。


 

広島で焼き海苔、味付け海苔などを加工・販売する「丸徳海苔」。最近、なかなか海苔が売れないなか「もっと多くの人に楽しく海苔を味わってもらいたい」というビジョンのもと新商品を開発することになりました。
さて、どうすればよいでしょう?


学生の皆さんに考えてもらったのは、まさにぼくが取り組み、悩んでしたテーマそのもの。この「正解」がない問いについて、ぼくが仲間と一緒につくった「解答」をご紹介すると…。


丸徳海苔の主力商品である「広島かき味のり」は厳選された原材料など競合に比べ品質は優れているし、多くの観光客が訪れる広島という立地は大きなチャンスだが、「牡蠣」を使うことだけが土産品としての特徴なので類似品に対して独自のポジションを獲得するには至っていない。

そこでユニークなお土産を探している観光客をメインターゲットに「楽しく海苔を味わってもらう」というビジョンを実現するためには「味付け海苔というカテゴリーに対する関心の低さ」が課題であると考えた。そしてそれを解決するためのコンセプト(アイデア)として「一見するとコワイけど、実はやさしい広島の海苔スナック」という方向性を意味する「こわもてスナック」を設定した。

この背景には大きくふたつの要素がある。
ひとつは長年事業を支える専務のインタビュー。「ポテトチップスを売っている大手スナック菓子屋さんは広島が発祥でね、前の社長さんが幼なじみなの。その人が『子どもは味付けのりを食べると止まらなくなっちゃうでしょ? あれは脅威なんだよなぁ』と言っていたわ」という発言から「ヘルシースナック」という方向性を考えた。

もうひとつは「広島の方言はコワイ!?」という個人的な経験をベースにしている。昔の映画の影響があるのか、どんなにソフトな人の言葉でも「○○××じゃけぇ」という語尾だけで迫力を感じる。実際、ヒアリングをすると広島に行ったことがある人にとって、その方言が思い出になっていることも少なくないようだ。そこで「方言を、お土産に」というアプローチに可能性を見いだした。そしてこのふたつから導き出した「こわもてスナック」をコンセプトに具体策を開発することにした。

okonomiyaki
お好み焼き味
lemon
瀬戸内レモン味

商品名は「ワルのりスナック」。コンセプトにちょっとイタズラっぽいニュアンスを込めた。

パッケージには、実際の海苔スナックで作ったこわもてな顔とともに「このガンボタレ、これ買ぉてくれんのんか?」(標準語「ねぇぼく、これ買ってくれるとうれしいな。」は裏面に記載)、「われ、なにしよるんならぁ」(標準語「How do you do?」)など、全6バージョンの印象的な広島弁を紹介。そして白い紙をはがすと中から「ホントはやさしい広島の味」と優しい笑顔が出てくるようにした。

中身は低カロリーな海苔スナックで、味付けは広島名物「お好み焼き味」と、最近話題の「瀬戸内レモン味」とした。

新しい広島土産として、あるいは郷土を愛する広島の方々が安心して子どもに与えられるヘルシースナックとして、市場に定着することを目指す。


creative team
パッケージをつくったアートディレクターの黒岩さん(右)と高橋さん(中央)、コピーライターの福岡さん(左)
 
creative team2
中身をつくった丸徳海苔の保田さん(左)とプロデューサーの渡部さん(右)

答案風に書いたら、なんか読みにくい文章になっちゃいましたが、こんな気持ちを込めて「ワルのりスナック」は本日発売です。学生さんが答案を提出するとき以上にドキドキしながらお客様の反応を待ちます。もし広島にいらっしゃることがあれば、是非!手に取ってみてください。(通販はコチラ

さて、次回は「ワルのりスナック」のパッケージでもお世話になった世界を舞台に活躍する書道家、八戸香太郎さんのお話をご紹介します。

どうぞ、召し上がれ!

プロフィール

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    山田 壮夫
    株式会社電通 第1CRプランニング局

    1969年生まれ。アイデアを核として広告キャンペーンはもちろん、店舗開発からテレビ番組の製作まで手掛ける。特に最近は全国の地方新聞社厳選お取り寄せサイト「47CLUB」と連携してローカルにおける商品開発作業にチャレンジしている。2009年カンヌ国際広告祭(メディア部門)審査員。慶應義塾大学(メディア・コミュニケーション)、明治学院大学(経営学)非常勤講師。著書に『〈アイデア〉の教科書 電通式ぐるぐる思考』(朝日新聞出版)。

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