世界最大級のデジタルマーケティング・カンファレンス「dmexco」に行ってきた(前編)

世界最大級のデジタルマーケティング・カンファレンス「dmexco」が、ドイツのケルンで9月16、17日に開催された。プラットフォーマー・メディアやメガエージェンシー、グローバル企業など業界のVIPが一堂に会し、海外の業界紙がカンヌライオンズとも比肩して位置付けるこの祭典の、日本での知名度は決して高くない。内容がアワードや展示ではなく、主に商談やネットワーキングの場であることが報道の少ない一因だろう。今回現地を視察した、電通 メディア・コンバージェンス推進室の河野哲氏からのリポートを紹介する。


dmexco

 

「dmexco」というアドテク(広告テクノロジー)のイベントに行ってきました。ドイツのデジタル会社のヘッドの方やロンドンの人たちが、昨年くらいから、ぜひ見に来た方がいいイベントだ、と言ってくれていたのですが、日本のメディアにはあまり取り上げられることもないので、詳細はよく知りませんでした。今回は2日間開催のうち、半分の1日しか参加しませんでしたが、面白かったことや驚いたことを10位から1位のランキング形式で紹介したいと思います。

10位:ここはメキシコ?

発音は「ド メキシコ」のように聞こえて、またそのようにイメージしておくと覚えやすい名前なのですが、メキシコとは一切関係ありません。Digital Marketing Exposition &  Conferenceの略で、dmexcoなんだそうです。あれ、ここってメキシコシティー?というジョークがたくさんのスピーカーからお約束のように出てきてました。でも、ドイツのケルンです。

9位:急成長のアドテクイベント

dmexcoは、世界最大のゴシック様式大聖堂で有名なドイツのケルンで9月に開催されるイベントで、今年で7回目です。ここ数年で急成長していて、展示会場もカンファレンス会場も超巨大、この種のイベントでは世界最大規模でしょう。たくさんの基調講演、パネルディスカッション、プライベートセミナーが同時並行で開かれていました。今回の参加者は2日間で合計4万3384人(3分の1が、ドイツ以外の国からの参加者)とのこと。

内容的には、ちょうど、ニューヨークの「アドテック」(もともとはニューヨークですが世界展開していて日本でも関西9月、東京12月に開催するイベント)を巨大化した欧州版のイベント。デジタルに詳しい方には、アドテクの「カオスマップ」をそのまま展示会場に広げたようなイベントです、といえば分かるでしょうか。そのアドテク関連会社(ベンチャー企業からIBM、オラクル、アドビ、セールスフォース、アクセンチュアなどまでも含みます)、広告会社、トラディショナルも含むメディア、そして広告主の幹部Cクラス(CEO、CMOなど)が一堂に会する貴重な機会となっているようです。

8位:4大イベント

ロンドンやドイツの人に聞いたところによると、どうやらここ数年で、

1月 CES(国際家電ショー、米国・ラスベガス)、

2月 MWC(モバイルワールドコングレス、スペイン・バルセロナ)、

6月 カンヌライオンズ(フランス・カンヌ)、

9月 dmexco(ドイツ・ケルン)、

の4つが、欧米のデジタルマーケティング、メディア、テクノロジー分野の4大イベントと見なされるようになってきているようです。それぞれ歴史やフォーカスは異なるイベントですが、タイミングや場所なども関係したのか、独自の変化発展を遂げながら、4つが重なり合う部分も大きくなっているといわれています。

7位:ブースは空っぽ

最先端のアドテクイベントと聞けば、誰しも映画に出てくるような展示やデモを期待しがちですが、実際にdmexcoの展示会場に行ってみて、びっくりしました。ブースにはほとんど展示らしい展示がありませんでした。1割くらいのブースでちょっと目新しいアトラクションがあり、例えば、オキュラスを使ったデモや、動画コンテンツの紹介として料理教室デモ、高精細カメラを使ってブース内のスタジオで撮影した動画をその場でYouTubeにアップするサービスをグーグルのブースの隅っこでやっていたりはしました。しかし、大半のブースは、椅子とテーブルと食べ物、飲み物が用意してあるだけの、ただの場所。ある時は商談の場所、ある時はその会社の人たち同士の待ち合わせ場所として活用されているようでした。

6位:ケルン中が朝まで大騒ぎ

残念ながら1日目に参加できなかったので、実際のそれには参加していないのですが、1日目は夕方から展示会場をはじめ、ケルン各地で同時多発的にいろいろな会社主催のパーティーが始まり、元気な人は朝までパーティー会場をはしごして、いろんな人と交流するのがdmexcoの夜の過ごし方とのこと。ロンドンからこの「夜のdmexco」を主目的にして参加していた友人もいました。こういった欧米のパーティー/カンファレンス文化は、普通の日本人にはなかなか入りにくい部分ではありますが、次回はこちらもぜひ体験したいと思います。

5位:「GRPって何?」

もともとdmexcoの起源がアドテクイベントだからなのか、大ホールでのパネルディスカッションで「The Broadcast Future」(放送の将来)というテーマで話をしている中で、GRP(Gross Rating Point)に話が及んだ時に、モデレーターがGRPの意味を誰にでも分かるように丁寧に説明していたのが非常に印象的でした。RTB、DSP、Ad Exchangeといった単語については、誰も何も説明せず、飛び交っていたのですが…。

4位:自動車業界のプレゼンス

今年1月のCES同様、アドテクイベントのdmexcoにも自動車業界の存在感がありました。スマホやタブレットのアプリと自動車のダッシュボード、扉の開閉などを連携させるプロトタイプの展示や、ドイツということもあるのでしょうが、BMWが2日目の基調講演でBMW 7シリーズの発売前先行公開を行い、講演会場の隣接ブースには新車が3台並んで報道陣のフラッシュを激しく浴びていました。今回の7シリーズから標準装備される、車から降りて、鍵による操作で車を自動駐車させる機能が実物でデモされており、非常に大きな注目を集めていました。

3位:マーティン・ソレルの基調講演

基調講演で登壇したのは、世界首位のメガエージェンシーWPPのトップ、マーティン・ソレル氏。30分のスピーチでWPPの置かれた現状、将来展望を非常に明快に説明。まだ見てない業界関係者は必見です。さわりを紹介しますと、

・WPPの将来戦略を一文で言うと、「成長市場、デジタル、データ管理、ホリゾンタリティー」(ホリゾンタリティーはWPPの言葉で、クライアントに対してグループ内ブランドの垣根を越えて最良のチーム、人材を提供すること)。

・従来型メディアの新聞やテレビにおける生活者のエンゲージメント(関与度)は、インターネット領域における生活者とのエンゲージメントよりも大きい。われわれはうまく、バランスを取らなければいけない。 など。

2位:DANの大活躍

若干手前味噌になりますが、電通グループの海外ネットワークである電通イージス・ネットワーク(DAN)の方々は、幹部から現場までいろいろなところで大活躍をされており、dmexcoでの際立ったプレゼンスを感じました。ドイツ・ポスタースコープ(屋外広告専門会社)のdmexco時期に合わせたケルン市内のデジタルサイネージ活用や、ハンブルクで始まるビルの表全面をLEDにした新たな取組みの紹介は大きな反響があったとのこと。DANのブースでは、アイソバーが企画・制作した脳波を活用したプロトタイプが大人気で、長蛇の列を作っていました。

大ホールのステージにもスピーカーとして、カラからグローバルプレジデントのダグ・レイさん、DANのラース・ボー・イェーブセンさんなどが登壇し、クライアント・メディア・代理店との丁々発止のやりとりをしていました。私が最も感激したのは、DANの欧米CEOのナイジェル・モリスさんがモデレートしたThe Women’s Leadership Table: Diversity, New Leadership & New Talents のパネルディスカッションです。パネリストは、ユニリーバ、フェイスブック、OMDの女性幹部3人でした。1日目だったので参加できなかったのですが、現地で色々な人からあれは良かった、といううわさを聞いて、後日ネット上で拝見したのですが、素晴らしいディスカッションになっていました。欧米と日本との文化の違いを最も感じる部分ですが、こんなセンシティブな内容を媒体社やクライアントと大観客の前でディスカッションするなんて。日本だと司会には久米さんか古舘さんレベルを連れてこないと無理だなあ、と思ってしまいます。

1位:「データ」とその先にあるもの

DANの関係者や知り合いになった人に今年のdmexcoのポイントを一言でいうと何になるの?という質問を繰り返して、最も多かった回答は「データ」でした。データをめぐる議論が2日間のイベントの根底にある、という見方をする人が多かったことは、日本にいて日々感じていることがそれほど世界の最先端とずれてはいないのだな、ということを再確認する意味でも、また我々の進むべき方向を再認識する上でも、腹落ちするものでした。

2日目に参加したデータに関するパネルディスカッションでのポイントを少しだけ、ご紹介します。

・「より多くのデータ」が必要といっていた時期から、今は「正しいデータ」を求める時期に移行。実際、世の中にあるデータの5%以下しか活用されていない。

・ここ数年間、アドテクの進歩によりターゲティング精度を増すことに業界は血眼になってきた。ところが、ターゲティングの精度が上がって、ターゲットとなる個人と千載一遇のコミュニケーション機会を得た時に、何をやっているかというと、誰からも必ず嫌われそうなコミュニケーションの手法、内容を送ってしまっている(ストーカーのように間違ったコンテンツを何度も送っている、あるいは未成熟なクリエーティブ)。

・次にわれわれがフォーカスしなければならないことは、精度の高いターゲットに対して「マス向けのクリエーティブ」ではない、データに基づいた効果的な個人向けのクリエーティブ手法を開発しなければならない。 など。    


 

次は、dmexcoブース、カンファレンス、スポンサード、イベント運営への参画など多岐にわたって一際高いプレゼンスを見せた、DANの活動を紹介する。

 

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