ワカモンのすべて #48

今年はどうなる?ハロウィンに熱狂する若者たち その背景とこれから

  • Suzuki kensuke profle
    鈴木 謙介
    関西学院大社会学部准教授
  •                3
    奈木 れい
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

近年、日本で定着してきたハロウィン。
これまでのファミリー向けイベントとしての盛り上がりだけではなく若者たちの熱狂度は急速に増しており、コスプレで街を歩く姿は一種の社会現象となっている。若者たちは、なぜここまでハロウィンに魅了されるのか。そして、今年はどのような展開が見られるのか。
若者の行動を研究する関西学院大社会学部・鈴木謙介准教授と、ワカモンの奈木れいさんが対談しました。

 

若者たちがリアルを求めている理由

奈木:若者たちの中で、ツイッターやフェイスブック、インスタグラムといったSNSの流行・普及は続いています。今年4月の電通総研「若者まるわかり調査2015」では、若者はツイッターのアカウントを複数持っていて、交流グループごとに使い分けているという結果も出ました。
その一方で、ハロウィンなどのリアルイベントが近年盛り上がっています。若者がリアル志向を強める背景にはどんなことが考えられるでしょうか。

鈴木:若者たちは、SNSを中心としたネットのコミュニケーションに飽きたわけではなく、それを前提にした上でリアル志向になっていると思います。というのも、今の若者の人間関係は「引き算」。昔は、仲良くなってから連絡先を渡す「足し算」の関係構築でしたが、今は、最初にLINEなどで連絡先を聞いて、そこから本当に仲良くなっていいか判断する形です。
ツイッターアカウントの複数持ちも、行動範囲や趣味で関係性をスクリーニングするためですね。

そういった「引き算」の関係構築において、最も都合が良いのがリアルイベント。「一緒に遊ぼう」と誘うのは、関係を絞り込む作業として適しているんです。ネットをやめてリアルイベントに向かっているのではなく、あくまでネット化した関係の上に起きている現象です。

奈木:さらに若者の関係で興味深いのは、「家に呼んで飲むのはこの友人」「ハロウィンに行くのはこの友人」と、行動ジャンルに合わせて相手を変えることです。それも無意識に。
昔は、仲の良い子と全方位に楽しみを共有していましたが、今は相手を使い分けていますよね。

鈴木:これもネット化した関係の影響でしょうね。SNSでは、自分が本来届けたい相手とは別の人から反応が来ることがあり、関係の混在が多々起きます。若者はその迷惑さを痛感している。
だからこそ場に合わない人、例えばキャラに合わない人をハロウィンに連れて行きたくない。
これはジャンル違いを避けるための気遣いでもあるんです。

 

ハロウィン熱狂の背景と今年の予測

奈木:そんな中で、ハロウィンへの若者の盛り上がりは目覚ましいものがあります。はやり始めたのは数年前からで、六本木や渋谷では数万人単位で参加するなど、盛大なイベントになりました。
ここまで若者が熱狂するのはなぜでしょうか。

鈴木:現在のハロウィンが流行したのはここ5年くらいの間。その期間に起きたのは、スマートフォン(スマホ)とSNSの普及です。
これにより、ハロウィンは「コスプレイベント」として三つの大きな価値を持ちました。コスプレをした人たちが「一つの場所に集まる」、友人と「自撮り写真を楽しむ」、そして、良いコスプレをしている人を見かけたら写真撮影をお願いして「コミュニケーションを図る」。
これを可能にしたのが、スマホとSNS。それがハロウィンの熱狂につながったと思います。

奈木:そういった流れを踏まえて、今年のハロウィンはどうなると考えられますか。

鈴木:先ほどの「引き算」の話と合わせて、最近の若者たちは、自分と友人との関係性を確認することを求めています。たとえ一緒にいても、SNSで他の友人とやりとりできるため、それだけでは“仲の良さ”を証明できない。
そこで、「一緒に◯◯をする」という状況をつくりたがります。これを私は「独占」と呼んでいて、例えば若者がわざわざ友人に電話をするのも、相手を独占できるから。

そういう意味では、ハロウィンも、リア充ぶった大人数の集まりから、「友人の独占」を証明する機会になっていくのではないでしょうか。つまり、それが大規模なイベントであったとしても、本当に仲の良い2、3人で参加し、楽しむ形です。
あと私が思うのは、コスプレをして街に繰り出した後、若者たちがそこから何をするか。コスプレをして自撮りするだけなく、その上に何か目標やストーリーを設定してあげると、さらに盛り上がるのではないかと思います。

奈木:それでいうと、今年はハロウィンラン(ハロウィンをテーマに、コスプレをして参加するマラソンイベント)なども行われますよね。コスプレをした上で、「走る」という目標が付加されていると思います。

鈴木:それとともに、もっとカジュアルで参加しやすいイベントも増えるといいですね。例えば、有名ショップの前で、プロのカメラマンがSNS用の写真を撮ってくれる企画とか。そういった目標やストーリーが加わると、若者は喜ぶのではないでしょうか。

プロフィール

  • Suzuki kensuke profle
    鈴木 謙介
    関西学院大社会学部准教授

    専攻の理論社会学に基づいた独自の社会理論を展開。若者の行動や心理を研究する。
    著書に『ウェブ社会のゆくえ〈多孔化〉した現実のなかで』『カーニヴァル化する社会』など。

  •                3
    奈木 れい
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

    2011年電通入社。ペット産業の創造を目的としたプロジェクト「Think Pet Project」のメンバーとして活動中。また、「若者研究部(電通ワカモン)」の研究員として、学生との関係性づくりや開発を推進。プロジェクトマネジメントから、コンセプト・戦略立案、商品開発やスペース開発、そして新規事業開発など、多様な領域での作業に携わる。共書に「若者離れ」(エムディエヌコーポレーション・2016年)。

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