ワカモンのすべて #49

JKシンガーソングライターに学ぶ、若者に響く表現(前編)

  • Daisuki asya yori profile
    井上 苑子
    シンガーソングライター
  • Yoshida
    吉田 将英
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター フォーサイトディレクター

11月4日にファーストシングル「だいすき。」をリリースした、現役女子高生シンガー・ソングライターの井上苑子さん。
中高生を中心に流行中のライブ配信サイト「TwitCasting」(通称:ツイキャス)や動画アプリ「MixChannel」で人気を誇り、女子高校生100人を対象に「これからくる!と思う女性ソロアーティスト」という調査(9月末実施/ING調べ)で1位にも輝きました。

彼女の表現はどうして若者の共感と反響を呼び起こしているのでしょうか。その秘密に迫るべく、電通若者研究部代表の吉田将英さんが対談しました。

(左から)吉田将英氏、井上苑子氏
 

 

普通の男の子との恋を妄想して書いた新曲

吉田:さっそくですが、井上さんの新曲「だいすき。」の30秒動画が1日20万回以上も再生されるなど、大きな話題を生んでいますよね。新しいファンの方も増えたと思いますが、どんな反響が多いですか?

井上:歌詞にめっちゃ共感できるとか、声が好きっていう言葉を頂けることが多いですね。すごくうれしいです。

吉田:過去のインタビュー記事で歌詞の書き方について話しているのを拝見したのですが、かなり妄想しまくるそうですね。街で見かけた人やすれ違う人について、「この人はどんな恋をしているのかな」とか「持っている包み紙はプレゼントかな」と考えを巡らせて、それが歌詞の題材になっていると。

井上:そうなんです。もともと妄想癖があるんですけど、最近は1人だけでなく3人組で歩いている人たちに対しても「どんな関係なんやろ?」って考えるようになりました(笑)。

吉田:妄想のアプローチが増えたんですね(笑)。今回リリースした「だいすき。」も妄想をベースに?

井上:めっちゃ妄想しました。でも、いつもはすごくかっこいい男の子というか、理想の男性像を描くことが多いんですけど、今回は普通の男の子、身近にありそうな恋をイメージして書いたんです。

吉田:なるほど。その視点って、マーケティングにも通じる部分があると思うんです。例えば、僕ら若者研究部はどんな若者がいて、彼らがどんなことを考えているのかを研究しているのですが、やっぱり自分が若者だったころから離れていくにつれて、若い人たちの気持ちが分からなくなってくるんですよ。

それは、若者にモノやサービスを提供したいと考えている企業の人たちも同じ。自分が高校生のときの気持ちは分かるけど、それは何年も前のことなので。極端な話、今若い人向けのCMで「チョベリバ」なんて言葉を使っても共感は得られませんよね。

井上:そうですねぇ、使わないですね(笑)。

吉田:だから、僕らも若い人たちのこと、普通の男の子や女の子のことをたくさん妄想するんです。そのアウトプットが井上さんの場合は曲であり、僕らは広告や商品だったりする。そういう点でも、若者の共感を得ている井上さんの表現方法は、僕らにとってすごく参考になります。

 

私が視聴者だったら、「ありのまま」の女の子を見たいと思った

吉田:井上さんの絶大な人気を象徴するのは、やはり累計視聴者数が200万人を超えるツイキャスですよね。ツイキャスのライブ配信は路上ライブと違って相手が見えないじゃないですか。ここでも妄想というか、具体的に届ける相手をイメージしていたんですか?

井上:ツイキャスは基本的に同世代の人が見ていると思ったんです。なので、もし私が視聴者だったらどんな動画を見たくなるかを考えました。私の場合、女の子の配信だったら作り込んでいるものよりも、ありのままでやっている人の方が好きだし面白いと思っていたので、自分もありのままでやろうと。そうすることで私がどんな人なのかを分かってもらえるし、友達みたいな感覚で親近感がわくと、ライブにも遊びに行きやすくなるかなと思って。

吉田:ともすると作戦に走るというか、再生数を伸ばすために作り込みたくなりそうだけど、そういう考えは頭をよぎりませんでした?

井上:う~ん。私は「リツイートお願いします〜」ってつぶやくぐらいでした(笑)。だから、いきなり再生数が伸びたときはびっくりしましたね。

吉田:「ありのまま」というのは、けっこう大事なキーワードだと思います。例えば、CMも一昔前はお金を掛けてキレイに作り込む時代でしたが、最近は狙っている感じや広告っぽさが見透かされるというか、ただ作り込んで一方的に「これは良いものです」とうたうだけのコミュニケーションは響かなくなってきている印象なんです。

井上:昔はそうじゃなかったんですか?

吉田:情報が少ない時代は、「大ヒット」と言われたらそれを素直に受け取る人が多かったかもしれない。でも、いまは「本当に大ヒットなのか?」と思ったら検索できますよね。本当に大ヒットしているとしても、自分が好きかどうかは別なので、好みが合いそうな人たちの評判を調べることもできる。

だから、狙っている感が出ているものは疑って見る傾向にある気がします。「ステマ」なんてのは、その最たる例ですよね。この空気感は広告のコミュニケーションだけでなく、友達同士やSNS上のコミュニケーションにも通じるものがあると思うんですよ。

井上:それはめっちゃ分かります。Instagramなんかは一瞬でその人の好きな物事や生活感が伝わるじゃないですか。でもかっこいい雰囲気になり過ぎたりオシャレな感じが出過ぎると、わざとらしいと感じる人もいるんやろうなとか、私はけっこう考えてしまいますね。

吉田:そのさじ加減ってすごく難しいと思うんですよ。狙っている感じが出ちゃうとダメだから、狙ってさりげなく出すみたいな。僕たちからすると、若い人たちはそのバランス感覚を自然に身に付けている気がするんです。ちなみに井上さんのInstagramはどうですか?

井上:私の場合は思うがままに投稿してグチャグチャになって、あとで「これは統一感がないなー」と思ったものを消しています(笑)。

吉田:そういう肩の力が抜けている感じ、作為のなさが井上さんのスペシャルな部分なんだと思います(笑)。

井上:ありがとうございます! うれしー!

※後編は12月2日(水)公開
※こちら、WEGO×ワカモン「NIPPON YOUTH STUDIO」井上苑子さんの記事も是非ご覧ください!

 

【ワカモンプロフィール】

電通若者研究部(通称:ワカモン)は、高校生・大学生を中心にした若者のリアルな実態・マインドと 向き合い、彼らの“今”から、半歩先の未来を明るく活性化するヒントを探るプランニングチームです。彼らのインサイトからこれからの未来を予見し、若者と 社会がよりよい関係を築けるような新ビジネスを実現しています。現在プロジェクトメンバーは、東京本社・関西支社・中部支社に計14名所属しています。ワカモンFacebookページでも情報発信中(https://www.facebook.com/wakamon.dentsu)。

 

プロフィール

  • Daisuki asya yori profile
    井上 苑子
    シンガーソングライター

    1997年生まれの現役女子高生シンガー・ソングライター。
    3歳の時に生まれて初めて口ずさんだ曲はBON JOVIの「It’s My Life」。
    初めて作った曲は、家の前にダンボールに入れて捨てられていた子猫を、周りの大人が「かわいいかわいい」と言いながら誰も保護しようとしない様子をみて書いた「こころ」。
    11 歳から大阪の心斎橋で路上ライブを始め、手売りCDを1万枚売って上京。
    その後本格的にツイキャスを始め、現在、視聴者数が累計200万人を突破。2015年7月にリリースしたメジャーデビューミニアルバム「#17」のリード曲「大切な君へ」がLINE MUSICで250万再生、YouTubeでも150万再生を突破。大型夏フェスROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015 に出演した他、9月には主演映画「私たちのハァハァ」が公開。

  • Yoshida
    吉田 将英
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター フォーサイトディレクター

    2008年慶應義塾大学卒業後、前職を経て2012年電通入社。
    戦略プランナー・営業を経て、現在は経営全般をアイデアで活性化する未来創造グループに所属し、さまざまな企業と共同プロジェクトを実施。
    また、10〜20代の若者を対象にしたプロジェクト「若者研究部(電通ワカモン)」代表を兼務し 消費心理・動向分析と、それに基づくコンサルティング/コミュニケーションプラン立案に従事。
    2009年JAAA広告論文・新人部門入賞。共書に「若者離れ」(エムディエヌコーポレーション・2016年)、「なぜ君たちは就活になるとみんな同じようなことばかりしゃべりだすのか」(宣伝会議・2014年)。
    PARC CERTIFIED FIELDWORKER(認定エスノグラファ)。

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