ワカモンのすべて #50

JKシンガーソングライターに学ぶ、若者に響く表現(後編)

  • Daisuki asya yori profile
    井上 苑子
    シンガーソングライター
  • Yoshida
    吉田 将英
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター フォーサイトディレクター

前回に引き続き、女子高生シンガー・ソングライターの井上苑子さんとワカモン代表の吉田将英さんが対談。井上さんが「ありのまま」の自分を表現するようになったきっかけとは?
そこには、これからの広告コミュニケーションのあり方にも通じるヒントがありました。

(左より)吉田将英氏、井上苑子氏
 

 

テンプレには限界があることに気付いた

吉田:井上さんの自然体な感じはすごく魅力的に思う一方で、同世代の若者や企業も含めて、ありのままの姿をさらけ出すことが難しいと感じる人も多いと思うんです。それはとても勇気のいることだし、ありのままの自分が何なのか分からない人もきっといます。井上さんはいつごろからその感覚がつかめるようになったんですか? 音楽活動を始めたときから素の自分だった?

井上:いえ、全く違いました。小学6年生のころから路上ライブをやっているんですけど、中学3年生ぐらいになると自然な感じでしゃべることができなくなって、自己紹介や曲間のトークもテンプレの言葉でしかできなかったんです。東京に来てからも、しばらくずっとそうでしたね。

吉田:何がきっかけで変わったんですか?

井上:ライブをお客さんとして見に行ったとき、あるバンドさんがこんなに笑えるのかっていうくらい面白いライブをしていたんです。その人たちの魅力がにじみ出ていて、他の人にはまねできない感じがホンマに衝撃的で。そのライブを見たときに、テンプレには限界があることに気付いたんです。そして、私も自分らしさでお客さんを楽しませたいなって、心の底から思いました。

吉田:「テンプレ」という言葉が出てくるのはすごく面白いです。突然時代の話になっちゃいますけど、これからはテンプレが通用しない時代がやってくると言われています。僕の所属する部署のボスからも、「テンプレはやめろ!」とよく言われるんですよ(笑)。

マーケティングにしろ、コピーライティングにしろ、作詞作曲にしろ、「普通はこうするのである」という定型があると安心するじゃないですか。でも、時代の変化とともにテンプレが通用しない場面が確実に増えつつある中で、それを捨てられるかどうかがすごく重要だと思うんです。

井上:お客さんの気持ちになって自分のライブを振り返ったら、テンプレは何も面白くないなって思いました。それから自分らしさとは何かを見つめ直したり、ライブを試行錯誤したり、ツイキャスなどの活動をする中で、いまの自分にたどり着いた感じです。力が入っているときよりラフな自分が好きやし、そっちのほうがいいと言ってくれる人が多いから、それが一番なんやろなって思います。

吉田:トライ&エラーを繰り返しながらテンプレを乗り越えたのが素晴らしいですね。企業もテンプレに陥ってしまうと、安心したくてそれにしがみついてしまうことがある。そのやり方でウケているならいいけれど、いざ通用しなくなったら新しいやり方なんて分からないですよね。そのときに井上さんのように、お客さんの気持ちになってみて、世の中とキャッチボールすることで初めて気付くことがあると思うんです。

 

世界に飛び込んでから、自信はついてくるもの

吉田:同世代の若者の中でも自信がなくて素の自分が出せない人や、企業もいろいろとかっこつけて本質的なことを言えないケースが多かったりするので、どうやったらありのままの自分を出せるようになるのか知りたいんです。内閣府が発表した、平成25年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査によると、日本の若者は先進諸外国の若者に比べて、圧倒的に自分自身に満足していないという結果が出ています。

井上:日本人っぽいですよね。でも、私もそうでした。何に対しても自信がなくて、私の生きる価値はどこにあるんだろうとすごく悩んだんです。

でも、それをボイストレーニングの先生に相談したら、めちゃめちゃ怒られて。私は歌を歌うことが好きだったし、ほんの少しでも自信があるから歌手の道に興味を抱いたんだと思うんです。それなのに、自分を勝手に下げていたことに気づいて。
もちろん、まだまだ足りない部分はあるけど、やりたいと思ったことはとにかく始めて、精いっぱい準備しようと。

吉田:人は自信をつけてから世界に飛び込もうと考えがちだけど、井上さんの話を聞くと、世界に飛び込んでみないと自信はつかないという感じがしました。

井上:あ〜分かります。とりあえずやっちゃえ、みたいな。

吉田:いまはちょっと、様子見の世の中だと思うんです。情報過多で周りの目がどんどん可視化されて、下手すると世界中から批難されるかもしれない環境にいる。井上さんは歌で、僕らは商品やサービスを通して少しずつ変えていけたらいいなって思うんです。やりたいことがあっても失敗が怖くて行動できなかったり、やりたいことが分からない人たちに対して、どんなことができると思いますか?

井上:私が思うのは…あんまりはっきりした答えじゃないんですけど、どんな人にも必ずいいところがあると思います。それがあるから誰かを支えることができるし、誰かに支えられて生きてこられたと思うんです。うまく言えないけれど…。

吉田:そのいいところを発揮する手助けを、周りの人たちがしてあげられるといいですよね。企業としては、その人たちが無理なくやりたいことをできる空間だったりサービスを作る。LINEやスタンプ機能もそうですよね。若い人たちが感情を思うように出せるような場所や機能を作った。僕らも、広告の立場からそういうことができればいいなって思います。

井上:そうですね。いいところがない、ことはない!みたいな。そのいいところを発揮する場所やきっかけさえつかめれば、きっと輝けると思うんです。

吉田:そういう意味では、井上さんもいろいろと悩みながらトライ&エラーを繰り返す中で、自分の良さを発揮できる場所として見つけたのがツイキャスだったのかもしれませんね。

井上:ホンマにそうですね。そう思います。

吉田:井上さんとお話しして、一見関係ないように思う広告や企業の在り方についても、あらためて分かることがたくさんありました。その人らしさや魅力を引き出したり、お互いが無理なくつながれるような場所やストーリーを、商品やサービスにしっかりと盛り込んでいくことが大切だと改めて感じました。本日はありがとうございました。

※こちら、WEGO×ワカモン「NIPPON YOUTH STUDIO」井上苑子さんの記事も是非ご覧ください!

 

【ワカモンプロフィール】

電通若者研究部(通称:ワカモン)は、高校生・大学生を中心にした若者のリアルな実態・マインドと 向き合い、彼らの“今”から、半歩先の未来を明るく活性化するヒントを探るプランニングチームです。彼らのインサイトからこれからの未来を予見し、若者と 社会がよりよい関係を築けるような新ビジネスを実現しています。現在プロジェクトメンバーは、東京本社・関西支社・中部支社に計14名所属しています。ワカモンFacebookページでも情報発信中(https://www.facebook.com/wakamon.dentsu)。

 

プロフィール

  • Daisuki asya yori profile
    井上 苑子
    シンガーソングライター

    1997年生まれの現役女子高生シンガー・ソングライター。
    3歳の時に生まれて初めて口ずさんだ曲はBON JOVIの「It’s My Life」。
    初めて作った曲は、家の前にダンボールに入れて捨てられていた子猫を、周りの大人が「かわいいかわいい」と言いながら誰も保護しようとしない様子をみて書いた「こころ」。
    11 歳から大阪の心斎橋で路上ライブを始め、手売りCDを1万枚売って上京。
    その後本格的にツイキャスを始め、現在、視聴者数が累計200万人を突破。2015年7月にリリースしたメジャーデビューミニアルバム「#17」のリード曲「大切な君へ」がLINE MUSICで250万再生、YouTubeでも150万再生を突破。大型夏フェスROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015 に出演した他、9月には主演映画「私たちのハァハァ」が公開。

  • Yoshida
    吉田 将英
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター フォーサイトディレクター

    2008年慶應義塾大学卒業後、前職を経て2012年電通入社。
    戦略プランナー・営業を経て、現在は経営全般をアイデアで活性化する未来創造グループに所属し、さまざまな企業と共同プロジェクトを実施。
    また、10〜20代の若者を対象にしたプロジェクト「若者研究部(電通ワカモン)」代表を兼務し 消費心理・動向分析と、それに基づくコンサルティング/コミュニケーションプラン立案に従事。
    2009年JAAA広告論文・新人部門入賞。共書に「若者離れ」(エムディエヌコーポレーション・2016年)、「なぜ君たちは就活になるとみんな同じようなことばかりしゃべりだすのか」(宣伝会議・2014年)。
    PARC CERTIFIED FIELDWORKER(認定エスノグラファ)。

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