loading...

Experience Driven ShowcaseNo.28

インバウンド突破口は、13億人の口コミにあり! 

新宿伊勢丹「Beauty Night For 中国人女子」開催

2015/10/19

三越伊勢丹グループの、在日中国人の口コミを活用するインバウンド最新事例

昨年から急速に増えてきた訪日外国人客、とりわけ中国人観光客。
2015年、その数は過去最高水準をさらに更新する勢いで、大都市の百貨店や量販店などでは中国人観光客による高額購入も今では見慣れた風景となりつつあります。

こうしたインバウンド景気のさなか、単なる買い物促進策とは一線を画した百貨店らしい店舗誘引施策が行われました。その百貨店とは伊勢丹新宿店。
今回は伊勢丹新宿店が実施した「在日中国人の口コミを活用した訪日中国人の店舗誘引施策」の事例を紹介します。

編集構成:金原亜紀 電通イベント&スペース・デザイン局

 

伊勢丹新宿店本館

 

外国人顧客にリピーターになってもらうには?

9月13日日曜日の夕方、日本人客でにぎわった伊勢丹新宿店の地下2階ビューティアポセカリーのカフェから、楽しそうに話している中国語が聞こえていました。在日中国人キャリアウーマン向けの商品体験説明イベントがここで開催されていたのです。

伊勢丹ビューティアポセカリーとは、女性の美と健康のサポートをテーマに、世界中のナチュラルコスメ&フードを厳選したフロア名称。日本トップレベルの品ぞろえを誇る「美と健康のテーマパーク」として親しまれています。

伊勢丹新宿店本館地下2階 ビューティアポセカリー
 

しかし昨今、訪日外国人が殺到している伊勢丹新宿店においても、地下2階のビューティアポセカリーに来店する中国人は、それほど多くありません。中国人にとって化粧品は欧米系のグローバルブランドこそがステータスであり、「オーガニックコスメ」は浸透していないどころか、そもそも「オーガニック」「ナチュラル」という概念自体、まだあまり認知されていない分野なのです。

そういった背景もあり、本イベントの目的は、訪日中国人の大量購入促進ではなく、日本を代表する百貨店の伊勢丹が厳選した商品ラインナップや品質に共感していただき、能動的にに興味をもって購入してもらう仕組みを作成することでした。

今年に入って百貨店は、いわゆる「大量購入型の訪日中国人」の影響で売り上げは飛躍的に上昇中です。しかし、インバウンド景気の最中、伊勢丹が中長期的に獲得したいのは、一時的な大量購入型の観光客でなく、百貨店が提供する商品・品ぞろえ・サービスに共感し、リピーターとなってくれる訪日外国人なのです。「訪日外国人をやみくもに店舗誘引するのではなく、所得や嗜好性でセグメントして店舗誘引につなげたい」という課題が、本イベントの出発点でした。

 

在日中国人の口コミによる拡散

ここで伊勢丹が注目したのは「在日中国人の絶大な口コミ影響力」。
訪日中国人の大半は、訪日前に買い物リストを作成しており、そのリストには、「友人や知人の口コミ」が大きな影響力を持っているのです。
日本で生活し、日本の本当に良い商品を知り尽くしている在日中国人は、訪日予定者にとって信頼かつ憧れの情報ソースであり、彼らが日々、中国語で発信するSNS情報は、「住んでいる人の情報は信用度が高い」「中国人視点で選んだ商品は自分のライススタイルにマッチしそう」という見方のもと、本土の中国人から圧倒的な支持を得ています。在日中国人がSNSでシェアした商品を訪日中国人が買う傾向は高く、訪日時の「買い物リスト」を作成する際41%の人がSNSの口コミを参考にしているとデータが実証しています。

本イベントでは、出身地は中国本土北から南まで、20~40歳代のナチュラル商品に興味のある在日中国人キャリアウーマン30人を招待し、ビューティアポセカリーお薦めの6商品の説明およびその商品のタッチアンドトライを実施しました。
会場はフロア内に併設されているオーガニックカフェ。主催者側による一方的な座学でなく、お茶やスイーツを楽しみながら、百貨店らしいきめ細やかなサービスと共にリラックスした雰囲気で参加者同士が自然に語り合える雰囲気を演出しました。

「こんな商品があるとは知らなかった」「今度中国人の友達を連れてきたい」などの意見で盛り上がり、「オーガニック」「ナチュラル」な商品について、在日中国人キャリアウーマンたちはあらためてその造詣と知識を深めていきました。

そして、イベント終了直後から、参加者たちは、こぞって商品画像やフロアの紹介をSNSにアップしてくれたのです。
参加者の中には、SNSで2万人以上の上質なフォロワーを持つパワーブロガーもおり、実体験を持った口コミは、瞬く間に中国本土のフォロアーたちにシェアされ拡散していきました。

さらに、このイベント報告を中国最大のSNS・微博(Weibo)でPR記事化して掲載。結果的に、招待した在日中国人30人から派生して、日本に興味のある中国人トータル60万人への信用度の高い情報リーチを実現したといえます。

在日中国人キャリアウーマンが参加したイベントの様子

 

百貨店クオリティのインバウンド施策のこれから

また、イベントでは、ビューティアポセカリーへの訪日中国人誘致に関するディスカッションが参加者たちから自主的に行われ、明日から使えるインバウンド施策をクライアントに多数提供できたこともイベントの大きな成果です。

伊勢丹新宿店ビューティアポセカリーが今回実施した「在日中国人をインフルエンサーと捉え、彼らの口コミを活用する」施策は、イベント終了後からすぐにその効果を実証しており、SNS画像を片手に商品を探す訪日中国人たちの姿が翌週のフロアで散見されるという報告も上がっています。

ツアー客として観光バスが巡る店舗の商品を購入して回るのでなく、「ブログや口コミなどを参考に自らの興味関心に基づいて買い物リストを作成→百貨店に足を運ぶ→日本らしいクオリティー・サービスに触れて、納得した上で買い物をしていただく→リピーターへとつなげていく」。

こういった仕組み作りの第一歩となるイベントが実施できたと自負しています。
伊勢丹新宿店が今後、真に自分にフィットした商品やサービスを求める訪日中国人たちの新しいホットスポットになることを期待します。

次回は、三越伊勢丹グループの瓦林恭子氏、電通三越伊勢丹営業担当の飯塚陽子氏、そして私がこのイベントのポイントについて鼎談します。