Experience Driven Showcase #31

ミラノ万博日本館

地球目線で、世界の“食”と“農”を考える。

  • Urahashi profile
    浦橋 信一郎
    株式会社電通 イベント&スペース・デザイン局 グローバル&ミラノエキスポ部 部長

ミラノ万博日本館の展示ゾーンシーンⅢ「イノベーション」では、4つの「触れる地球」が置かれていました。自分の手で地球儀を回しながら、リアルな地球の姿をイメージできるデジタル地球儀です。4つの地球のテーマは「人口爆発と食料危機」「食の不均衡」「気候変動」「食の偏在化」。ここは地球規模の食の課題を可視化し、それに対する日本のソリューションを紹介するゾーンです。今回はその全体像について、動画も活用してお伝えします。
(※動画素材提供:一般財団法人地球産業文化研究所・JAグループ)

編集構成:金原亜紀 電通イベント&スペース・デザイン局

 

地球の今をダイナミックに可視化

人類が宇宙に向かい、国境のない丸い地球の写真が初めて公開されたとき、多くの人が心を動かされました。いくら「地球はひとつ」といっても、地球規模な視野がなければ実感がわきません。
「触れる地球」が誕生したきっかけは、開発者である文化人類学者の竹村真一氏が「生きた地球を可視化する」ことの大切さを痛感したからだといいます。

竹村氏は、このシーンⅢを手がけたクリエーターでもあります。竹村氏はこう語っています。「世界では食料や農業の危機が本当に深刻です。世界各地での内戦の背景にも、数年続いた干ばつと食料不足がありました」。地球温暖化や水不足、土壌劣化で食料生産が危ぶまれる一方、いま世界は8億の栄養不足人口と20億の肥満人口を抱えています。“地球に食料を、生命にエネルギーを”というミラノ博のテーマは、この量的な食料供給と質的な栄養バランスの改善に、正面から取り組もうというメッセージです。

シーンⅢ「イノベーション」の様子

 

ミラノ万博で提示した日本のクリエーティブ・ソリューション

今回の日本館で提示したのは、4つの重要な地球規模の課題と、それぞれの課題解決に向けて、日本が貢献できる16のソリューションでした。

地球の課題 01 人口爆発と食料危機

20世紀初頭におよそ17億人だった地球の人口は、それから100年余りで73億人に。その半分が都市に暮らしています。急増する人口を養うため、食料は増産を続けていますが、いずれ需要に追いつかなくなると予測されています。

(左から)
ソリューション1 生命の豊かさを支える「水田」
ソリューション2 食料危機から世界を救う「大豆食」
ソリューション3 地球の土を再生する「土壌微生物」の見える化
ソリューション4 マグロ・ウナギの「完全養殖」

地球の課題 02 食の不均衡

足りているのに足りない食料。いま世界全体で食料の3分の1、年間約13億トンが捨てられています。それは、8億人の飢餓人口を十分養える量です。日本でも2000万トン近い食料が廃棄されています。

(左から)
ソリューション1 気候変動に適応する品種開発「イネゲノム」
ソリューション2 情報技術による農業革命「精密農業」
ソリューション3 人が創りあげた自然「里山・里海」
ソリューション4 夢の技術「人工光合成」

地球の課題 03 気候変動

地球温暖化とともに洪水や干ばつなど異常気象が世界で頻発する中、世界の作物品種は画一化し、人類の農業は気候変動や病気に対してますます脆弱になりつつあります。

(左から)
ソリューション1 世界の人々の健康に貢献「うま味」
ソリューション2 持続可能な資源活用で伝統食を守る
ソリューション3 「ミドリムシ」が地球を救う
ソリューション4 食品廃棄を減らす「先端保存技術」

地球の課題 04 食の偏在化

世界では今なお8億人余りが飢餓・栄養不足で苦しんでいます。しかし一方で、栄養過剰と肥満に悩む成人の人口はその倍以上の20億人いるといわれています。

(左から)
ソリューション1 家族農業・小規模農家を支える「協同組合」
ソリューション2 アジア・アフリカ農業支援
ソリューション3 「給食支援」による国際協力
ソリューション4 食料安全保障を高める「都市農業」

 

アニメーション映像で見る、

日本のクリエーティブ・ソリューション

地球規模の課題に対し、日本の“食”と“農”はどんな創造的解決を提案できるのか。
この展示ゾーンで見ることができるアニメーション映像は、この壮大なテーマへと来場者を導くイントロダクションです。映像を手掛けたのは、ロボットのクリエーティブディレクターである清水亮司氏。清水氏はアニメーション表現全体の狙いとして「いまや日本文化の象徴の一つとなったアニメーション、その表現手法は多種多様です。

各パートのメッセージ性を際立たせるため、パートごとに異なったアニメーション表現を採用しました。地球を俯瞰するこの空間で、アニメーションという国境を超越した表現が世界の人々の心に響くことを願っています」と語っています。4つの「触れる地球」に囲まれた空間と正面のステージ、そしてスクリーンの中の映像を立体的にビジュアル連動させた演出も見どころの一つです。

前半では地球規模のマクロ的視点から見た地球の危機を、後半ではそれらに対する日本のソリューションを情緒豊かなストーリーで展開します。日本が発信すべき情報を集約した内容であるとともに、日本のアニメーションの魅力を存分に伝える映像作品となっています。

正面のステージ

食の多様性
日本発の「アニメ」として、テレビ番組などで欧米においても最も親しみのあるタッチである「セルフアニメ」的な表現で世界中の「食の多様性」を描いています。

 

地球規模のクライシス
抽象的かつファンタジックな「手触り感のあるタッチ」を用いて、地球規模のクライシスを人々の感覚に届く表現手法でアニメーション化しています。

 

地球史~農耕革命~
絵本などのシンプルでプリミティブな表現に近い絵柄のアニメーションを用いることで数十億年にもわたる地球と人類の歴史を、身近な出来事として感じてもらうことを目指しています。

 

未来へのソリューション
日本が育んできた伝統に息づくクリエーティブな発想と、未来を照らす新たなソリューションをグラフィカルなタッチのアニメーションで映像化しています。

次回は、京都造形芸術大の竹村真一氏、企画制作を手掛けたロボットの清水亮司氏と私の鼎談をお届けします。

 

プロフィール

  • Urahashi profile
    浦橋 信一郎
    株式会社電通 イベント&スペース・デザイン局 グローバル&ミラノエキスポ部 部長

    1999年電通入社。
    企業のコミュ二ケーション・スペースを主たる領域として国内外でプロジェクトを多数手がける。

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