実践 インバウンド最前線No.5
春節を狙え! “爆買い”「お買い物リスト」に載る方法(後編)
訪日前・中・後 一気通貫の施策で「スパイラル」を構築
2015/12/23
前回、「中国人訪日旅客買い物リスト&ビークル調査」の結果から、95%以上の訪日中国人が渡航前に買い物リストを作成し、そのうちうちの7割以上を実際に購入していることが明らかになった。今回は、具体的なアプローチ方法や事例について、インバウンド関連のソリューションを最前線で担う電通グローバル・ビジネス・センターの根本淳氏に語ってもらった。
2016年の春節の休暇(2月7日から13日)が迫る中、施策を打つタイミングはこの年末年始がピークになってきます。まずは何といっても買い物 リストに載ることが最重要課題ですが、リストを起点に、訪日前・中・後で一気通貫の施策で「スパイラル」の構築を狙います。訪日を商品体験のきっかけとして、帰国後に継続的な購入につなげるマーケティング視点が重要です。
訪日前:主要な情報源を押さえてリストに載る!
百度をはじめとする検索エンジンのリスティング広告やSNSなど、ネットでの話題発信で情報を拡散します。また、ビザ受け取り時に直接手渡しするといった、「訪日旅行者100%」への最終アプローチも有効です。
Point !
ネットを中心に「届く」話題を
微信(WeChat)や微博(Weibo)などのSNSで、使用感や価格、店舗情報といった情報を、動画も活用しながらどんどん出していく。一定以上の記事量で、継続的に話題を提供していくことが大切です。
個人旅行の急増とともにますます存在感の高まる旅行サイトも、実体験ブログを発信するなど積極的な活用が望まれます。他にもテレビ番組タイアップやインバウンド系の雑誌やフリーペーパーなど、事前の話題形成を促進する豊富なメニューがそろっています。
Point !
Eコマース上でのアピールも必須
多くの人が主要なEコマースサイトで販売実績などを確認し、売れている商品か、人気があるかなどチェックしています。もちろん価格も調べています。ここでの製品アピールも必須です。
訪日中:“爆買い”本番。商品体験の促進がキー
いよいよ来日。成田空港を玄関に、ツアーバスやリムジンで移動。最近では地下鉄の利用も増えています。商品サンプリングやOOHなどが定番ですが、ホテルまでの動線をいかに確実に押さえ、連携的なアプローチをするかが勝負になってきます。
またリピーターや個人旅行の増加を背景に、リストにない商品を店頭で直接見て買うケースが増えています。来日してからの商品体験の促進、特に店頭施策の重要性が一層高まっています。
Point !
来日中も盛んに情報収集活動
実は、来日中も情報収集は続いています。モバイルを活用し、買い物中も検索したり家族や知人とコンタクト。また時間帯別でみると、午後10時台が検索のピーク。 夜ホテルの部屋に戻ってから、パソコンでじっくり明日に向けて情報収集を行っています。日本のテレビを結構見ていることも分かっています。
Point !
SNSでの拡散を狙う
帰国後にSNSなどで自慢できる写真が撮れるような街イベントなど、商品やブランド体験が拡散される機会を仕掛けることで、未来の消費につながってきます。
訪日後:旅自慢の口コミで次の訪日を狙う。Eコマースに購入継続・拡大のチャンス
お土産を配りながら、旅自慢。SNSでの投稿などの口コミが、次の訪日を促します。
さらには、訪日時の商品体験をきっかけとした継続購入の仕掛けとして、越境Eコマースへの注目が高まっています。訪日時の爆買いに目が行きがちですが、並行輸入や代理購入といった越境Eコマース市場が急速に伸長しており、すでに訪日での消費を上回る6000億円規模に達しています。2018年までに1.4兆円まで拡大すると予測され、実は爆買い市場よりも成長のスピードで上回ることが想定されているのです。
Point !
越境Eコマースで継続購入につなげる
電通ではEコマースの仕組みを利用し、訪日前に自国で注文・決済まで済ませ、来日時に免税扱いで商品をピックアップできるメニューや、中国に法人設立の必要がない天猫(Tmall)や京东(JD.COM)への出店へのサポートなどを行っています。
リストが消費行動の中核にある一方で、前回お伝えした通り全体の87%がリストにない商品も購入しており、侮れない比率となっています。特に、ファッションや生活用品でその割合が高い。実は、これらリスト外での購入アイテムは、本土に比べてFIT(海外個人旅行)が多い香港や台湾からの観光客の購入ランキング(「訪日観光客のお買い物実態」)上位のものと重なります。中国でも今後FIT化が進むにつれて、店頭で選ばれる商品がさらに増えてきます。このような新たな潮流を認識し、店頭などの施策に生かすことも大切です。
2020年東京五輪に向けて訪日外国人の一層の増加が見込まれる一方で、TPPなどで国をまたいだ商品購入のハードルは下がります。越境Eコマースなどで、訪日での商品体験を継続購入やブランドスイッチにつなげていくことが有効になってきます。
電通にはインバウンド領域における様々なチームとソリューションがあります。「電通インバウンドビジネス・ユニット」では、クライアントの課題に応じて、それら多彩なリソース群を柔軟に組み合わせ、最適なソリューションをご提供いたします。kanko-unit@dentsu.co.jpまでお問い合わせください。