ドミニク・チェンさんと考えるビジュアルコミュニケーションの未来 #01

なぜ若者は写真アプリに夢中になるのか、その利用実態から見えてきたこと

  • Dominick chen pr
    ドミニク チェン
    起業家・研究者
  • Miwa
    美和 晃
    株式会社電通 電通総研 メディアイノベーション研究部 部長
  • Kitahara20028pro5
    北原 利行
    株式会社電通 電通総研・メディアイノベーション研究部 研究主幹
  • 設樂 麻里子
    株式会社電通 電通総研 メディアイノベーション研究部 副主任研究員
  • 14580463 1225228107497344 1248304897 n
    天野 彬
    株式会社電通 電通総研 メディアイノベーション研究部 研究員

電通総研メディアイノベーション研究部は、メディアや情報通信環境の変化、そしてオーディエンス(視聴者)の動向を探ることをミッションとするシンクタンクです。

このたび、IT起業家で情報学研究者のドミニク・チェンさんをアドバイザーに招いて、10代後半~20代半ばの男女スマホユーザーの「ビジュアルコミュニケーション」をテーマにした調査プロジェクトを実施しました。

変化し続けるメディア環境の中で、スマホユーザーのコミュニケーションも変化し続けています。若年層が写真や動画アプリを通じたビジュアル中心のコミュニケーションへシフトする理由とは?
調査結果をひもとくディスカッションを4回シリーズでお送りします。

 

【動画】ビジュアルコミュニケーション・7つのポイント


【調査概要】
電通総研メディアイノベーション研究部
「ビジュアルコミュニケーションに関するグループインタビュー調査」
■調査対象者
首都圏在住の男女18~25歳(大学生ないし社会人)
N=17(5人×2グループ+7人×1グループ)
■調査方法
グループ単位のインタビュー調査
■調査日時
2015年9月6日(日)

ドミニク・チェンさん(中央)と、左から電通総研メディアイノベーション研究部の美和晃、北原利行、天野彬、設樂麻里子

ドミニク・チェンさん(中央)と、左から電通総研メディアイノベーション研究部の美和晃、北原利行、天野彬、設樂麻里子

コミュニケーションのトレンドは文字からビジュアルへ

天野:近年、写真や動画を扱うスマホアプリが充実し、多くのスマホユーザーの間で写真や動画を見たり撮ったり送ったり…というビジュアルを活用した情報行動が定着しています。

私たちはこうしたコミュニケーションの在り方を、文字のコミュニケーションであるリテラルコミュニケーションに対して、「ビジュアルコミュニケーション」と呼び、未来のコミュニケーション環境に向けた示唆を与える中長期的なトレンドと捉え、調査や考察を重ねてきました。

設樂:はじめに、ユーザーと情報テクノロジーが相互に関連し合いながらビジュアルコミュニケーションを活性化させている構造を図示してみました(図1)。

図1:ビジュアルコミュニケーション活性化の構造

スマホの普及と、カメラ機能ないしアプリケーションの充実強化という情報テクノロジー側の流れがあり、もう一方で文字ではなくビジュアルでコミュニケーションするようになってきたというユーザー側の変化と、それと連動するかたちでのSNSの比重の高まりがある。それらが絡み合いながら、共進化してビジュアルコミュニケーションが活性化されています。

調査の結果、写真や動画に関連するアプリの使う種類の数、ないしは使用頻度で比較すると女性の方が男性よりアクティブで、年齢が若いほどその傾向が強くなるという結果になりました。ビジュアルコミュニケーションというトレンドのメーンの担い手は、やはり若年女性です。トレンドにも敏感で、情報行動もスマホを中心に活発です。

ドミニク:リテラルコミュニケーションとビジュアルコミュニケーションの比較で男女差が出るのは面白いですよね。弊社でもネットリサーチツールを使って、2年ほど前に10万人ぐらいをスクリーニングしてスマホを使った写真撮影の利用について調べてみたところ、圧倒的に女性の方が多く、かつ、週3日以上の頻度で写真をスマホで撮るという結果が出ていました。今回の結果を見ても、同じ傾向が続いている印象を受けますね。

ドミニク・チェンさん

Instagram、Twitter、Vine、Facebook、YouTube、Snapchat、MixChannel…ビジュアルコミュニケーションアプリの使い分け方を探る

北原:ビジュアルコミュニケーションアプリがどう使い分けられているのか、ユーザーインタビューの結果を簡単にまとめると、「シェア」「連絡」「娯楽」「保存」など…一口にビジュアルコミュニケーションといってもニーズに合わせた幅広い使い方が存在しました。

それを器用に組み合わせることでビジュアルのコミュニケーションを複雑に構成している実態が見えてきます。

図2:用途別にビジュアルコミュニケーションアプリを組み合わせて楽しむ
※利用の傾向としてご理解ください

設樂:個別のアプリにフォーカスすると、まずInstagramは、今回のユーザーインタビュー調査で最もよく使われていたアプリといえます。ポジティブな特性は、端的に「おしゃれ」であるということ。そして「スクエア型」が好きという意見も。「スタイルのある投稿がある」とか「世界観が統一されている人への憧れがある」というコメントもありました。

あとInstagramはクローズドに楽しめる環境もあるので、気軽に投稿できる。それだけ投稿頻度は高くなるし、自分で振り返って過去のアルバムを見るような感覚で見返すことも多いのだとか。写真がメーンで視覚的にすっと入ってくるので、面倒じゃない。

美和:それに加えて、雑誌のようにトレンドの参考にしたり、レシピ情報やレストラン情報をハッシュタグから収集することも多い。一回ハッシュタグで調べた後に食べログにいくとかグーグルで調べることもあるらしいんですが、第一情報はInstagramの友達からの情報が多いと。

設樂:その一方で自慢的な写真が多いところで敬遠するユーザーも。Instagramは「いい感じの写真を投稿する」という、ユーザー間で自然発生的にできた暗黙のルールが存在し、負の要素やダサさがご法度なので、そのオシャレすぎる空気に「インスタ疲れ」する人もいます。

カップルが明らかに一緒にいるのに、向こうに男性の手だけ載せて、いることを「漂わせ」る「漂わせ投稿」というのもあります。

天野:高度なアピール、あるいは顕示的な空間になっているんですね。都市からSNSへ、見せびらかしの場が変わってきているというトレンドを映し出しているのかも。

設樂:Instagramの他によく使用しているアプリは、Twitter、Vine、Facebookなど。以前から使っていたTwitterやFacebookでも文字要素が減り、写真や動画のシェアの割合が高まっています。

ディスカッションの様子(天野)

天野:スマホの向きを縦にして見るか、横にして見るか、縦型視聴/横型視聴というメディア受容のあり方も最近注目されていますね。

Instagramだとスクエアな写真がかっこいい、Vineみたいな短く見られるものは縦型視聴がいいとか、でもYouTubeでゆっくり好きなアーティストのライブを見るときは横がいいといった声も聞かれました。

動画の見方がSNSやキュレーションサービスからの導線の中で消費されるようなものになっているので、普段通り縦のままで見ることが増えているとも考えられます。

設樂:Snapchatは、データが残らず加工も必要なくて気軽に投稿ができるアプリです。アメリカを中心に流行していることから、海外に友達がいる人は使う機会があるようです。一方で日本ではまだまだ認知されておらず、周囲に使っている人が少ないから、使い方やメリットが分からないといった意見が聞かれました。

ドミニク:SnapchatはFacebookなどソーシャルメディア連携ができず、友達を追加するにはメールアドレスかID検索で行う必要がある。ただ最近ではスマホユーザーがあまりメアドを使わなくなっているなどの問題もありますね。どうユーザーを広げていくかという点で、そこはPicseeも打破したい部分ではあります。

美和:大学1、2年生の子がSnapchatやミクチャ(MixChannel)は「私たちより下の世代が使う」と言っていました。また、ミクチャによく投稿されているカップル動画などには抵抗があると。やはりここにも世代差がある程度観察できそうで、10代高校生ぐらいの人たちは、動画の編集や送信に抵抗がないということもあり、動画で自己表現をすることも一般的になっているようです。

ディスカッションの様子(美和、北原)

設樂:調査から見えてきた使い分けから、例えば「機能」と「気分」みたいな切り方もできるかなと思いました。

情報のシェアの範囲が一般に向けて広く行われるか、知人・友人などに限定して狭く行われるかというOpen/Closedという軸と、使うときの目的としてのキブン(Emotion)かキノウ(Function)かという軸を考えると、図3のような4象限が得られると思います。

またもう一つの特徴として、Openなものはアプリ利用の時間のうち閲覧が中心となり、Closedなものは発信が中心になるという差異が見られるようです。

こういう分け方で見ていくと、今回の調査でフォーカスが当たっていたアプリの多くがオープンかつキブンな象限にあり、感性重視のビジュアルコミュニケーションユーザーはそれらを好むということが見えてきます。

Open/Closed、キブン/キノウの4象限
※Instagramなどは、個人の情報シェア範囲の設定次第で縦軸の値が変動します

北原:その他、スマホのデータ容量をどうキープするかということで、「保存」のためのアプリもよく使われていることが見えてきました。Google フォトなど、ちゃんと活用できている子は、スマホと同期させた自動アップロードの機能だったり、タグ付けの機能だったり、アニメーションコラージュをしてくれる機能などの便利さを分かっている。

天野:写真の整理や保存は、ビジュアルコミュニケーション時代だからこそ顕在化してくるペインで、まだまだ現在進行形で解決策が模索されている段階ですね。

プロフィール

  • Dominick chen pr
    ドミニク チェン
    起業家・研究者

    1981年、東京生まれ、フランス国籍。博士(学際情報学)。2008年度IPA未踏IT人材発掘・育成事業でスーパークリエータ認定。NPO法人コモンスフィア理事として、新しい著作権の仕組みクリエーティブ・コモンズの普及に努めてきた他、2008年に創業した株式会社ディヴィデュアルでは「いきるためのメディア」をモットーに「リグレト」(ウェブ)や「Picsee」(iPhone)、「シンクル」(iPhone/Android)などさまざまなソフトウエアやアプリの企画・開発を行っている。
    2015年度NHK NEWSWEB 第4期ネットナビゲーター。2016年度グッドデザイン賞「情報と技術」フォーカスイシューディレクターを努める。監訳書にマレー・シャナハン著『シンギュラリティ:人工知能から超知能へ』、単著に『フリーカルチャーをつくるためのガイドブック』などがある。

  • Miwa
    美和 晃
    株式会社電通 電通総研 メディアイノベーション研究部 部長

    入社以来、電通総研にて主に情報通信やデジタル機器・コンテンツ領域の調査研究や官・民のクライアント向け事業ビジョン構築作業とコンサルティングを実施。カメラ、ロボットから電子書籍まで幅広い分野を担当。2012年7月よりメディアイノベーション研究部にて情報メディア全般に関するプロジェクトに従事。2015年11月より現職。

  • Kitahara20028pro5
    北原 利行
    株式会社電通 電通総研・メディアイノベーション研究部 研究主幹

    情報システム部門、経営計画部門を経て研究開発部門に所属。2011年より現職。

    マスメディアやコミュニケーションの研究、メディア企業のコンサルティング、組織人事制度コンサルティング、広告および関連市場・業界動向調査などの業務に従事。「日本の広告費」および「情報メディア白書」の担当。
    『情報イノベーター~共創社会のリーダーたち~』(共著、1999年 講談社)等、著書論文多数。東京工業大学大学院非常勤講師、立教大学大学院兼任講師、総務省研究会専門委員、経済産業省研究会専門委員、(財)知的財産研究所専門委員等を歴任、JASRAC寄付講座講師、JICA研修講師など講師・講演多数。

    地方紙を中心とした新聞社に関わるさまざまな調査、プロジェクトに従事。新聞社での講演も多数。

  • 設樂 麻里子
    株式会社電通 電通総研 メディアイノベーション研究部 副主任研究員

    2007年電通入社。
    現役女子大生で構成されたオピニオンリーダー組織「ハレ女委員会」共同創設者。
    「電通ギャルラボ」研究員。
    コミュニケーションプランナーとして、主にファッション、ビューティーなど若者女性向け商品を中心としたキャンペーンやイベントの企画プランニング、企業・ブランドのコミュニケーション戦略立案、アーティストのプロモーションなどを手掛ける。
    2015年から現職。スマートフォンのユーザーリサーチや、女性や若者を切り口としたインサイトの分析を専門とする。
    過去の主な受賞歴に、カンヌ金賞、ACCグランプリ、アドフェスト金賞など。

  • 14580463 1225228107497344 1248304897 n
    天野 彬
    株式会社電通 電通総研 メディアイノベーション研究部 研究員

    1986年生まれ。東京都出身。東京大学大学院・学際情報学府修士課程修了。
    2012年電通入社後、マーケティング部門、新規事業開発部門を経て、2014年から現職。
    スマートフォンのユーザーリサーチを中心に、現在のメディア環境やオーディエンスインサイトを分析している。
    著書に『二十年先の未来はいま作られている』(2012年、日本経済新聞出版社、共著)、『情報メディア白書2016』(2016年、ダイヤモンド社、共著)。その他レポート執筆やセミナー講師など経験多数。

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