前例を創ろう鼎談 #02

前例を創ろう 後編

  • Kama prof
    隈 研吾
    建築家
  • Hotei prof2
    布袋 寅泰
    ミュージシャン・ギタリスト
  • Kunimi profile
    国見 昭仁
    株式会社電通 未来創造グループ エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター

「解放」が日本を元気にし、
世界の前例を創る。

 
 

組織の“縛り”から、いかに自分を解放するか

国見:バングラデシュでは、戦後復興した日本を「奇跡の国」と呼んでいます。その時の底力には、日本を元気にするヒントがある。そこで必要なのは、日本人の持つ力をどうアウトプットするか。単に動くだけで得られるアウトプットでは訴える力が弱くなります。単に動くだけでなく「解放」に近い動き方かもしれません。自分が感じたものを、どう解放するかが大切になると思います。

隈:そのためには、まず組織の在り方を見直すべきでしょう。会社だけでなく、いろいろな組織です。今はみんなが周りの組織を気にし過ぎて、組織が人々の“縛り”になっています。「解放」は的を射た言葉で、そういった組織をいかに忘れるか。日本人は気付きの力があって、クリエーションにたけています。その力を自由に組織横断すればもっとできるはず。“組織を気にしない”ことが、解放なのかもしれません。

布袋:いろいろな意見の中で、今はネガティブなものばかりが広がってしまいます。日本という組織の中で、みんなが日本的であることに遠慮し気を使っている状態。日本人のきめ細かさが、日本人を小さくしてしまっているのかも。だからこそ、「解放」は考えるべきテーマかもしれません。自分が発信するのはもちろん、大胆なものを寛容に受け入れることも大切ですよね。

国見:例えば高齢化社会も、それ自体はけっして悪ではないと思うんです。現時点では奇跡の国をつくり上げた世代の方がたくさんいる社会なわけですから。ただ、それをネガティブにばかり捉えてしまう視点が悪なのではないでしょうか。固定観念に負けないで、そこに本質的な視点を見つけて、それを受け入れた上で新しい価値を生み出す。その勇気が欲しいですね。

ゴールを描こうとせず、プロセス自体をゴールにする

国見:日本人が「解放」によって、そのDNAを発揮するためにはどんなことを意識すべきでしょうか。

隈:思い切って動いてみることだと思います。僕がパリに事務所を開いたとき、実は向こうで仕事があるか分かりませんでした。でも思い切って事務所をつくると、自然と現地の人とつながり会話をしたりするようになって、そのうち仕事が成立するようになりました。その行動が大切で、一般的にはマーケティングをして計画を立ててから海外進出するのが手順だと思うのですが、先に動いてみるのもひとつの手段ですよね。

国見:まず踏み出すことですね。今はビジョンやゴール設定、それこそコンセプトが問われやすいですが、それだけではないと。

隈:建築でいえば、ゴールは見えないんです。むしろ見えると面白くない。それよりもプロセスを楽しむこと。ゴールの絵を描こうとせず、プロセス自体をゴールにする。海外進出するにも、まず現地に行って信頼できるコネクションを見つける。全体の計画やコンセプトを重視し過ぎない。その場に行くと始まることがあります。

布袋:僕も、ゴールよりスタートが好きです。ゴールが近づいたら、やめて新たなスタートをしたくなるくらい(笑)。ロンドンでの活動を始めたのもそれが理由。一からのスタートをしたかったんです。ゴールを狙ってもゴールにたどり着けるわけではないし、そこから別のゴールが見つかるかもしれない。だからこそ、スタートとプロセスを重視する。僕も3年前にロンドンで再スタートして、今年35周年を迎えられてよかったと思っています。

国見:極端にいえば、計画や目標を立てるから失敗が生まれるという面もあるかもしれません。だからこそ、まずは目の前にあるプロセスを日々ベストの方法でやっていく。動いてみる。お二人の話からはそういったヒントを感じます。そしてそれが、日本人や日本企業が「解放」し、世界の中で力を発揮する鍵になるのかもしれません。

布袋:日本ではよく、世界的なスターを指して「世界の○○」と言いますよね。でもそれは、裏を返せば世界と日本が別のところにあるような表現で、どこか線を引いている気がします。そうではなく、世界の中に日本があると思いたいですよね。当たり前にそう思えれば、競争もマーケットもきっとプラスになるのではないでしょうか。海外進出するにも気張る必要はないし、スタートとプロセスを重視できるはず。僕はそう思っています。

 

⑦バングラデシュ「奇跡の国」
戦後の焼け野原の状態から、日本は経済大国へと成長した。その過程から、バングラデシュでは日本を「奇跡の国」と呼ぶ。
⑧パリ事務所
隈研吾氏は、2008年にパリ事務所となる「KUMA & ASSOCIATES EUROPE」を設立。海外の拠点とした。なお昨年9月には、パリ最大規模となるサン・ドニ駅の建設計画で隈氏の設計がコンペで選ばれている。
⑨ロンドンでの活動
布袋寅泰氏は、2012年から英国へ移住し、ロンドンを拠点に活動している。2度のロンドン公演を行い、昨年10月にはインターナショナルアルバム「Strangers」をリリース。全世界で同時配信もされた。
 

プロフィール

  • Kama prof
    隈 研吾
    建築家

    1954年、横浜市生まれ。東京大大学院建築学科修了後、コロンビア大客員研究員、慶応大教授を経て、2009年から東京大教授。「亀老山展望台」「石の美術館」「サントリー美術館」など、多数の建築を手掛ける。

  • Hotei prof2
    布袋 寅泰
    ミュージシャン・ギタリスト

    ロックバンドBOØWYのギタリストとして活躍した後、1988年にソロデビュー。プロデュースなどでも才能を発揮する。自身が製作した「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」が映画「キル・ビル」のテーマ曲となり、世界的に高い評価を受ける。現在はロンドン在住。

  • Kunimi profile
    国見 昭仁
    株式会社電通 未来創造グループ エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター

    2004年に電通に入社。金融プロジェクトにおいて、100社を超える金融機関のマーケティング戦略を立案。
    2010年、経営者と向き合いながら、企業のあらゆる事業活動を“アイデア”で活性化させる「未来創造グループ」を立ちあげる。化粧品、車、通販、外食、旅行、アパレル、ソフトウェア、銀行、消費者金融、不動産、新聞、通信、飲料、保険、エステ、投資ファンドなど、さまざまな業界において、経営者とビジネス活性化および再生プロジェクトを実施。

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