新明解「戦略PR」 #31

2015年ヒット商品ランキング全部見たけど、なんか質問ある?

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    井口 理
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 局長 チーフPRプランナー

明けまして…なんて言ったらもう遅いかな? しかし2016年の1発目なので、あらためまして今年もよろしくお願いいたします!

さて、長らく続けてまいりました「使い倒してみた!」シリーズ。少しばかり筆者が飽きましたので、ここでお口直し代わりに軽めのネタを投入です。お題は昨年末に発表された「ヒット商品ランキング」などの「まとめネタについての考察と、知っておきたい基礎知識」です。それでは今年も元気よく行ってみよ!

2015年ヒット商品ランキング全部見たけど、なんか質問ある?

まとめネタは季節の風物詩。うまく波に乗っかりたいところ

「今年の漢字」や「新語・流行語大賞」「その年のヒットランキング」などなど、年末になると一年間の振り返りってやつでいろいろなまとめネタが発表されます。毎年、清水寺のご住職がその年の世相を漢字一文字で表すなんてのは、みなさん一度はご覧になったことがあるのではないでしょうか。2015年の漢字は「安」でしたね。これは安倍政権による安保法案成立へ関心が集まったことや、はたまたテロ、異常気象、企業のデータ改ざんなどに対する生活者の「不安な気持ち」という意味も含んだ意味とのこと。

あれって実は日本漢字能力検定協会が主催してるんですよね。もっとみんなに漢字に対して興味を持ってもらいたい、という考えから1995年に始まったイベントで、もう20年以上も続いているんです。大したもんですね。漢字の決定は公募でなされ、一番数の多かった字に決まるようですが、人それぞれ、一年のまとめとして思い浮かべる「漢字」はさまざま異なるはず。選出された字に共感を抱くもよし、はたまた自分の思い浮かべた字と比較して社会と自身の視点とのギャップに考えをめぐらすもよし。たった一字の漢字ではありますが、いろいろと考えたり、語ったりできる情報として影響力があるものだと感じます。

ちなみに「新語・流行語大賞」の選考方法は少し異なっており、単純な集計で確定するものではないようです。1次ノミネートされた言葉を、作家やジャーナリストなどから構成される選考委員会で議論され選出されるとのこと。いずれにせよ、結果に対してどこまで生活者が共感を抱けるかどうかが、口コミ的拡散を左右することは間違いないでしょう。「○○が似合う芸能人」なんていう表彰イベントなんかにも同様のことが言えます。「さすがにそれはないんじゃね?」という感覚が多くの人に芽生えてしまう結果だと、その情報設計はちょっと違ったのでは、ということになります。ここら辺のニュアンスを理解できるかどうかは、PRパーソンの資質にも大きく影響してくるはずですよね。

「ヒットランキング」も数だけでなく生活者の意識を反映

ちなみに各メディアが独自に選出する「その年のヒットランキング」も、単なる販売数で順位付けしたものではありません。新聞やトレンド誌、あるいは○○総研といった各メディアやラボがそれぞれの目線から、読者が納得するランキングを作ろうと工夫しています。2015年のランキングをいくつか横に並べてみると、同一のものが各メディアに横断的に入っていることもあるし、一つのランキングにしか顔を出さないようなものもあったりします。この辺が独自路線ということなんでしょうが、全体を通じて思ったのがラグビーW杯やハロウィーン、あるいは北陸新幹線など、「モノ」単体ではなく、そこから生じる「コト」(現象)に関するエントリーが多くなっているということ。すなわち家族や友人など、仲間と共感・体験できるような「コト消費」がますます台頭してきているということではないでしょうか。

「モノ」のランクインについては、確かにそれぞれの製品・サービスが人気だった、売れた、と納得する部分もありつつ、いつの間にか下火になってしまったなぁ、なんてことを感じることもままあります。やはり「モノ」単体では、そのメーンターゲットというスモールグループで話題がストップしてしまう、あるいは「面白い!」「買って満足した!」などの印象を抱いたとしても、どうしても情報発信は単発的になってしまうのではないでしょうか。すると、今一つ情報拡散が進まず、継続的な盛り上がりを果たせないことが多いように感じます。時代は「コト消費」。「モノ」から「コト」にどう変換して生活者に伝えていくかが今後のキモになってきそうな気がしますね。

「ヒットランキング」に自社製品を入れたいと思うあなたに

「その年のヒットした商品ランキング」になんとか自社製品が選ばれてほしい、と熱望する広報パーソンは少なくありませんが、もちろんそう簡単にコトは運びません。まずやはり、実際に売れていないといけないわけです。

でも、「そんな空前の大ヒット、難しいっしょ?」と投げやりになることはありません。実際のランキングを見ていると、ヒットの定義って、売り上げだけじゃないと思うんです。いかに新しい生活者ターゲットを開拓したかとか、差異を打ち出せないコモディティー商品が氾濫する市場でいかに個性を打ち出したのかとか、そういうメーカーの努力をメディアは見ており、応援したがってるんじゃないかな、と思うんです。なぜって、そういう企業の工夫で消費市場が活性化し、関連企業の創意工夫が一段となされることで、生活者により良い商品が届くことになるからです。あ、これはあくまで私の観察と分析による私見ですよ…!

ですので、ランキングに選出されたらいいなぁ…、と指をくわえて見ているだけではなく、各企業の広報担当者の方々も積極的に「うちの商品は今年ヒットしたんです! なぜなら…」ともっとメディアに情報提供すべきだと思うんですよね。年の初めのほうのヒットだと、うっかり忘却の彼方にいってしまっていることもあるでしょうし、売り上げはそこそこだったとしても、市場への貢献度や、生活者への新提案など、そこに納得感があれば、興味を持ってもらえると思うんです。リリースを送るのと同じですから、ぜひ前向きに情報提供にトライしてみてくださいね。

ちなみに、基礎知識として共有しておきますと、年末の「ヒットランキング」などは大体11月中旬~12月初旬に発表されています。ってことはですよ、その選出会議ってのはその1カ月以上前から情報収集して議論が重ねられているってことだと推測されます。早いところでは10月初旬にはもう検討会が始まっているんじゃないですかね。そこのあなた、「そろそろ師走も中盤に入ったし、最終月12月の売上予想も含めながらメディアに会いに行ってみようかなー」なんて言っていては、すでにランキング競争から除外されてしまいますよ!(怒)情報提供は先手、先手で勝負しないと! もちろん不足している情報は追って提供していけばいいのです。まずはその商品がヒットとして捉えられるべき背景をきちんと説明すること、これがやっぱり大事なんですよね。併せていくつかのTIPS(小さな工夫)をば。

①自社製品だけでアピールできなければ、他社製品も含めて市場カテゴリーそのものを訴求すべし。
単一企業の商品を取り上げるのが難しい場合、カテゴリーそのもののヒットを伝える中で自社商品を大きく扱ってもらうこともできるかもしれません。ゴリ押しせずにそこはバランス感覚をもって対応していくべきでしょう。

②年間ランキングの試金石として上半期ランキングなどへのアプローチもしておきましょう。
上半期に発売された商品であれば、まだライバルも少なく、ランキングに取り上げられる可能性も高まります。ただし、年間ランキングでは、やはり直近のヒット感が印象に残りやすいということもあります。上半期のアプローチに成功した場合でも、アップデートした情報を継続的に提供していくことが大切です。

③年間ランキングに漏れても、「来年度以降の注目商品」で爪痕を残すことも可能です。
下半期に発売された商品などは、序盤戦としては上々の成果を上げていても短期的な人気ではないかと様子見されることもあります。ただし、同じくそのヒットが客観的に見てしかるべきものである、と理解してもらえれば今後もきちんと見ていこうという意識がメディアに芽生えます。すぐにあきらめずに今後の布石として次に備えることも考えておくべきでしょう。

などなど、私もランキング好きでデータを活用したパブリシティーなども数多く手掛けますが、共感・納得のあるデータやコンテンツってやっぱり大事ですよね。一方で、データの読み解き方の工夫によって、新たな関心を創出することもできるはずなんです。いやー、奥が深い。さーて、今日も最新の調査のGT表でも眺めながら酒でも飲むかなー。数字見ながらユルユルやるのって最高なんですよね。それではまたー。

プロフィール

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    井口 理
    株式会社電通パブリックリレーションズ コミュニケーションデザイン局 局長 チーフPRプランナー

    1990年株式会社電通PRセンター(現株式会社電通パブリックリレーションズ)入社。コミュニケーションデザインを手がけるチーフPRプランナー。
     
    企業のコーポレートコミュニケーションから、製品・サービスの戦略PR、動画コンテンツを活用したバイラル施策や自治体広報まで、幅広く手掛ける。最近では、熊本県の赤い特産物をアピールするため仕掛けた「くまモンほっぺ紛失事件」のPRプランを手掛け、世界的なPR業界紙「Holmes Report」が主催するアワードで「世界のPRプロジェクト50選」に選出された他、多数の口コミを起こしたキャンペーンとして、世界的な口コミアワードである「WOMMY AWARD2014」を日本で初めて受賞。
    その他、受賞歴に、Asia Pacific PR Award、日本PR協会「PRアワード グランプリ」、国際PR協会「ゴールデンワールドアワーズ」、SABRE AWARDS ASIA PACIFIC、PR WEEK アワード・アジア、Asia Pacific SABREアワード、Spikes Asia 2014、Global SABRE アワードなど。
    実務のみならず、大学やトレードショー、PR協会での講義による若手育成にも従事。「Cannes Lions 2012」「Spikes Asia 2012」PR部門、「SABRE AWARDS ASIA PACIFIC 2014」「PRWeek Awards Asia 2015」「ヤングカンヌPR部門日本代表選考」審査員。「New York Festivals パブリック&メディア・リレーションズ部門」Grand Jury。2013年6月に「戦略PRの本質~実践のための5つの視点~」を上梓。

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