『情報メディア白書2016』巻頭特集ダイジェスト #03

インターネットの20年:掲示板、ニュース、まとめサイト、キュレーション…変わり続けるメディアとユーザーの関係

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    天野 彬
    株式会社電通 電通総研 メディアイノベーション研究部 研究員

2月18日に刊行された『情報メディア白書 2016』。当連載では、同書の巻頭特集「インターネットの20年」のダイジェスト版をお届けする。

インターネットの普及はオーディエンスの情報接触行動を大きく変えてきた。日本のインターネット元年ともいわれる1995年からの20年に何が起きたのか。電通総研メディアイノベーション研究部が独自の視点で捉えた調査・分析を元にまとめた。

第3回は、ポータルサイト、掲示板やブログ、CGM(消費者生成メディア)的な双方向性を帯びたソーシャルブックマークなどのニュースサービス、そして現在多くの人々が日々接するようになったソーシャルメディアの普及を経て、スマートフォン対応をいち早く進めたキュレーションメディアの台頭へ――というインターネットメディアとユーザーの情報受発信における関係性の来歴を考察する。

1995年からの20年間を「集約化」「双方向化」「最適化」という仮説的な3 つのフェーズに分けて、それぞれのフェーズにおける象徴的な動きをピックアップしていく。
 

1995年~ 情報の「集約化」が目指された時代

この時期はポータルサイトなどが林立し、一つの場に情報を集約すること(およびそれを発信すること)が目指された時代だといえる。

この「集約期」には、asahi.comやYOMIURI ONLINEなど新聞社を中心とした「既存プリントメディアの無料ウェブサイト」、Yahoo ! やlivedoor、Amebaなどの「ポータルサイト上のニュース配信」、2 ちゃんねるや大手小町などの「掲示板サイト」といったサービスが誕生し、インターネット上の情報集約が進んだ。

そして、こうした動きを象徴するものの一つとして、2001年に世界中の情報を集約するサイトとしてのWikipediaがローンチされたことも指摘しておきたい。

また、2010年前後を境として既存プリントメディアの有料電子版が数々ローンチされてきたが、これもペイウォール(有料課金者に向けたコンテンツの囲い込み)施策という意味での集約的な動きと捉えられる。

ウェブニュースメディアの運営において、記事をアンバンドリングしてコンタクトポイントを増やしView数を確保していくのか、記事の配信を絞るプレミアム化を施しペイウォールを築くのか、試行錯誤が続けられている。
 

2005年~ 情報の「双方向化」が目指された時代

情報の集約が進む一方で、発信者の増加によって個人ブログの隆盛やソーシャルブックマーク活用の拡大、そしてソーシャルメディアの爆発的普及へと至る流れがこの時期に生まれてきた。

2005年ころから唱えられ始めた「Web2 . 0」(by ティム・オライリー)というコンセプトが示しているように、一人一人が発信する情報によって豊かな情報社会が生み出されていくと信じられた時代、いわば情報の双方向化が目指された時代だといえる。

2006年の米「Time」誌が選ぶPerson of the Yearが「You.」であったことも、こうした情報社会の動きを明確に捉えたものだったと考えられる(この号の「Time」誌表紙には「You control the Information Age.」と記載されている)。

2004年には「アルファブロガーアワード」など個人の発信者をピックアップするような動きが出始めていたことに加え、日本におけるソーシャルブックマークの一大サービスとして成長した「はてなブックマーク」など個々のユーザーがブックマークしたニュース(記事)が共有され、注目を集めるニュースがボトムアップ的にピックアップされていく仕組みも整えられていった。

そうした双方向性がより目立ち始めた折、ブログなどを通じて既存メディアではカバーできないニュースが発信され、個人の意見やアイデアが広く共有されることで、より良い社会に向けたコミュニケーションが進んでいくのではないかといったポジティブな社会論が現れ始めたのがこの時期の特徴でもある。また、こうした社会論の著者自身もブログやTwitterといった双方向的なメディアの中で頭角を現してきた人々であったことも象徴的であった。

興味深い点として、「2ちゃんねる」そのものはインターネット黎明期からのコアユーザーに支えられた独特のアングラ的な空気感をたたえていたが、「2 ちゃんねるまとめサイト」になることで女子高生すらも読むような一般的なメディアへと質を変えていったことからも、「まとめ」という形式が新興ネットユーザーへの親和性があったことが示唆される。

2009年には「NAVERまとめ」や「Togetter」がローンチされ、一般ユーザーによるアウトプットが双方向的に活用される「まとめサイト」というフォーマットの存在感が増し始めたのもこのフェーズである。
 

2015年~2010年~ 情報の「最適化」が目指された時代

2015年4 月度d-campX(電通の調査データベース)の集計によれば、スマートフォンの現在の普及状況は、関東(東京50キロ圏)かつ全サンプル対象(12~69歳男女個人・4800ss)の条件で「70 . 8%」となっている。

若年層に限定すればそのスコアは更に上がることからも、言うまでもなくスマホはもはや日常生活を営む上で欠かせぬ情報インフラとしての地位を確固として築いており、スマートフォンの普及は私たちとニュースとの関係性をも大きく変えていったことは明らかだ。

ユーザーがスマホアプリで自分好みの情報環境を生み出せるのと同様に、キュレーションメディア/アプリを通じて、自分の関心に沿った最適化された情報摂取が志向された時代だといえる。データのマッチングやユーザーの趣向性を判定するためのテクノロジーの進化も手伝って、一人一人にカスタマイズされた(最適化された)情報を日々摂取するようになっている。

そして重要なことは、そうした「最適化」のあり方自体(最適な情報とは何か?)にも変化が訪れつつあるという点である。こうした高度情報キュレーション環境の実情を考察するポイントは、書籍『情報メディア白書2016』を参照されたい。
 

2015年~ ニュースメディアは情報の「集約化」「双方向化」「最適化」が絡み合いながら発展へ

ここまで「集約化」「双方向化」「最適化」のキーワードで、インターネット時代のメディアのユーザーと関係性、そこでなされる情報受発信のあり方を探ってきた。これらメディアのフェーズ間の特性は、単純に移行するわけではなく――これからは「最適化」だけが重視されるというわけでは決してなく――、今後も補完的に絡み合いながらニュースメディア発展のベクトルをかたちづくっていくと思われる。

例えば一つのトレンドとして、SNSを通じてニュースに接触する頻度が増えているのは、自分の身近な友人知人が発した情報だという「双方向性」の加味されたニュースが受け手の「最適化」にとって重要であるということを意味する。一日の限られた時間の中で、最適化された情報をいかに得るかという視点はより重要性を増し続けており、そのためのテクノロジーも進化していくことが予想される。

しかし一方で、「デイリー・ミー」(byキャス・サンスティーン)や「フィルターバブル」(byイーライ・パリサー)といった現象で呼ばれる、キュレーションサービスの浸透がもたらす「自分が気に入りそうな情報ばかりに囲まれて視野狭窄に陥る」という逆説的な課題もたびたび指摘されている。こうしたいわば「最適化のパラドックス」に、ニュースキュレーションやソーシャルメディアの運営主体が対応策を進めている。

また、それにも関連して考えるべきは、情報量が指数関数的に増大し続ける社会のペイン(解決されることが望ましい悩み・苦痛)である。あふれる情報を自分の納得いくかたちで収集・摂取できていると思う人はそう多くないはずで、これに対するペインキラーをいかに創造するかという課題はいまだに積み残されているように思われる。

電通総研の調査でも、約20%のメディア高関与層とそれ以外の80%の層がきれいに
分かれ、情報の流通と消費においてもパレートの法則(20:80の法則)が成立していることが析出されている。情報摂取アクティブ層とその他の層との間の二極化をいかに解決するかという社会的課題は、上述のような私たち自身のペインとも併せて対処されるべき領域である。

キュレーションメディアの流行がそうした状況への一つの試みとして捉えられるのであれば、今後に向けてこの領域にはまだまだビジネス的なチャレンジの余地が残されているといえるだろう。

詳細なデータや論考は書籍『情報メディア白書2016』で。

書籍『情報メディア白書2016」
「情報メディア白書」P30-31

書籍では図表やデータで詳しく解説

「情報メディア白書」P32-33

プロフィール

  • 14580463 1225228107497344 1248304897 n
    天野 彬
    株式会社電通 電通総研 メディアイノベーション研究部 研究員

    1986年生まれ。東京都出身。東京大学大学院・学際情報学府修士課程修了。
    2012年電通入社後、マーケティング部門、新規事業開発部門を経て、2014年から現職。
    スマートフォンのユーザーリサーチを中心に、現在のメディア環境やオーディエンスインサイトを分析している。
    著書に『二十年先の未来はいま作られている』(2012年、日本経済新聞出版社、共著)、『情報メディア白書2016』(2016年、ダイヤモンド社、共著)。その他レポート執筆やセミナー講師など経験多数。

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