アプリの企画制作から事業としてのマネタイズまで #06

Japan Growth Hacker Awards 2016とKaizen Platformの“グロースハック・エコシステム”

  • Prfl katayama
    片山 智弘
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

皆さんこんにちは。今回は、これまでの連載とちょっと雰囲気を変えて、とあるイベントの模様を紹介できればと思います。

私もこのイベントを主催した会社が提供するソリューションのセールスパートナーの主担当者としてイベントに関わっていたので、そういった視点も含めてレビューし、最後に私見や今後の展望を述べる形でまとめていきます。

2月23日、グロースハッカー(参照:前回記事)を表彰する「Japan Growth Hacker Awards 2016」が渋谷dots.で開催されました。目覚ましい成績を収めたグロースハッカーの表彰、業界の最新事例や取り組みを紹介を通して、グロースハッカーの活躍の場をつくるという趣旨で開催され、今年で2回目を迎えました。

Kaizen Platformとは

まず、主催のKaizen Platform社についてご存じない読者さんもいるかもしれませんので、ご紹介をいたします。同社は、ウェブサイトのUI / UX改善のためのプラットフォーム「Kaizen Platform」をグローバルに提供・運営しております。

このサービスでは改善したいサイトやページに、同社のコードを1行入れると、複数のページデザインパターンを同時に展開・効果検証(A/Bテスト)できるようになります。売り上げや申し込み数などの評価指標がより高く効果的なページの把握を通じ、最適化・改善をすることができます。

また、自社で変更案を作成しなくても、登録している世界中のグロースハッカー(UI / UX改善のスキルを持つウェブデザイナー)から案を集めることができます。Kaizen Platformはプラットフォームの運営だけでなく、テストスキーム自体の設計や技術面のサポートも併せて提供しています。
Kaizen Platform:https://kaizenplatform.com/ja/

今回の表彰式は、このオファーに対する改善策の成果を主に評価したものです。

挨拶する須藤CEO

イベント冒頭、Kaizen Platform社の須藤憲司CEOは、自社のデジタルプラットフォーム上に抱える3000人のエンジニア・デザイナーが行ってきたIの改善を190社5000ページのUI改善についてオーバービューしました。

これまで延べ3万点以上の改善案が出され、1つの改善で売り上げが最大約8.6億円増えた事例も紹介されました。他にも、1億円の売り上げが増えた改善が23例も出ており、1つの産業として、グロースハックが持つ高いポテンシャルを感じます。

Eコマース機能やランディングページ(商品紹介をして申し込みを直接促すページ)を持つサービスでは、UI / UX改善がKPIの改善に直結します。須藤氏からも、デジタルサービスの改善活動がどれだけ経営指標に影響を与えるかについて語られました。

また、同氏は成果を出す改善における最も重要なポイントの1つとして、改善活動の回数をこなしていることと、事例への知見を持っていることが重要だと話し、それらを提供するリソースとしてもKaizen Platformが持つ意義を紹介していました。

スターグロースハッカーの誕生

今回の表彰者と須藤CEO

表彰式では、改善案をクライアントから採用された数、A / Bテスト時の改善勝率、KPI改善に対して優れた貢献をしたかなど、総合的に評価をしてグロースハッカーを選出し、表彰を行いました。協賛クライアント別、業種別、デバイス別、Eコマース・メディアなどのサイト種類別に部門賞が設けられ、総合グランプリであるグロースハッカーオブザイヤーには、福井渡氏が選出されました。

改善のベストプラクティスをレビューする表彰者の片岡彩子氏

続いて表彰者が、改善のポイントと実際の改善案、その改善成果を紹介。ユーザー視点、事業視点、UIの視認性や情報授受に着目した素晴らしい事例が紹介されました。

新しい働き方としてのグロースハック

リクルートジョブズ金亨碩氏

続いてリクルートジョブズからプロジェクト「イクション」における女性特化型のグロースハックチームの活動紹介がありました。

イクションとは「子育てしながら働きやすい世の中をつくること」を中心に多種多様な働き方の実現のために、いつでもどこでも活躍できる環境づくりを支援する取り組みです。パソコンさえあれば仕事ができるので、在宅勤務でもグロースハッカーとして働ける環境を提供。フリーランスとして元々ウェブ業界で働いていた人はもちろん、子育て中の未経験や経験の浅い人材向けにグロースハッカー育成講座を実施して育成に当たっています。

介護や子育てで培われた分析力・共感力・処理能力、マルチタスク能力が生かせることで実際にサービス改善成果も上がっているそうです。

パソナテック粟生万琴氏

続いて、パソナテックから、エージェント型のクラウドソーシングJob-Hubにおけるグロースハッカー育成の仕組みが紹介されました。社会人がウェブマーケティングを学ぶ場としてのコンテンツや案件提供はもちろん、地方の学生向けにもグロースハックプログラムを提供し、学びと仕事体験の場にもなっています。複数の大学へ展開していますが、佐賀大学では単位認定もするようになっているとのことです。

Kaizen Platformのアップデート

最後に、須藤氏からKaizen Platformに関する2つのアップデートが発表されました。1つは機能のアップデートです。ターゲティングや指名での案件オファーが出せる機能や、グロースハッカー各人が自分の得意領域を選んだりと、プロフィールをアップデートできる仕組みです。これは個々の才能や能力にフォーカスを当てる仕組みとして機能追加されました。

また、もう1つはパートナープログラムの発表でした。セールス、ディレクション、クリエーティブ、ツールと各領域のパートナーを募集し、弊社も含めて19社の加盟が発表されました。

ここで須藤氏から語られた、マーケティングの各バリューチェーン間における全体調和の重要性を表現した「マーケティングオーケストレーション」という表現が印象的でした。広告、人材、DMP、アクセス解析、BIツール…といったKaizen Platformにない強みを他の企業が提供し、それをソリューションとして取り入れることで、サービスラインの拡張やエコシステム全体を大きくするのが狙いとのことです。

イベントは最後に懇親会を迎えて大盛況で終了いたしました。
運営の皆さまお疲れ様でした。ありがとうございました。

ビジネスエコシステムをつくっていくということ

前述の通り、電通はこのKaizen Platform社のパートナープログラムに参加することにいたしました(参照:Kaizen Platform社 プレスリリース)。

Kaizen Platform社プレスリリースより抜粋(https://kaizenplatform.com/pressrelease/2016/02/24/growth-hack-partner.html

今回、電通報でイベントの模様を紹介することも、またパートナーアライアンス担当者としてKaizen Platform社のパートナープログラムへ参加し、ウェブサイト改善ソリューションサービスを先行して取り扱うことにも、電通として意義があることだと考えています。

そして(推進中心者の所感なので手前味噌ではありますが)、電通の持つ広告・マーケティング施策やデータ分析の知見も生かして、よりオリジナリティーやコミュニケーション課題への網羅性の高いソリューションへも昇華させていけると思います。

何より、今回の取り組みの中で素晴らしいと感じたのはKaizen Platform社がグロースハックのエコシステムをつくるところにもベクトルを向けていることです。

企業である以上、収益を追求することはもちろん重要ですが、それと同時に市場やビジネス全体を大きくする取り組みを両立させ、リソースの投資をしているところに大きな可能性を感じています。

グロースハッカーの成果を、KPIやKGIの変化として見える化できるという性質を生かした報酬デザインもそうですし、UI改善提案はデザイン業務に使うアプリケーションが入ったパソコンが1台あればできてしまうので、在宅勤務の推進や、仕事と子育てとの両立のハードルを下げて働きやすい環境をつくったり、地方のIT企業を活性化させることで地方創生へ貢献できたりと、グロースハッカーの環境を整える意味でも有効です。

グロースハック(グロースハッカー)が単なるバズワードではなく、1つの産業や手段として定着できるよう、今後に私は注目しています。市場や社会全体のことを考えた長期的な視座でスタートアップの経営や事業構成を考えていくのは難易度の高いことですが、この観点は事業開発に関わる人間としても、重要な考え方なのではないかと改めて感じた次第です。

プロフィール

  • Prfl katayama
    片山 智弘
    株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター

    大学院生時代からWEBサービスを制作運営し、当時作っていた会社を売却して2012年に電通入社。入社後は、デジタル系新規技術を活かしたビジネス開発とプロトタイピングに従事。ITサービスのビジネスモデル構築や体制構築から、現場の運用統括やプロモーション企画まで一貫してディレクションを担当。現在はヘルスケア分野の新規サービス作りとグロースハックとマーケティングを融合させたソリューション開発がテーマ。会社のこれまでにない技術的なケイパビリティや収益源を作るべく奮闘中。

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