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インサイトメモNo.13

スマート端末の普及期における

電子書籍利用動向

2011/11/04

〈 掲載日:2011.11.04 〉

2010年以降、スマートフォン、タブレット端末、電子書籍端末など、新しいスマート端末の登場が相次いでいます。これらの端末の多くがタッチパネルを搭載し、ディスプレーのサイズにもゆとりがあることから、電子書籍に多くの期待が寄せられるようになりました。

今回は、電通が実施している生活者データベース「D-CAMP(関東)」に加わった電子書籍(書籍・コミック・雑誌)の利用動向に関する分析結果の一部をご紹介します。

■ 男性がやや多く、20~30代が中心のメディア

過去1年間に電子書籍(書籍・コミック・雑誌)のいずれかを利用した経験のある人は、全体の11.9%でした。形態別にみると電子書籍は7.4%、電子コミックは6.9%、電子雑誌は3.1%という結果になりました。

利用者の内訳を男女別にみると、男性が58.9%、女性が41.1%と男性が多くなっています。また年齢階層別にみると、20代と30代で全体の60%を占めており、現在のところは若年層中心のメディアということが言えそうです(図表1)。特にこの傾向はコミックで顕著で、20~30代の割合は71.1%に高まります。

図表1 電子書籍(書籍・コミック・雑誌)

閲読経験者の年齢構成

■ スマートフォン、タブレットの利用と電子書籍の利用経験

特に若年層を中心に急速に普及が進んでいるスマートフォンについては、ユーザーの過去1年間の電子書籍の利用経験は42.1%に上っています(非スマートフォンユーザーの利用経験は13.3%)。同様に、タブレット端末利用者の約6割に電子書籍の利用経験がありました。

今後これらの端末が普及するにつれて、電子書籍利用のすそ野も広がると考えられます。

■ 電子書籍の読者は、紙の書籍の多読者でもある

電子書籍の普及により、印刷版の購入が減るのではないか、との懸念も見受けられますが、現時点ではその影響はさほど大きなものとは考えられません。

過去1年間に「電子コミック」を読んだ経験のある人は、1カ月当たり平均1.0冊程度の「紙のコミック」を購入しているのに対し、読まなかった人は0.6冊となっています。

また過去1年間に「電子書籍」を読んだ経験のある人では、1カ月当たり平均1.6冊の「紙の書籍」を購入しているのに対し、読まなかった人は、平均1.0冊程度に留まっています。

書籍・コミックなどの愛好者が、電子書籍の登場を知り、これまでよりも多くの閲読機会を期待している状況と言えそうです。

■ 利用される電子書籍ジャンルはまだまだ少ない

他方、電子書籍の利用経験者の間でも、読まれるジャンルの広がりはまだまだ小さいようです。紙の書籍と電子書籍それぞれの接触ジャンル数を比較してみると、電子書籍については、わずか1ジャンルしか読んでいない人が60%に上っています(図表2)。

図表2 読んだジャンル数(累計)

(紙の書籍と電子書籍の比較)

(注)
※「ジャンル」については、文芸書、実用書、SF・ミステリーなどの主要分野10分野を取り上げて回答を得ました
※ 紙の書籍の場合は、「最近3カ月」の間に「購入」したジャンルの数を示し、電子書籍は「過去1年」の間に「閲読(購入したかしないかは問わない)」したジャンルの数を示しています

 

今後数年間でスマート端末が急速に普及し、その新たな利用スタイルが提案されていくと考えられます。そうした中、電子書籍の利用者を増加させるには、多彩なジャンルのコンテンツが提供され、幅広い層の関心を引くことが必要不可欠な条件と言えそうです。