インサイトメモ #53

今どきTEENの動画広告「見たい度」を調べてみた

  • Ogura s pr
    小椋 尚太
    株式会社電通 電通総研 メディアイノベーション研究部 研究主幹

かつて動画による広告といえばほぼテレビCMと同義でした。しかし昨今はYouTube、TVer、GYAO!、Facebook、Yahoo!など、さまざまなプラットフォームで人々は動画広告に接触しています。

一方でこれら動画広告は、視聴する機器、コンテンツ、秒数、スキップできるかなどプラットフォームよって表示条件が大きく異なります。この条件の違いが、人々の動画広告を「見てみたい」という気持ちにどのように影響しているか、影響しているとしたらどの程度なのかについて、電通総研は「動画広告受容性調査」を実施しました。

調査結果からさまざまな新しい視点が得られましたが、ここでは15~19歳を“TEEN”と定義し、TEENに特徴的に表れた動画広告への受容意識に注目して紹介したいと思います。


どんな条件の動画広告なら、
どのくらい「見てみたい」と思えるか?

動画広告の表示条件がさまざまある場合、「見てみたい」気持ちへの影響度を測るには通常の調査では困難です。そこでコンジョイント分析を用いた動画広告受容性のモデル化を試みました。

どんな条件の動画広告ならどのくらい「見てみたい」と思えるか?
コンジョイント分析とは、商品やサービスの価値を構成する要因(規格や性能)をさまざまに組み合わせたパターンを調査対象に複数回提示し、優先順位をつけさせることで、生活者が重視する要因を明らかにし、その要因の最適な組み合わせを探る手法。これを動画広告に応用することで、プラットフォームの視聴条件を規定するさまざまな要因が「見てみたい」気持ちにどのくらい影響するかを数値で示すことができ、比較分析が可能となる。
 
動画広告の受容性を評価するために用いる条件
・視聴条件は「コンテンツの視聴場面」「広告の表示のされ方」「流れる広告のタイプ」のカテゴリーに分けた合計9個の属性(要因)と各3個の水準で構成。
・調査対象者は、さまざまな広告の視聴条件において、その時流れる動画広告をどれくらい「見てみたい」と思うかを10段階で評価。
・属性と水準によって規定される条件を対象者に一定のパターン数提示することで、各属性・水準が動画広告を「見てみたい」気持ちにどれくらい影響しているか計量する。
 

TEENは、スキップできない広告は見たくない?

それでは調査結果を見てみましょう。【図3】は、視聴機器の違いでどのくらい広告を「見てみたい」気持ちに影響があるかを説明しています。

全プラットフォームの平均値をゼロとしてその差分をグラフ化し、ゼロより上は「見てみたい」気持ちを押し上げ、下は押し合下げる影響があることを示します。個人全体の平均(灰色)と15~19歳の男性(青色)、15~19歳の女性(ピンク色)で比較することで、TEENに特徴的な動画広告への態度をあぶり出しています。

視聴機器による影響


まず個人全体では、テレビを筆頭にパソコン、スマートフォンの順に広告を「見てみたい」視聴機器であることが読み取れます。中でもスマホ視聴時は、動画広告を「見てみたい」気持ちを0.17ポイント押し下げる効果があることから、スマホでの広告展開では、この「見てみたい」気持ちの相対的な低さを補完する何らかの工夫が必要なことを示唆します。

一方でTEENの男性を見ると、スマホはそこまで気持ちを押し下げていません(-0.02ポイント)。またTEENの女性はパソコンがテレビを上回り、スマホがテレビとほぼ並びます。個人全体に比べTEENにとってスマホで動画広告を見ることは不自然ではないようです。TEENのスマホへの強い愛着がうかがえます。

スキップやスルーの選択肢の有無による影響


【図4】は、広告を見る・見ないの選択肢の有無による動画広告視聴への影響を示しています。個人全体では、スキップやスルーをして広告を見なくてもよいという選択肢がある場合と比べて、選択肢がない場合は「見てみたい」気持ちが0.28~0.29ポイント低下しました。TEENはさらにこの傾向が大きくなっており、男性で0.39~0.42、女性で0.35~0.43ポイント低下しました。

YouTubeの動画広告であるTrueViewのように、スキップできる広告に早くから親しんでいる世代は、見ないことを選択できない広告によりストレスを感じていると推測されます。

TEENの男性はコンテンツ視聴中の広告を嫌い、

女性は友人とのつながりを邪魔されたくない

 

広告が流れるタイミングによる影響


【図5】は動画広告が流れるタイミングの影響度を示します。個人全体を見ると、コンテンツを視聴する「前」に表示される広告は「途中」の広告より、「見てみたい」気持ちを+0.09ポイント押し上げる効果があります。「前」と「途中」の両方に表示されても「途中」と同じ評価です。

しかしTEENの男性は「途中」の場合、-0.12ポイント押し下げる効果が見られます。全体的に広告表示はコンテンツの「途中」より「前」という意識が働いていますが、特にTEENの男性はコンテンツ視聴中の動画広告への忌避感が強いようです。
 

広告商品の関心の有無による影響


【図6】は、広告される商品に対する関心の有無による影響度です。個人全体を見ると、「関心があり」かつ「購入を検討している」商品の動画広告に比べて「特に関心がない」商品の場合、見てみたい気持ちは0.79ポイント低下します。

情報の有用性に敏感な生活者の意識がうかがえますが、TEENの男性においては1.05ポイントの低下となり、さらに落差が大きくなります。見たいものだけを見て、興味のないものは見ないという若い世代の選択的な情報摂取の傾向を示唆しています。
 

コンテンツの作り手による影響


【図7】の視聴コンテンツの作り手がどんな人かも、コンテンツに表示される広告の「見てみたい」気持ちに影響を与えています。個人全体では「プロ」コンテンツ(テレビ番組、音楽PV、新聞・雑誌の記事など)は表示される動画広告を見てみたい気持ちを+0.12ポイント押し上げる効果があります。

逆に動画共有サービスなどでの「人気投稿者」のコンテンツ視聴時は-0.09ポイント、「友人・知人」の場合は-0.03ポイント押し下げています。友人など身近な人が作ったコンテンツを見ているときは、広告によって邪魔されたくないという心理が働いているようです。

一方、「プロ」コンテンツの場合は広告を見たい気持ちを押し上げているので、広告を流す場所としてより評価されてもよいのではないでしょうか?

面白いのはTEENの女性です。「友人・知人」の場合が、-0.11ポイントと最も見てみたい気持ちを押し下げます。彼女たちのライフラインともいえるSNS上で企業が接触を試みる場合、どうやら細心の注意が必要なようです。

TEENは、動画広告も気分で選択したい?

男女それぞれ特徴は異なりますが、個人全体と比べると、TEENのある意味とても“自分本位”な動画広告に対する態度が見えてきました。動画プラットフォームの拡大により、自分の見たいとき、見たい場所で、見たいコンテンツを気分に応じて楽しむという、新しい視聴スタイルが広がりつつあります。

テレビに長く親しんだ世代にとってそこで流れる動画広告(CM)はある意味、降りしきる雨のように甘受するもの、あるいは見ることを習慣付けられた存在でした。しかし、TEENのようなスマホ世代にとって、もはや広告であっても気分で視聴を選択するべきモノとみなされているといえるでしょう。

そんな彼らの意識を考慮しない動画広告の展開には、思わぬ落とし穴があるかもしれません。動画広告の多様化に当たり、露出の効果効率のみならず、ターゲットが受け入れやすい動画広告接触環境への知見が今後は問われていくのではないでしょうか。


【「動画広告受容性調査」概要】
●調査期間:2016年4月26日
●調査方法:ウェブ調査
●本調査対象者:全国男女10代~50代 下記4種の行動を自宅内で1カ月間に複数日実施している人(1カ月に1日以下の利用頻度の人を排除)
テレビ(リアルタイム視聴)/テレビ(録画再生視聴)/パソコン利用/スマートフォン利用
●サンプル数:本調査回収サンプル数2,400サンプル、分析対象サンプル2,117サンプル(ワンパターン回答を除外)

 

プロフィール

  • Ogura s pr
    小椋 尚太
    株式会社電通 電通総研 メディアイノベーション研究部 研究主幹

    1991年電通入社。新聞担当を経て、通信事業社・外食チェーンクライアントのアカウントエグゼクティブとして数々の統合キャンペーンを担当。2012年からMCプランニング局。メディア・コンテンツのリソースを統合し、クラインアント課題に応えるソリューション立案に従事。2016年から現職。コミュニケーション領域とメディア領域を横断した幅広い知見を生かし、生活者のメディア・情報行動に関する最新のインサイト掘り起こしに努める。

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