インサイトメモ #54

ログから見るスマホ・パソコンでの動画視聴のリアル

  • Ogura s pr
    小椋 尚太
    株式会社電通 電通総研 メディアイノベーション研究部 研究主幹

インターネットを通じての動画視聴には有料配信、無料配信、動画共有サービスなど多様な選択肢があります。視聴デバイスもスマホやパソコン、ネットに接続されたテレビ受像機などマルチスクリーンで楽しめ、生活者は好みに応じて選ぶことができます。

ログから見るスマホ・パソコンでの動画視聴のリアル


とはいえ、映像視聴を前提につくられたテレビと異なり、専用のデバイスではないスマホやパソコンでは、メールやSNS、ニュースサイトなど全く性格が異なる各種アプリが入れ代わり立ち代わり利用されています。

果たしてどれくらいの時間、スマホやパソコンで動画サービスが利用されているのでしょうか? その実態はこれまであまり把握されていませんでした。

そこで電通総研は、ウェブやアプリの利用ログデータに着目しました。ログデータならば各動画サービスへのアクセスログを集計することにより、調査対象者の記憶に頼ることなく、より正確にアプリやブラウザでの利用時間が把握できます。今回はインテージのi-SSPを使用し、スマホパネル、パソコンパネル双方で2016年7月4~31日の4週間のアクセスログを集計し、ネットデバイス上での動画視聴のリアルを探ってみました。

※スマホとパソコンの調査パネルは異なります。また、集計結果はあくまで2016年7月4週の実態を表すものです。


無料配信、動画共有、定額制、編成型など選択肢が増えたネット動画サービス

まず、日本におけるネット動画サービスについてまとめてみましょう。

日本におけるネット動画配信/共有サービスの開始年

05年の無料配信型サービス「GYAO!」を振り出しにスタートし、07年に「YouTube」「ニコニコ動画」といった動画共有サービスが加わりました。11年にはアメリカ発の「Hulu」が開始され、定額制サービスの先鞭をつけて以降、15年には「Amazonプライム・ビデオ」「Netflix」「dTV」など次々に同種のサービスが開始されました。

16年は、編成型コンテンツ配信を行う動画配信サービス「AbemaTV」、スポーツのライブ配信を行う「スポナビライブ」、Jリーグの放映権を取得し話題となった「DAZN」といったスポーツ専門の配信サービスも加わり、生活者の選択肢はますます広がっています。

パソコンでの動画視聴シェアは19.5%、スマホは3.0%

集計によるとパソコン利用者の1日のネット平均利用時間は80.8分、スマホ利用者のネット・アプリの平均利用時間は168.9分となり、2倍近くの開きがありました。そのうち動画サービス利用者の1日当たりの平均視聴時間は、パソコンは15.7分(シェアは19.5%)で、スマホは5.0分(シェアは3.0%)という結果でした。

デバイスのネット利用時間における動画視聴シェア

あくまで16年7月4週の結果ではありますが、動画視聴の利用時間においてはパソコン>スマホという図式が見えてきました。より長く動画視聴が行われているのはパソコンであり、スマホではごく限られた視聴時間の中で各サービスが視聴を競い合っている実態が見て取れます。

また、動画配信(有料・無料)や動画共有といったサービスカテゴリーの中ではパソコンもスマホも圧倒的に動画共有サービスの利用時間のシェアが多くなっています。無料であること、サービス開始から比較的年月がたち、多くの人に利用習慣が確立していることが結果となって表れているのではないでしょうか。

動画デバイス利用時間における動画視聴・ソーシャルメディア利用シェア

参考までにソーシャルメディアと動画サービスの利用時間を比較してみたところ、対照的な結果が得られました。

パソコンではソーシャルメディアの利用時間シェアは7.9%と動画サービスの19.5%に比べて低く、動画優位。これに対しスマホではソーシャルメディア、インスタントメッセンジャーの合計で13.2%となり、動画サービスは3.0%と4倍以上の開きがありソーシャルメディア優位となりました。

若年層になるほどネット動画の視聴時間が長くなる

次に、動画サービス利用者のみを抽出して、性・年代別に集計しました。

動画サービス利用者の1日当たりの平均動画視聴時間は、パソコンで45.7分、スマホで17.3分と各デバイス利用者全体の平均と比較して長くなります。特徴的なのは10~20代男性で、パソコンで71.3分、スマホで27.4分となりました。

動画サービス利用者の平均動画視聴時間(1日当たり)

スマホは通信量の制限もあり、画面も小さく、コミュニケーション優位の利用状況といった条件があるにもかかわらず、10~20代男性は1日当たり約30分というまとまった時間を動画視聴に費やしています。

全体的な傾向として、男女共に年代が若くなるほどパソコン・スマホ共に動画の視聴時間が長くなっています。スマホにおける動画視聴の割合は現状では低いですが、このような視聴習慣を持った若い世代が徐々に加齢していくにつれ、ネット動画の利用はさらに拡大していくのではないでしょうか。

また、各動画サービスの視聴時間にも、性・年齢によって差があることが分かりました。YouTube利用者では男女とも若年になるほど視聴時間が長くなり、特に10~20代男性のパソコンでの平均視聴時間は、1日当たり58.3分となりました。

放送局見逃し配信サービスTVerやGYAO!は、比較的女性の視聴時間が長いのが特徴です。パソコンでのGYAO!利用者の視聴時間は10~20代女性が38.4分、50~60代女性が34分とほぼ同等です。パソコンでのTVer利用者の視聴時間は10~20代女性が17.8分、50~60代女性が28.8分と年配の女性の方が上回る結果になり、各サービスの特色が表れているようです。

ネット動画視聴のデバイスとしてのテレビにも注目

ログ集計の結果、スマホ利用者全体から見ると、動画サービスの利用時間はまだまだ限られているということが分かりました。

より多くの人を「スマホで動画視聴」という行為に導くためには、通信量という環境的な要因だけでなく、スマホ環境に適した短尺コンテンツ、小画面対応、ソーシャルメディア対応といったコミュニケーション優位のデバイスに対する親和性の向上、視聴習慣の醸成など、一つ一つのハードルを丁寧に飛び越えていくことが必要です。一方、10~20代年男性はスマホに適応した「新しい視聴者」であることも発見できました。

パソコンは、動画視聴に関してスマホより相対的に優位であることは明らかです。動画サービス利用者のみで比べると1日当たりの平均視聴時間には2倍以上の開きがあり、ゆったりと、より長尺の動画コンテンツをパソコンで視聴している実態がうかがえます。スマホに比べて大きな画面であり、通信費の懸念も比較的小さく、自室でじっくり見られる環境などが奏功していると考えられます。

このように、同じ動画サービスであっても、視聴デバイスによって生活者の視聴態度や求めるコンテンツが異なる可能性はあらためて認識しておいた方がよいでしょう。

また一方で、パソコンが家庭内での動画コンテンツの視聴ニーズを専一的に担っていくデバイスかどうかは、慎重な検討が必要になります。パソコンの普及率は2人以上世帯で79.1%ですが、近年は足踏みを続けています(内閣府「消費動向調査2016」より)。

スマホでネット動画に慣れ親しんだ層が「より大画面でネット動画を見てみたい」と考えたとき、家庭内で最も大きな画面であるテレビ受像機が、ネット動画の視聴デバイスとして注目されていく流れが高まってくるのではないでしょうか。

居間にあるテレビは、何より動画視聴専用のデバイスであり、高画質かつ高音質、視聴環境もパソコンより良いはずだからです。放送視聴が中心のテレビですが、生活者がテレビも一つのネットデバイスとして認識し始めたとき、スマホとはまた趣の異なる視聴時間の獲得競争が本格化していくかもしれません。

現状のテレビ受像機またはテレビ接続機器のネット接続率は26.9%(2016年5月d-campX 母数=テレビ本体保有者)と、まだ決して高くはない数字ではありますが、今後の動向に注目です。


【調査概要】
●集計対象データ
インテージi-SSPパネルログデータ全国(男女15~69歳)
●集計対象デバイスと有効対象者数(ウェイトバック済データを使用)
【パソコン】n=66,583 ※ウェイトバック値はインテージの[ PC人口]を使用
【スマホ】n=71,797 ※ウェイトバック値はインテージの[MB人口]を使用
●集計対象ログ
【パソコン】パソコンサイトアクセスログ
【スマホ】ブラウザアクセスログ+アプリ起動ログ ※アプリは公式アプリのみを対象とした。
●集計期間
2016年7月4日(月)~31日(日)の4週

 

プロフィール

  • Ogura s pr
    小椋 尚太
    株式会社電通 電通総研 メディアイノベーション研究部 研究主幹

    1991年電通入社。新聞担当を経て、通信事業社・外食チェーンクライアントのアカウントエグゼクティブとして数々の統合キャンペーンを担当。2012年からMCプランニング局。メディア・コンテンツのリソースを統合し、クラインアント課題に応えるソリューション立案に従事。2016年から現職。コミュニケーション領域とメディア領域を横断した幅広い知見を生かし、生活者のメディア・情報行動に関する最新のインサイト掘り起こしに努める。

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