「言葉にできる」は武器になる。 #04

「T字型思考法」で考えを進める。

  • Umeda photo square
    梅田 悟司
    株式会社電通 プロモーション・デザイン局 コピーライター/コンセプター
四六判、256ページ、定価:1500円+税、 ISBN:978-4-532-32075-1
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前回のコラムでは、内なる言葉の解像度を高める重要性について説明しました。内なる言葉の解像度が高ければ高いほど、自分の気持ちを細かく把握でき、外に向かう言葉のタネとして機能するからです。
今回のコラムでは、内なる言葉の解像度を高める具体的な方法について、説明を続けていきたいと思います。

 

自分の中に「思考サイクル」をインストールする

言葉を磨くことは、表現技術を身につけることではなく、思考に奥行きと幅を持たせることで、結果的に磨かれるものです。以下に、私が考えを進めるために行っている3ステップをまとめます。

①思考を漠然としたものでなく、内なる言葉と捉え、書き出す
②内なる言葉を俯瞰した目線で観察し、拡張させる
③考えを進めることに集中し、内なる言葉の解像度を上げる

この方法は、今自分が抱えている具体的な「言葉にしたいトピック」を想定しながら読み進めていくと、ぐっと自分ゴト化されます。例えば、就職活動での「一体自分はどのような仕事を行いたいと思っているか」であったり、クライアントへの提案内容、さらには、自分はどういう人間なのかといった自分探しでもいいと思います。

第1段階は、頭の中をぐるぐると回っている内なる言葉を書き出して、形を与える段階です。その上で、同じ仲間をグループ化することで、思考のクセや考えがちな方向を把握することが可能になります。
頭の中が悩みや思考でいっぱいになっていると、どうしても他の可能性を考える隙間がなくなってしまいます。そのため、いま考えていること、つまり、頭の中に浮遊する内なる言葉をいったん頭の外に出すことで、考える余地を生み出すのです。

続いて、第2段階では、第1段階で書き出された「思考の断片」を材料として、考えをさらに拡張させます。
第1段階では、内なる言葉を可視化したにすぎません。言葉を変えれば、自分という範囲内だけで考えている内容が列挙されている状態ともいえます。そこで考え足りない幅と深さに気付くことができれば、思考を進めることができるようになるのです。頭の中で漠然と考えているだけでは客観的な視点が入り込む余地がないため、考え足りていないヌケモレに気づくことは困難です。

最後は、普段の自分では考えつかないところまで、化学反応を起こすことで到達する段階です。例えば、あえて逆を考える、自分ではない特定の人だったらどう思うかを想定するなどが挙げられます。この第3段階は、次回のコラムで具体的な方法と共に紹介します。

この「思考サイクル」を繰り返すことで、内なる言葉の語彙力が増えていき、その結果、内なる言葉の解像度を上げることが可能になります。すると、物事について深く考えることができるようになるため、思考に厚みが生まれ、自然と外に向かう言葉は深みと重みを持つようになるのです。

 

「T字型思考法」で考えを進める〈連想と深化〉

今自分が「言葉にしたいトピック」について、考え始めたとしましょう。
すると、新しい内なる言葉が心の底から次々と浮かんできます。さらに時間をかけて考えを進めると、過去にあった出来事や、そこで感じた感情を思い出す段階に入っていきます。そして「よし、考えたな」と納得できるところまでたどり着いたところで、口に出して話してみようとすると…。

あれだけ考えたはずなのに、言葉は一向に出てこない。
こうした状況から分かるように、「言葉にする」という行為は、言葉そのものの問題ではなく「考え方」や「悩み方」の問題なのです。この状況を打破する方法は、書き出すこと、そして、その書き出したタネを中心にして、思考を進めることに集約されます。

まずはA4サイズの紙、もしくは付箋を用意して、太めのサインペンで頭に浮かぶ言葉を書き出します。単語でも、箇条書きでも、文章でも構いません。無理に文章にしようとすると、うまく書こうとしてしまったり、論理的に考えようと身構えてしまうため、良い結果に結び付きません。そのため、最初のうちは頭に浮かんだ内なる言葉が消えてしまう前に、とにかく書き留め、思考に置いていかれないことが重要です。

ここで書き出された内なる言葉は、これから考えを進めていく、つまり、内なる言葉を磨いていく出発点であると考えてください。そのため「こんなことでいいのか」「実は何も考えられていなかった」「恥ずかしい」などと思う必要は全くないのです。

次に行うのが、書き出した言葉を中心に「なぜ?」「それで?」「本当に?」の3点をキーワードに、内なる言葉を拡張し、解像度を上げていく作業です。

この「なぜ?」「それで?」「本当に?」の三つの言葉には、それぞれ違った方向に思考を進めさせる役割があります。「なぜ?」は考えを掘り下げる、「それで?」は考えを進める、「本当に?」は考えを戻すことです。

この状況を図解してみると、「T」の形になるように思考が進んでいくため、「T字型思考法」と名付けています。では、それぞれの効果について見ていきましょう。

「なぜ?」:考えを掘り下げる
なぜそのように考えるのか、内なる言葉が浮かんだのかを自分自身に問いかけることで、思考を深めていく。自分の根本や、思考の源泉、そもそも持っている価値観に迫っていく。下へ下へと考えを深化させていくイメージを持つと理解しやすい。

「それで?」:考えを進める
「それで?」の後には「それで、結局何が言いたいの?」「それで、結局何がしたいの?」「それで、結局どんな効果があるの?」といった言葉が隠れている。そのため、今考えていることが実現されることで、どんな結果を生むのか、どんな効果を得られるのか、果たして意味があるのかを考えることで、思考を前へと押し進めていくことが可能になる。

「本当に?」:考えを戻す
考えるという行為をしていると、知らず知らずのうちに、一つの物事を突き詰めることで近視眼的になってしまう。そのため、ある程度考えが進んだところで「本当に?」と自問自答すると、いったん冷静になり、考えを戻す効果がある。その結果、今まで考えが及んでいなかった違う方向について考える余地を生み出すことができるようになる。

言葉にしたいトピックを想定して三つの方向に考えを進めてみると、徐々に自分が思っていることを明確に把握できるようになっていきます。この一つ一つの言葉を強く認識し、自分の中へと還元していくことこそが重要なのです。

次回はこの「T字型思考法」によって得られた、内なる言葉を整理し、自分が考えもしなかったような内容にまで思考を進める方法をご紹介します。

 

プロフィール

  • Umeda photo square
    梅田 悟司
    株式会社電通 プロモーション・デザイン局 コピーライター/コンセプター

    上智大学大学院 理工学研究科修了。広告制作の傍ら、製品開発、雑誌連載、アーティストへの楽曲提供など幅広く活動。カンヌライオンズ、グッドデザイン賞、観光庁長官表彰など国内外30以上の賞を受ける。著書に『企画者は3度たくらむ』(日本経済新聞出版社)など。メディア出演歴に、NHKおはよう日本、TBSひるおび!、Yahoo!トップなど。CM総合研究所が選ぶコピーライターランキングトップ10に2014年/2015年連続選出。横浜市立大学国際都市学系客員研究員。

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